1) 学校はSARS-CoV-2の感染拡大に関連する可能性
2) Nafamostat(フサン)吸入薬の臨床試験開始
3) 河野大臣がワクチンの選択について「まだ何も決まっていない」と
4) 第4波はもう始まっている
5) 東京:昨年12月時点の抗体保有率は1.35%、感染者把握率は推定25%程度
6) ブラジル:閣僚が相次ぎ辞任
7) 米国のワクチン効果は90%の感染減
8) NY州は4/6から16歳以上の全員をワクチン対象に
9) カナダの諮問委員会:55歳未満へのアストラゼネカワクチン接種中止を勧告
「人間は、ある意見を、そうだと思い込むと、
すべての事がらをその意見にあわせ、
その意見が正当であると主張するのに、都合がいいように寄せ集めるものだ」
(フランシス・ベーコン)
●学校はSARS-CoV-2の感染拡大に関連する可能性
→イギリス成人を対象に、各種リスクにおける子供との同居の有無による違いを、第1波と第2波を別々に解析しています。
第1波では基本的に学校閉鎖、第2波では基本的に開校していますので、学校再開の直接的影響を見る事が出来るデータになっています。
結果は、第2波で同居成人の感染リスク、入院リスクが上昇していましたが、死亡リスクには影響がありませんでした。
結論として、「小児との同居は死亡リスクの増加もなく、感染リスクや入院リスクの上昇も絶対値としては小さい」とまとめています。
このあたりは「学校再開に対する著者の思い」が入り込んでこんでいる印象があり、いわゆる”spin"に相当するのではとも思います。
65歳以上では小児との同居によりCOVID-19関連死亡率の有意な増加が見られています(論文本体には図表が掲載されていません)。
普通に、「子供が学校でウイルスに感染し自宅に持ち帰る事が証明されており、すなわち社会における感染拡大の要因となりうる」、と読むべきデータかと。
単純な学校再開はやはりリスクがあり、もしも再開するなら可能な限りの感染対策を検討、検証する必要があると思います。
Association between living with children and outcomes from covid-19: OpenSAFELY cohort study of 12 million adults in England
https://t.co/fwKwyzENe2?amp=1
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・イギリスにおける第2波において、子供との同居の有無による成人のSARS-CoV-2感染リスクおよび臨床的転帰が異なるかどうかを検討する。
・第1波 (2020年2月1日~8月31日)と第2波 (9月1日~12月18日)の期間を対象。プライマリケアデータと仮名に紐づけられた、イギリスの病院およびICU入院および死亡記録を用いた。
・第1波と第2波の大きな違いとして、第1波では原則として学校閉鎖が行われていた事、第2波では原則として開校していた点が挙げられる。
・2020年2月1日~9月1日に一般診療所に登録された2つのコホートの18歳以上の参加者を対象とした。
・主要アウトカムは、子供の同居の有無によるSARS-CoV-2の感染、入院、ICU管理、死亡の調整ハザード比とした。
(結果)
・第1波では、65歳以下の成人9,334,392において、子供との同居はSARS-CoV-2の感染、入院、ICU管理、死亡リスクの実質的な増加とは関連しなかった。
・第2波では、65歳以下の成人において、子供(年齢を問わず)との同居がSARS-CoV-2の感染リスク上昇と関連していた(0-11歳と同居:HR 1.06, 1,05-1.08、12-18歳と同居:1.22, 1.20-1.24)。COVID-19関連の入院リスク上昇も見られた(0-11歳と同居:HR 1.18, 1,06-1.31、12-18歳と同居:1.26, 1.12-1.40)。
・一方で、第1,2波ともに、0-11歳の子供との同居はCOVID-19関連および非関連の死亡リスク低下と関連していた。子供の年齢を問わず子供の同居はCOVID-19非関連死亡リスク低下と関連していた。
・第2波における65歳以下の成人の感染絶対リスクは、0-11歳の子供と同居する事で人口1万あたり810人から850- 870人と40-60人増加し、入院数は160人から161-165人と1-5人増加する計算になった。12-18歳の子供の場合には、感染絶対リスクは人口1万あたり160-190人増加し、入院患者は2-6人増加した。
・65歳以上の成人については、第1波ではどのアウトカムとの関連も認めなかった。第2波では子供との同居は、感染リスク上昇と関連しており、入院リスク上昇はなかったが、ICU入室リスク(HR 1.86, 1.11-3.14)、COVID-19関連死亡(HR 1.44, 1.05-1.97)のリスク増加と関連していた。
・結論として、第2波では子供との同居が成人の感染リスク、入院リスクの増加と関連していた。しかし、COVID-19による死亡リスクの増加はなく、感染リスク等の上昇の絶対値も小さかった。
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・子供との同居による各リスクの変化(65歳未満)
子供と同居していない人と比較したHRを算出
年齢、性別、基礎疾患等で補正しています。
第1波と第2波で有意に異なるのは、SARS-CoV-2感染、COVID-19による入院。
COVID-19によるICU管理リスクも有意差はありませんが、第2波で大きい傾向があります。
ただし死亡リスクはCOVID-19関連、非関連を問わず変化なし。
興味深い事に子供と同居していない人より、有意に死亡リスクが低いです。
・第2波のみに絞った各リスクの変化(1)(65歳未満)
子供と同居していない人と比較したHRを算出
男女別に評価しています。
小児との同居による感染リスクおよび入院リスクは男女ともほぼ同等の影響です。
・第2波のみに絞った各リスクの変化(2)(65歳未満)
子供と同居していない人と比較したHRを算出
家庭内感染対策(shielding)の実施の有無で比較しています。
具体的内容は本論文中にありませんが、イギリス政府推奨の方法があるようです。
感染自体は差がありませんが、入院や死亡ではshieldingをしている方が予後不良という結果。
感染対策を行う親には、それを行う背景となる何らかの感染リスク因子があるのではと推定します。
●Nafamostat(フサン)吸入薬の臨床試験開始
→SARS-CoV-2が感染するためには、ACE2に結合したあとTMPRSS2によりspike proteinが切断、活性化される必要があります。
NafamostatはTMPRSS2を阻害する事により抗ウイルス活性が期待されていました。
ただしin vitroでの気道上皮細胞を用いた検討では1-10nMの濃度が必要。
下は東大医科研の昨年3月のプレスリリースです。
新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定
https://ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00060.html
→フサンの添付文書を見ると、臨床で使用されるレベルで達成される血中濃度は約14〜130ng/mL。
分子量540で計算すると、達成される濃度は0.03-0.25μMとなります。
組織移行性も考慮すると、全く濃度が足りません。
これが難点というか、懸念事項でした。
→ところが、吸入となると話は違ってきます。
局所で高濃度が達成可能。
検討する価値はあるかと思います。
フサンは強い組織刺激性があったはずですが、吸入薬ではこれを解決したという事でしょう。
第一三共、コロナ吸入薬で初期の臨床試験開始
https://t.co/M9emdEsfaj?amp=1
●日本の状況
大阪が432人で東京364人を軽く超えてしまいました。
2週間早く宣言解除した答え合わせなのだと理解します。
しかし、大阪、兵庫のこの速度感は怖いです。
これから2-3日の動きによっては、迅速な対応策を判断する必要があるかと。
→東京都の推移
東京都 新型コロナ 364人感染確認
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210330/k10012944261000.html
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都内で新たに364人が新型コロナウイルスに感染していることを確認
都の基準で集計した30日時点の重症の患者は、29日より1人減って39人
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本日の全国の感染数・推移
大阪432人、兵庫176人、宮城121人、埼玉107人、
神奈川96人、沖縄87人、千葉81人、
愛知56人、北海道56人、奈良46人、
福岡30人、愛媛30人、京都30人
3月30日 新たに確認された感染者数
https://t.co/90gSdETBQF?amp=1
→河野大臣がワクチンの選択について「まだ何も決まっていない」と
自らの補佐官のまさかの勇み足・・・
厚労省のサイトも誤解を招く表示になっていて、大臣が修正を求めていると。
この国は物事を進めるのに必要になる、基本的機能の何かが壊れているようです。
https://t.co/jI5SxD4aMC?amp=1
→第1波から3波までのグラフ
こうしてグラフを眺めると、第4波がもう始まっているようにしか見えません。
黙ってみていれば、第3波より大きい波になる事もほぼ確実でしょう。
しかも今回は感染力の強い変異株が相手の可能性大です。
「新型コロナは騒ぎすぎ」と主張するオピニオンリーダーらがまだ多数いるのに驚きます。
今の緩んだムードを彼らが助長しているのは間違いないでしょう。
故に、彼らはこれらの個々のデータについて、「それでも何故問題ないのか」を説明する義務があります。
これは正解を当てる「クイズ」ではなく、最悪を想定して対応すべき命に関わる「リスク」だからです。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/entire/
→昨年12月時点の抗体保有率は東京でもわずか1.35%
抗体消失の可能性を考慮せずに抗体陽性者を感染者全体と解釈すると、
PCRによる補足率は、東京23.7%、大阪37.7%、愛知35.7%、福岡28.6%となります。
新型コロナ 抗体多くの人が保有せず 厚労省が調査結果公表
https://t.co/OPhgaiefRv?amp=1
→感染拡大を放置しているブラジル大統領
当然というべきか、政権が足元から揺らいできました。
外相と国防相が相次いで辞任。
今月はすでに保健相も交代しているようです。
ブラジル コロナ禍で閣僚が相次ぎ辞任 政治に混乱
https://t.co/ZRUw88AFC0?amp=1
→米国のワクチン効果は90%の感染減
3950人の医療従事者、救急隊員の検討で1回接種2週目で80%。
2回接種2週間目で90%の感染リスク減少と。
ワクチンを接種しつづければ、集団免疫が成立するはずです。
ワクチン免疫逃避変異の出現リスクは当然ありますが、感染者が減れば変異のチャンスも激減します。
米“ワクチン”で感染リスク90%減 「終止符打つ手段」
https://t.co/C9yj6KgZeT?amp=1
→NY州は4/6から16歳以上の全員をワクチン対象に。
加速がついてきています。
数か月後にはNY州が通常の生活に戻るのを目撃するのか?
NY州、全ての成人がコロナワクチン接種可能に 4月6日から
https://t.co/DIvhemaArt?amp=1
→血栓症リスクの懸念からカナダの諮問委員会が勧告
アストラゼネカワクチンの55歳未満への接種を中断せよと。
カナダでは血栓事例はないという事ですが、欧州での再開を受けてしばらく様子を見守ろうという戦略でしょう。
https://t.co/a0HErsDK4E?amp=1