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このような記事が・・中国国策市場、早すぎるたそがれ

2019-09-09 16:26:37 | 日記
中国国策市場、早すぎるたそがれ(一目均衡)
上海支局 張勇祥
中国・台湾
2019/9/9 4:30日本経済新聞 電子版

陳腐な表現だが、それはジェットコースターのような、としか言いようのない急騰・急落劇だった。

7月22日、50倍近い株価収益率(PER)で株式を公募した安集微電子は上場初日に一時、公開価格の6倍まで急騰した。その翌日に高値から4割近く下げたかと思うと、約10日後には安値から4割反転上昇。その後、再び下り坂に転じ、今は上場日の高値より4割近く安い水準で低迷が続く。

この程度の浮沈は新興企業なら珍しくもないだろう。だが、安集微電子はただの新興企業ではない。乱高下の舞台は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が主導した国策新市場「科創板」であり、安集微電子は25銘柄の上場第1陣の一角だったのだ。7月22日の科創板の取引開始祝典には、上海証券取引所のホールに上海市トップの李強・党委書記などが列席した。

安集微電子は習氏が威信をかけて国産化を進める半導体に不可欠な研磨剤を生産する戦略企業でもある。株主には「国家集成電路産業投資基金」をはじめ政府系ファンドが名を連ねる。半導体向け研磨剤は少なく見積もって日米が市場の8割を握る。安集微電子は半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)に出荷するなど一定の地位を持つが、世界シェアは3%前後にすぎない。よちよち歩きの中国半導体に官民タッグで資金を流し込もうという意図は明白だ。

業績にも国家の影は濃い。2019年1~6月期の純利益は2900万元(4億3千万円強)と前年同期比8割増えたが、利益の約5割は政府の補助金が占める。「政府支援を受ける中国企業は公正な競争相手ではない」というトランプ米大統領の主張は、故無きことではない。

「科創」は「科技創新」を略したもので、技術関連のイノベーションの先進企業を育成する場という意味を持つ。だが、実際の顔ぶれは、「今の中国に足りない技術」や「明日にも欲しい産業」を集めた、習指導部の意向がにじむ市場となっている。

上場第1陣の25社のうち、少なくとも16社が政府系ファンドや研究機関の出資を受け、6社が軍関連と取引を持つ。22日の市場開設イベントでは軍用船やロケット、測位衛星など兵器の見本市と見まがう映像が次々とスクリーンに流れた。新光光電はロケット誘導装置、航天宏図は測位衛星「北斗」、福建福光はヘリコプターや艦船に搭載する光学レンズを手掛ける。

宙に浮いていた科創板の創設を習氏が宣言したのが18年秋。米国との対立長期化を見据えた持久戦術の一環だが、上場企業の顔ぶれからは「中国版ナスダック」といううたい文句とはほど遠い姿が浮かぶ。

実際、企業価値が10億ドル(約1070億円)を超す未上場企業、ユニコーンたちは科創板を見て見ぬ振りだ。顔認証技術の曠視科技(メグビー)は香港での株式公開を選んだ。同じく画像認識技術の依図は上場先を問われ、「まだ決めていない」とはぐらかした。今の情勢では、政府や軍との関わりが深いほど、国際展開の足かせになりかねない。民間企業として当然の判断だろう。

国策企業の寄せ鍋状態の科創板銘柄の株価は、安集微電子と似たり寄ったりで、新光光電や航天宏図も高値からの下落率が2~3割に達している。個人投資家の熱狂はとうに冷め、新市場には早くもたそがれムードが漂う。