★シャブリエ:“絵画的な10の小品”他のピアノ作品集
(演奏:アンジェラ・ヒューイット)
1.即興曲
2.田園風のロンド
3.絵画的な10の小品
4.朝の歌
5.踊るように
6.奇想曲
7.アルバムの綴り
8.ハバネラ
9.気まぐれなブーレ
(2004年録音)
アンジェラ・ヒューイットは、ファツィオーリのピアノを使用したうえで精緻に旋律線を描き分けたバッハの演奏で名を馳せましたよね。
この切り口で考えた場合に、ヒューイットほど精密かつ繊細にアプローチして実績をあげることができているピアニストはいないといって良いかもしれません。
そのヒューイットは、フランス音楽にも造詣が深いというのはディスクのカタログを見ても明らかであると思います。
旧くはクープランから既に何枚かのCDをものにし、その完結編を発表した後にこのシャブリエの1枚、ラヴェルはピアノ曲の全集をそれ以前に録音していますし、そういえばメシアンのディスクまであったなぁ~といった具合。(^^;)
これらの作品群の評価にさまざまな見解があるようですね。
私はラヴェルの全集とこのシャブリエの作品集を持っていますが、はっきり言えばラヴェルは必ずしもそのよさがはっきりわからないというのが実感です。
そしてこのシャブリエは・・・パフォーマンス以前にやはり「楽曲が」やや脆弱であるように思えます。
でも、ヒューイットの演奏は非常に多くのことを示唆してくれるという意味で大変興味深く聴くことができました。
エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)は代表作の狂詩曲《スペイン》によって広く知られるフランスの作曲家で、ロマン派からラヴェルやドビュッシーへの橋渡し的な役割を果たした人物、とディストリビューターのアナウンスにありますが、結果的にはそうなのかもしれませんが非常に特異な地位を占める作曲家であると感じました。
というのは、シャブリエの前にシャブリエのような作曲家はいなかったのではないかと思われるからです。
このディスクを聴いて初めてシャブリエに触れてみて、私の頭の中ではシャブリエはラヴェルがラヴェルになるための秀作を書いた人・・・という位置づけで捉えるのが相応しいという結論に至りました。(^^;)
むろん、一般的に正しいかどうかは別ですけどね。
私にはこのディスクから、いたるところにラヴェルのピアノ作品の閃きとも言える音響が聴こえるように思われました。
それは本当に響きの閃きともいえるニュアンスなんですが、最初の2曲からは“鏡”のなかの“蛾”や“悲しい鳥”の和声が、シャブリエの代表作らしい“絵画的な10の小品”の第4曲冒頭からは“ラ・ヴァルス”の雲間から旋律が聞こえるようなイメージが連想されたのです。
ラヴェル自身は自らの音楽の多くを師であるフォーレに負っていると述懐していますが、“亡き王女のためのパヴァーヌ”ではシャブリエからの影響が顕著だと述べていたりするように、シャブリエの音楽にはきちんとした距離感をおきたいと思いつつも知らず知らず自身の作品にそのエコーを聞くのを認めているようです。
“亡き王女のためのパヴァーヌ”へのシャブリエの影響は、正直私にはわからなかったのですが、実はラヴェルの作曲においてエレガンスや方法論はフォーレのそれを十全に吸収して、意識して自身の心の声との融合を図ろうとしたのかもしれませんが、「心の声」にはシャブリエの音響がかなり根深く棲みついているのではないかと感じさせられました。
ラヴェル独特の・・・とかねて思ってきた音の配合具合に酷似した感覚を味わうことが出来た、ということはその音響を聴いたときにどのようなキモチが惹起せられるかという点において同様の感触があったということにほかならず、シャブリエは明らかにラヴェルの先達であります。
ラヴェル自身も自らの意識下に刷り込まれてしまっているこれらの音響には、抗うことが出来なかったんでしょうね。
ですから、同じようなテイストは“高雅にして感傷的なワルツ”“クープランの墓”“ト長調の両手のピアノ協奏曲”などにも感じられます。
ただそこはラヴェルのこと、シャブリエよりはずっと洗練されて自身の音楽として消化吸収されているんですけどね。
このようにシャブリエが明らかにラヴェルのルーツのひとつであるということをヒューイットは意識して演奏したのでしょうか?
私は必ずしもそうではないと思うのですが、ここまで強く感じさせる要因は、やはりファツィオーリのピアノの均質で品位ある音色が、ヒューイットの精緻な指先によって緻密に空間に構成され放たれていることにあると睨んでいます。
このように新しい発見をさせてくれたピアニストとピアノの品質に、大いに敬意を払いたいと思うものです。
フランス音楽発展の歴史・・・だとか難しいことを考えず、ピアノの小品(ピース)を味わうつもりであれば、感覚的に楽しめる曲目も少なくないのでぜひとも一度は触れてみるといい曲集であり、ディスクであるのかもしれません。
未聴ですが、いろいろフランスのピアニストによる企画もあるようであります。
機会があれば別の解釈によるものも試しに聴いてみたい・・・そんなことを思いました。(^^)v
(演奏:アンジェラ・ヒューイット)
1.即興曲
2.田園風のロンド
3.絵画的な10の小品
4.朝の歌
5.踊るように
6.奇想曲
7.アルバムの綴り
8.ハバネラ
9.気まぐれなブーレ
(2004年録音)
アンジェラ・ヒューイットは、ファツィオーリのピアノを使用したうえで精緻に旋律線を描き分けたバッハの演奏で名を馳せましたよね。
この切り口で考えた場合に、ヒューイットほど精密かつ繊細にアプローチして実績をあげることができているピアニストはいないといって良いかもしれません。
そのヒューイットは、フランス音楽にも造詣が深いというのはディスクのカタログを見ても明らかであると思います。
旧くはクープランから既に何枚かのCDをものにし、その完結編を発表した後にこのシャブリエの1枚、ラヴェルはピアノ曲の全集をそれ以前に録音していますし、そういえばメシアンのディスクまであったなぁ~といった具合。(^^;)
これらの作品群の評価にさまざまな見解があるようですね。
私はラヴェルの全集とこのシャブリエの作品集を持っていますが、はっきり言えばラヴェルは必ずしもそのよさがはっきりわからないというのが実感です。
そしてこのシャブリエは・・・パフォーマンス以前にやはり「楽曲が」やや脆弱であるように思えます。
でも、ヒューイットの演奏は非常に多くのことを示唆してくれるという意味で大変興味深く聴くことができました。
エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)は代表作の狂詩曲《スペイン》によって広く知られるフランスの作曲家で、ロマン派からラヴェルやドビュッシーへの橋渡し的な役割を果たした人物、とディストリビューターのアナウンスにありますが、結果的にはそうなのかもしれませんが非常に特異な地位を占める作曲家であると感じました。
というのは、シャブリエの前にシャブリエのような作曲家はいなかったのではないかと思われるからです。
このディスクを聴いて初めてシャブリエに触れてみて、私の頭の中ではシャブリエはラヴェルがラヴェルになるための秀作を書いた人・・・という位置づけで捉えるのが相応しいという結論に至りました。(^^;)
むろん、一般的に正しいかどうかは別ですけどね。
私にはこのディスクから、いたるところにラヴェルのピアノ作品の閃きとも言える音響が聴こえるように思われました。
それは本当に響きの閃きともいえるニュアンスなんですが、最初の2曲からは“鏡”のなかの“蛾”や“悲しい鳥”の和声が、シャブリエの代表作らしい“絵画的な10の小品”の第4曲冒頭からは“ラ・ヴァルス”の雲間から旋律が聞こえるようなイメージが連想されたのです。
ラヴェル自身は自らの音楽の多くを師であるフォーレに負っていると述懐していますが、“亡き王女のためのパヴァーヌ”ではシャブリエからの影響が顕著だと述べていたりするように、シャブリエの音楽にはきちんとした距離感をおきたいと思いつつも知らず知らず自身の作品にそのエコーを聞くのを認めているようです。
“亡き王女のためのパヴァーヌ”へのシャブリエの影響は、正直私にはわからなかったのですが、実はラヴェルの作曲においてエレガンスや方法論はフォーレのそれを十全に吸収して、意識して自身の心の声との融合を図ろうとしたのかもしれませんが、「心の声」にはシャブリエの音響がかなり根深く棲みついているのではないかと感じさせられました。
ラヴェル独特の・・・とかねて思ってきた音の配合具合に酷似した感覚を味わうことが出来た、ということはその音響を聴いたときにどのようなキモチが惹起せられるかという点において同様の感触があったということにほかならず、シャブリエは明らかにラヴェルの先達であります。
ラヴェル自身も自らの意識下に刷り込まれてしまっているこれらの音響には、抗うことが出来なかったんでしょうね。
ですから、同じようなテイストは“高雅にして感傷的なワルツ”“クープランの墓”“ト長調の両手のピアノ協奏曲”などにも感じられます。
ただそこはラヴェルのこと、シャブリエよりはずっと洗練されて自身の音楽として消化吸収されているんですけどね。
このようにシャブリエが明らかにラヴェルのルーツのひとつであるということをヒューイットは意識して演奏したのでしょうか?
私は必ずしもそうではないと思うのですが、ここまで強く感じさせる要因は、やはりファツィオーリのピアノの均質で品位ある音色が、ヒューイットの精緻な指先によって緻密に空間に構成され放たれていることにあると睨んでいます。
このように新しい発見をさせてくれたピアニストとピアノの品質に、大いに敬意を払いたいと思うものです。
フランス音楽発展の歴史・・・だとか難しいことを考えず、ピアノの小品(ピース)を味わうつもりであれば、感覚的に楽しめる曲目も少なくないのでぜひとも一度は触れてみるといい曲集であり、ディスクであるのかもしれません。
未聴ですが、いろいろフランスのピアニストによる企画もあるようであります。
機会があれば別の解釈によるものも試しに聴いてみたい・・・そんなことを思いました。(^^)v
配合具合ねぇ~。。。
よく聴きなおしてみよっと!(^^)/