SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

バッハ無伴奏チェロ組曲2編

2007年05月31日 00時02分19秒 | 器楽・室内楽関連
★J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
                  (演奏:スティーヴン・イッサーリス)
1.無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調
2.無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調
3.無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調
4.無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調
5.無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調
6.無伴奏チェロ組曲 第6番 二長調
7.カタルーニャ民謡(サリー・ビーミッシュ編曲):鳥の歌
8.無伴奏チェロ組曲 第1番~プレリュード(アンナ・マグダレーナの筆写譜による)
9.無伴奏チェロ組曲第1番~プレリュード(ヨハン・ペーター・ケルナーの筆写譜による)
10.無伴奏チェロ組曲第1番~プレリュード(ヨハン・クリストフ・ヴェストファル・コレクションの筆写譜による)
                  (2005年、2006年録音)

ガット弦を使用いていることで名高いこのチェリストにとって、当然この曲集は思い入れの深いものであるに相違ありません。
まぁ、およそチェリストであれば誰にとっても思い入れ深い曲集なんでしょうけど。。。

でもマジで久しぶりに非常に聴き応えのあるチェロ演奏であったように思います。
全体的にはとてもインティメートな雰囲気の中に、健康的で温かみのある素朴な音楽が奏でられる聴きやすい曲集でした。
ここには「音楽の父による聖典をありがたがって聴け」とか、「畏れ多くも畏(かしこ)くも・・・」という態度は微塵も見て取れません。
逆に「オレ様の解釈を聴け」とか、「こんな風にも弾けちゃうんだぜ」的な見せつけぶりもありません。

あくまでも純粋に、聴き手とともにこの曲を共有したい・・・聴いてほしいというより「私と共に味わいませんか?」という態度で音楽をつむぎだしているように感じられるのです。
これは非常に謙虚な態度に思えるようでいて、聴き手に対しては非常に説得力を持つものであります。

第2番のニ短調などはいろんな舞曲の性格を前面に出すことで、足を振り上げステップを踏んでいるシーンが曲間から脳裏に浮かんでくるようですし、第3番ではベートーヴェンの運命の終楽章にも似た高揚感がストレートに伝わってきます。ここではCDの聴き手も音楽を盛りあげる旗手のひとりなのです。

そして第6番。
冒頭の楽章の高音域でのフレージングの何と神々しく美しいこと!
静謐なサラバンドや、有名なガヴォットでの躍動感などチェロ一本とは思えない多彩な表現を見せ付けてくれています。
控えめではありますが、ここでだけは「こんなこともできちゃうんだぞ」ということが証明できていることに聴き手は気づかされるはずです。決して押し付けがましくないですが・・・。
とくに音をしっかりと張り上げることをも辞さず、組曲集の終曲としてふさわしい重みがあるように仕上げられております。

とにかく、わかりやすく親しみやすいセットが現われたことは喜びたいですね。
ちょっとバッハでもというときには、まっ先に手が伸びることになるでしょう。


このディスクにはその余白に“鳥の歌”“第1番のプレリュード”のいろんな版を併録してありそれも興味深いです。
イッサーリスが弾いている気分がそれぞれに違うのはよくわかるのですが、楽譜のどこが違っているのかは・・・全然わかりませんでした。(^^)/


★J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲
                  (演奏:ピーター・ウィスペルウェイ)

1.無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
2.無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調 BWV1008
3.無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV1009
4.無伴奏チェロ組曲 第4番 変ホ長調 BWV1010
5.無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011
6.無伴奏チェロ組曲 第6番 二長調 BWV1012
                  (1998年録音)

イッサーリスがおおらかで素直、ときとして実直真摯な演奏だとすれば、ウィスペルウェイのそれはおおらかで陰影に富み、大胆なようでいてはにかんだところも散見されるという感じでしょうか。
ウィスペルイのほうが、音色と音そのものの身振りでイッサーリス以上に語ることができているように思います。

ときとして曲者っぽい工夫も見られますが、あくまでもさりげない雰囲気の中で語りかけてくる演奏なので私にはイヤミに感じられません。

これもこの演奏を語るときには外せない、上り調子のアーティストの生気と霊感あふれるディスクなんでしょうね。

あえて素直に舞曲を聴くという態度でなく、目を閉じチェロの響に安んじて身を任せるのであればこちらをチョイスしたほうが癒されるかもしれません。
あくまでも私の好みですが・・・。

さらに特筆大書すべきこととして録音の良さがあげられるのではないでしょうか?
中低音の張り出し、響き感の雰囲気がバッチリ収録されています。
ただしこの音はエソテリックX-50wだと出るんですが、他のマルチプレーヤー2台だと若干軽めになる憾みがあります。

チャネル・クラシックスの新譜って余り見かけなくなってしまったようにも思うんですが、私の思い過ごしでしょうか。
ポッジャーやこのウィスペルウェイ以外にも、目覚しいアーティストがいたように思いますし、レーベルのポリシーには大変共感するものがあったので実力あるアーティストとコラボレートして、価値あるディスクを数多く世に出してもらいたいものです。

いずれにしてもこの2枚、2人のアーティストとしてのあり方の違いが如実に現われた例として非常に興味深く聴き比べることができました。
充足した時間が楽しめましたね。(^^)v

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