★朝の歌 ~エルガー作品集
(演奏:加藤 知子(vn)、江口 玲(p))
1.夜の歌
2.朝の歌
3.6つのとてもやさしい小品
4.愛の挨拶
5.気まぐれ女
6.マズルカ
7.ため息
8.ヴァイオリン・ソナタ 作品82
9.カンド・ポポラーレ
(1997年録音)
ずいぶん以前に、加藤知子さんのバッハの無伴奏ソナタ&パルティータのディスクを取り上げて、そのうるおいある音色を愛でたんですが・・・。
その後しばらくして、さるCDショップを訪れたら廉価盤で出ていたので買ったのがこれ、もちろん第一義的には“愛の挨拶”をあの音色で聴きたいと思ったからであります。
そして、あのうるおいある音でエルガーの情緒をしっかり表現しながらもさわやかに、聞いたときの叙情よりもむしろ聴き終えた後の残り香が心地よいといった風情で楽しませてくれる演奏振りにはすっかり満足させていただいたものです。
今こうしてパーソネルを見直してみるとピアノには江口玲さんの名前があり、これも先日ホロヴィッツが絶賛したピアノでグランドマナーの時代の大ヴィルトゥオーゾ・ピースを弾いた彼の演奏を聴いたところだったので、このどちらかというとヴァイオリンの音色美、情緒を際立たせる影の役割に徹したような伴奏ぶりに2重の驚きを感じたような次第です。
本当にこの演奏も潤いとか、しっとり感という印象がぴったりきます。
バッハとエルガーなんて、ずいぶん遠い間柄の作曲家のように思われますが、ここまで似た質感を感じるというのはひとえに加藤さんの演奏、そしてヴァイオリンとボウ・・・要するに楽器の特性によるところが大きいのではないかと思いました。
ピアノの場合には、あるホールがあってそこのピアノと音響が気に入ってそれを採用するという場合もありましょうし、自分が気に入って自分用に調整されたピアノしか演奏しないというアーティストもいるでしょうし、逆に先般の江口さんのディスクのようにピアノの音を最大限に生かすようなプログラムをディスクに収めるという趣向もあるでしょう・・・。
でも、ヴァイオリンは楽器そのものがその演奏家のテクニックや音楽性と分かちがたく結びついている・・・いや、むしろその楽器の特性に自分の演奏を当てはめて最良の音楽を作っていく方が多いし、そのほうが実際的であるような気もします。
突っ込んで言えば、楽器が演奏家を一部拘束している・・・そんな要素もあるのではないでしょうか?
そして明らかにバッハのときと同じ音色が、エルガーの楽曲をなぞっていく・・・なぞっていくどころか、時代を超えてその気分をさりげなく表現しつくしているところこそが、私にとってこのディスクをきいた最大の関心事であり、驚きでありました。
エルガーの“気分”とは、とても平易な言葉を用いているけれど相手を思う気持ちには深くいとおしむものがある・・・ある程度その作曲年代が重なっているフランスのフォーレの濃密で深遠な気分と比べると、お国柄の違い(エルガーは英国の作曲家)もあるのでしょうがさっぱりしているところを感じます。
ただ、相手への思いやりというのは負けないどころか、もしかしたらさらに深いものをも感じるところがあったりするんですよね。
エルガーが“愛の挨拶”を9歳姉さん女房であるアリスに贈ったのが31歳のとき・・・そして30年あまりアリスはエルガーの作曲のインスピレーションであり続けたように思います。
彼女の死後には、重要な作品はとうとう生み出されなかったらしいことが、そのことを裏付けています。
いわば、ここに収められた楽曲の数々はエルガーの楽器であったヴァイオリンを通じた妻への『日々のあいさつ』という性格を持つんじゃないでしょうか?
ここに同名の曲もありますが、ショパンにとっての“マズルカ”が故郷に対する、あるいは日常のことどもに対する気分を反映した楽曲であるように・・・。
というわけで、ここで加藤さんはエルガーの平明で爽やかな旋律線を、日々のさりげないあいさつを交わすように本当に気持ちよく歌っていかれます。(^^;)
でも、そんな挨拶ができる裏側には相手への深い愛情や絆が必要であると先にも書いたように、エルガーの楽曲への深い共感も感じられるものであるところが、聴いていて心地よい要因のひとつでもあると信じられるのです。
爽やかな聴後感とともに、ほんのり心が温かくなっている・・・そんな感じでしょうか?(^^;)
ジャケットの背景も新緑を思わせる黄緑を基調としたもので、まことにエルガーの曲想にマッチした雰囲気をかもし出していると思うのですが・・・。
私の好みかもしれませんが、加藤さんのポーズにはいくぶんミスマッチを感じざるを得ませんね。
“愛の挨拶”もふくめさりげなく趣のある会話を交わしたピアノの江口さんと談笑するスナップが、この演奏には相応しいんじゃないでしょうかねぇ~。
いかがなもんでっしゃろ・・・?(^^;)
(演奏:加藤 知子(vn)、江口 玲(p))
1.夜の歌
2.朝の歌
3.6つのとてもやさしい小品
4.愛の挨拶
5.気まぐれ女
6.マズルカ
7.ため息
8.ヴァイオリン・ソナタ 作品82
9.カンド・ポポラーレ
(1997年録音)
ずいぶん以前に、加藤知子さんのバッハの無伴奏ソナタ&パルティータのディスクを取り上げて、そのうるおいある音色を愛でたんですが・・・。
その後しばらくして、さるCDショップを訪れたら廉価盤で出ていたので買ったのがこれ、もちろん第一義的には“愛の挨拶”をあの音色で聴きたいと思ったからであります。
そして、あのうるおいある音でエルガーの情緒をしっかり表現しながらもさわやかに、聞いたときの叙情よりもむしろ聴き終えた後の残り香が心地よいといった風情で楽しませてくれる演奏振りにはすっかり満足させていただいたものです。
今こうしてパーソネルを見直してみるとピアノには江口玲さんの名前があり、これも先日ホロヴィッツが絶賛したピアノでグランドマナーの時代の大ヴィルトゥオーゾ・ピースを弾いた彼の演奏を聴いたところだったので、このどちらかというとヴァイオリンの音色美、情緒を際立たせる影の役割に徹したような伴奏ぶりに2重の驚きを感じたような次第です。
本当にこの演奏も潤いとか、しっとり感という印象がぴったりきます。
バッハとエルガーなんて、ずいぶん遠い間柄の作曲家のように思われますが、ここまで似た質感を感じるというのはひとえに加藤さんの演奏、そしてヴァイオリンとボウ・・・要するに楽器の特性によるところが大きいのではないかと思いました。
ピアノの場合には、あるホールがあってそこのピアノと音響が気に入ってそれを採用するという場合もありましょうし、自分が気に入って自分用に調整されたピアノしか演奏しないというアーティストもいるでしょうし、逆に先般の江口さんのディスクのようにピアノの音を最大限に生かすようなプログラムをディスクに収めるという趣向もあるでしょう・・・。
でも、ヴァイオリンは楽器そのものがその演奏家のテクニックや音楽性と分かちがたく結びついている・・・いや、むしろその楽器の特性に自分の演奏を当てはめて最良の音楽を作っていく方が多いし、そのほうが実際的であるような気もします。
突っ込んで言えば、楽器が演奏家を一部拘束している・・・そんな要素もあるのではないでしょうか?
そして明らかにバッハのときと同じ音色が、エルガーの楽曲をなぞっていく・・・なぞっていくどころか、時代を超えてその気分をさりげなく表現しつくしているところこそが、私にとってこのディスクをきいた最大の関心事であり、驚きでありました。
エルガーの“気分”とは、とても平易な言葉を用いているけれど相手を思う気持ちには深くいとおしむものがある・・・ある程度その作曲年代が重なっているフランスのフォーレの濃密で深遠な気分と比べると、お国柄の違い(エルガーは英国の作曲家)もあるのでしょうがさっぱりしているところを感じます。
ただ、相手への思いやりというのは負けないどころか、もしかしたらさらに深いものをも感じるところがあったりするんですよね。
エルガーが“愛の挨拶”を9歳姉さん女房であるアリスに贈ったのが31歳のとき・・・そして30年あまりアリスはエルガーの作曲のインスピレーションであり続けたように思います。
彼女の死後には、重要な作品はとうとう生み出されなかったらしいことが、そのことを裏付けています。
いわば、ここに収められた楽曲の数々はエルガーの楽器であったヴァイオリンを通じた妻への『日々のあいさつ』という性格を持つんじゃないでしょうか?
ここに同名の曲もありますが、ショパンにとっての“マズルカ”が故郷に対する、あるいは日常のことどもに対する気分を反映した楽曲であるように・・・。
というわけで、ここで加藤さんはエルガーの平明で爽やかな旋律線を、日々のさりげないあいさつを交わすように本当に気持ちよく歌っていかれます。(^^;)
でも、そんな挨拶ができる裏側には相手への深い愛情や絆が必要であると先にも書いたように、エルガーの楽曲への深い共感も感じられるものであるところが、聴いていて心地よい要因のひとつでもあると信じられるのです。
爽やかな聴後感とともに、ほんのり心が温かくなっている・・・そんな感じでしょうか?(^^;)
ジャケットの背景も新緑を思わせる黄緑を基調としたもので、まことにエルガーの曲想にマッチした雰囲気をかもし出していると思うのですが・・・。
私の好みかもしれませんが、加藤さんのポーズにはいくぶんミスマッチを感じざるを得ませんね。
“愛の挨拶”もふくめさりげなく趣のある会話を交わしたピアノの江口さんと談笑するスナップが、この演奏には相応しいんじゃないでしょうかねぇ~。
いかがなもんでっしゃろ・・・?(^^;)
初めはエルガーの他のヴァイオリン曲を聴きたくて買いました。
なぜか「愛の挨拶」が飛びぬけて有名ですからね。
先日の江口さんの記事からか、改めて聴いています。
エルガーの隠れた名曲を加藤さんの甘い音色と江口さんの弾むようなタッチは誉めてあげたいですね。
これらの曲は他では見つけにくいです。
そう聞くだけで、より価値あるものを聴いた・・・と思えるところが、小市民たる所以かもしれませんが。。。(^^;)