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世界同時減益の足音 「稼ぐ力」に異変   という記事が・・

2019-09-11 14:51:08 | 日記
世界同時減益の足音 「稼ぐ力」に異変
2019/9/11 4:30日本経済新聞 電子版

「北米の商品在庫を積み増した」。ラルフローレンのジェーン・ニールセン最高財務責任者(CFO)は、セーターなど衣類を多く含む米国の対中制裁関税「第4弾」の発動に備え、こんな対応策を打った。

1日、米国は中国への追加関税第4弾を発動した。スマートフォンなどの品目は12月に先送りしたが、1100億ドル(約12兆円)分に相当する3243品目に15%の追加関税を課した。対象品目の5割は家電や衣類などの消費財。「世界の工場」である中国からの輸入コスト増は、クリスマス商戦に影を投げかける。

日経ヴェリタストーク 世界同時減益の足音 
9月10日放送(日経CNBC) 週刊投資金融情報紙「日経ヴェリタス」の主要記事を専門家と編集長が解説する。
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■生産移管などコスト増招く

米中が「開戦」して約1年半。世界経済や金融市場だけでなく、いよいよ企業業績にも暗雲が広がり始めた。

「通期業績に約600万ドル(約6億4000万円)相当の悪影響がある」。8月29日、米カジュアル衣料大手、アバクロンビー・アンド・フィッチのスコット・リペスキーCFOは記者会見で、制裁第4弾の影響を認めた。2020年1月期通期の売上高予想は前期比で横ばい~2%増と、従来の2~4%増から下方修正した。米ホームセンター大手のホーム・デポも8月20日、20年1月期通期の売上高予想を下方修正した。


QUICK・ファクトセットによれば、世界の上場企業、約2万1000社の19年4~6月期の最終損益は5%の減益だった。このうち米国と中国での売上高比率が10%を超える企業の最終損益はそれぞれ8%減、19%減。米中依存度の高い企業の減益幅がより大きくなった。

日本やアジア、欧州の企業が2桁減益に陥っただけでなく、政府が大型減税で景気を下支えした米国を含む北米まで微減益となった。7~9月期には日米欧の主要企業で減益傾向が強まる見込みで、「世界同時減益」の足音は着実に近づく。

中国企業も揺れる。現地統計によると、本土上場3600社の1~6月期は前年同期比で5%超の最終減益に陥った。スマホや自動車など最終消費に近い分野に加え、ロボットや機械など設備投資にも減速傾向が広がる。

米中摩擦は輸出入の停滞を通じて企業の「稼ぐ力」を奪うだけでなく、生産移管などによる「戦費=コスト」増大も招く。

■守りの姿勢で細る成長投資

「ベトナムに第2期工場を建設する」。中国の家具メーカー、永芸家具は8月に海外生産拠点の拡充を発表した。ベトナム進出を決めたのは18年秋だが、1年足らずで増産を決めた。投資額も1期の950万ドル(約10億円)に対し、3500万ドルと3倍超に積み増す。中国の上場企業で18年4月以降、こうした海外への生産移転や拠点拡充、子会社への増資などを表明した製造業はすでに約40社に上る。


日本企業も「脱中国」を急ぐ。リコー(7752)は米国向け複合機の生産をタイに移管。任天堂(7974)は主力の家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の一部をベトナムで生産する方針を打ち出した。守りのコストが膨らむ半面、企業の成長投資は停滞する。財務省が今月2日発表した法人企業統計調査では4~6月期の製造業の設備投資が前年同期比6.9%減と2年ぶりに前年を割れた。

前週の日米株式市場は米中貿易協議の10月開催決定を好感し、株高を謳歌した。だが今後、企業業績の下方修正が相次げば、状況は逆回転しかねない。シティグループ証券の高島修氏は「米企業の業績悪化が米株安につながり、最悪の場合、米ドル安と米債安のトリプル安に陥る恐れもある」と指摘する。

もっとも業績悪化が招く相場下落は絶好の買い場とも言える。08年のリーマン・ショック後のトヨタ自動車(7203)や、15年のチャイナ・ショック後の三菱商事(8058)は最終赤字に陥ったが、両社の株価は底打ち後、1年間で50%超上昇した。

濃厚になる企業の減益シナリオに、投資家はどう備えるべきか。米中対立に翻弄される企業業績の行方と、対処法を探る。

[日経ヴェリタス2019年9月8日号]