宗恒の茶庭

「茶道 思いつくまま」や「和の美術」など

「不染鉄」展 :東京ステーションギャラリー

2017-07-30 06:25:22 | 美術

初めて耳にする日本人画家。「ふせんてつ」という名前も珍しい。不染が苗字、鉄二が名前です。(これも画名?)
チラシの画は大作《山海図絵》。富士山と麓の町を俯瞰するように書いています。
よく見ると町の中を電車が走っていたり、家々も一軒ずつ細かく描かれ、岬の突端には灯台もあります。海には漁船が浮かび なんと海の中の魚まで描かれています。つまり縮尺が不染独特なのです。

《思い出の記》は田園・海辺・水郷の3巻の絵巻。思い出の言葉も細かい字で書かれていて、田舎家の部屋の中で縫物をしている女の人や本を読んでいたり昼寝をしていたりお風呂に入っている人など人々の日常も描いています。色彩もセピア色・茶色・黒といたってシンプル。

単なる風景画にも必ず田舎家が描かれていて、自然の中の人間の営みを表しています。

日本各地を転々と移動して、奈良に行ったときは薬師寺、大仏殿などを描き、私が絵ハガキを買った《いちょう》の太い根元には子供を守る地蔵菩薩が描かれています。


また、夜の田舎の風景では田舎家に穏やかな灯りがともり、夕餉を囲む農家の団欒を思い起こさせ、ノスタルジック。

画の中に細かい文字でいろいろ感想や思い出を沢山書き込むというのも不染鉄独特のもの。
個性豊かな、名は知られてませんでしたが深く印象に残る画家の展覧会でした。
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