「eco」といえば、2009年はエコ減税、エコポイント、エコ割引など、随分と取り上げられるようになったものだと思います。生活に関わるものの多くにエコ製品が販売されています。代表的には自動車(エコカー)、エアコン、TV、冷蔵庫が挙げられるのではないでしょうか。
エコカーでは、電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたHV(Hybrid Vehicle=異なる二つ以上の動力源・エネルギー源を持つ自動車)、電気モーターだけのEV(Electric Vehicle)が知られているところでしょう。
このエコの象徴とでも言える電車のハイブリッド化及び架線からの受電を不要とする電車が研究・開発されているのです。
JR財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)動力システム研究室では、省エネ・環境負荷低減を目的とした車両技術の一つとして、水素を燃料として発電を行う燃料電池を、鉄道車両の電源に適用する『燃料電池鉄道車両』の開発に2001年度より取り組んでいます。
また、車両制御技術研究部では、路面電車/郊外電車のハイブリッド化を研究し、営業線走行可能な『架線・バッテリーハイブリッドLRV(Light Rail Vehicle)』を開発製作しています。
『燃料電池鉄道車両』については、2006年度には試験車両を作成。この試験車両は室内灯や電動コンプレッサー等の電力は架線から供給する構成としていますが、将来的には燃料電池の出力を増大し、電車に必要な全ての電力を燃料電池から供給する構成を研究しています。
都市部などで利用されている電車は、「架線」という線路に沿って張られた電線からパンタグラフを通じ、電力を得て動いています。
しかし、日本の鉄道の約4割(約1万km)が電化されておらず、ディーゼル機関車による列車が運行されています。
そんな中、鉄道総研は、架線からの電源供給を受けずに「燃料電池」と「リチウムイオン電池」を併用し、必要な電力を得るハイブリッド車両の開発をしています。
これは燃料電池で必要な電力を供給し、リチウムイオン電池に蓄えた電力を併用して、電車を動かす仕組みです。
つまり、ガソリンエンジンと電気モーターの併用という自動車のハイブリッド化とは異なり、電気モーターに供給される電源を複数利用するハイブリッド化です。
しかも、このハイブリッド電車は、エネルギー回生システムというブレーキングの運動エネルギーを電力に変換し、リチウムイオン電池に蓄える方式を採用しているのです。(エネルギー回生システムは、2009年5月1日にリリースした『F1マシンの「カーズ」ってなに?』で少しご紹介しています。)
実用化には低コスト化に加え、燃料電池やリチウムイオン電池ユニットの小型化・高出力化、高耐久性などが必要で、鉄道総研・動力システム研究室では、これらの課題解決に日々取り組んでいるそうです。
鉄道総研では、約40%の非電化区間の環境対策としての導入を考えているようですが、第二段階として既電化区間への導入も行い、全区間をエコ電車が運行されるようにしてもらいたいと思います。
実現すれば、架線による送電も不要なため、電気の送電ロスも無くなります。発電所による電力を必要としないのだから、温暖化ガスの排出もありません。
正にecoのα乗の実現となります。早い完成が望まれます。