SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

芸術ファンのための優秀装丁盤

2007年09月07日 00時08分28秒 | 器楽・室内楽関連
★J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲
                  (演奏;Wladyslaw Klosiewicz(cem))
1.ゴールドベルク変奏曲 ト長調 BWV.988
                  (2000年録音)

ノッケから困りました。この方の名前が読めないんです。
「l(小文字のエル)」で表現しているものは本当はチョメがついててエルじゃないんですが、表示できません・・・。(>_<)
クラウゼヴィッツって読むんでしょうかねぇ?
あの「戦争論」の作者と同じように・・・。とにかく、英文表記でお許しを。

さて、ポーランドのアコール・レーベルから出ているこのディスクは、確かステレオ・サウンドの「オーディオファイルのための優秀録音ディスク」に紹介されていたので記憶の底にあったものだと思います。

何気なく店頭で手にとってそんなことを思い出したのですが、私は直ちに入手することにためらいはありませんでした。

ウソです・・・。
ちょっと考えましたが、その日のうちに結局買って帰りました。随分前の話ですが・・・。(^^;)

なぜかというと、寝室の品の良い木目模様のような青い生地の上にカツラがカツラ立てに置いてあるという趣向の装丁があまりにも美しかったから・・・であります。
アコール・レーベルの品質はかねてよりいろんなディスクで承知していますし、曲目も聴き応えがなかろうはずがない申し分ないもの。
私の財布の紐は、この角度から責められた場合には誠にあっさりと解けてしましますなぁ~、毎度のことながら。。。
(^^;)

手前の青い生地に一度あたって照り返したような光に浮かぶカツラのジャケットですが、ホントにきれいなんですよ!
思わず背景の品の良いクロについてしまった自分の指紋を拭き取りたくなるぐらい・・・。(^^;)

そして中ジャケの写真もまた途方もなく美しいんです。
この青い木目模様の生地は、実は部屋のカーテンと同じ素材であることが判ります。品良くベッドメークされた寝台があり、さらにディスクを取り出すべくジャケットを観音開きにすると蒼の木目の机の上にゴールドベルク変奏曲の楽譜表紙、アリアの楽譜の断片、鮮やかな白い羽ペンと綺麗に使い込まれた懐中時計がジャスト・フォーカスで撮影されています。

もちろんシチュエーションは伯爵が就寝するであろう部屋であり、楽譜はバッハその人をオーバーラップさせるためなのか、実際にゴールドベルクが演奏するために手許に持っているものという設定なのかは定かでありません。
しかし、はっきりいってこの装丁に収まったディスクが、ゆめゆめヘンな音を出すわけがないと信じることなど造作ありません。
それほど魅惑的なジャケットなのです。

私は本来デジパック仕様のジャケットはキライなんです。
かさばるし、傷つくし、使い勝手が悪いし・・・ですが、ここまで芸術性を高められてしまうと、これでしか味わえない趣が確かにあると認めざるを得ませんねぇ~。(^^;)

色という色の品がウットリするほかないまでに素晴らしい!

とくに背景の黒、くっきりしすぎてはないけど確固とした存在感を示す光の浮き上がり方、ホレボレするばかりです。


もちろん音楽の中身も素晴らしいですよ。
なんてったって優秀録音番ですから、この美しい音のチェンバロの魅力をあますところなく捉えきっているといってよいと思います。
クリアでありながら潤いがあり、明るい響きがイヤミなく収録されている・・・できそうで、できないことじゃありませんか!

また奏者の解釈もなかなか巧みに構成されています。
最初の出だし、まず美しく張りのある音色に「おっ!?」と期待感を持った刹那、テンポとアゴーギクがけっつまづきそうになるほど遅いことに驚きます。

美しい音を同時に発音することで不必要に響きを混濁させないようにという配慮なのか、もしくは単に表情付けしたらこんなふうになっちゃったのか判りませんが、ほんのわずかでもこれより強烈にしたらゲテモノになるぎりぎりの線で踏みとどまったかのような芸術的なフレージング。
聴き手はイッパツで注意を引き込まれること間違いありません。

そのイビツ直前のフレーズはリピートでも同じですが、ほんの気持ちだけテンポが普通になっているようにも感じられます。
アファナシエフが美しい音でピアノを鳴らしきりながらも、テンポを異様に遅くして思索しながら弾いているのにも、どことなく共通点があるようにも思えるはじまりであります。
できあがりはややケッタイでも、音それ自体は極めて明晰ですからね。(^^;)
ただ、それを味わい深いと聴けなくもないように仕上げているさじ加減には、端倪すべからざるものがあるのは確かです。

その後の変奏からはテンポが遅いという感覚はあまりせず、それぞれの変奏の性格をきっちり押さえて弾き進めていきますが・・・楽器の音色が美しいのと、何故か判らないのですが生理的にツボを押さえられてしまったのか、その音楽の世界へずっと連れ去られ、知らず知らず引き込まれてしまうような感覚を覚えました。

チェンバロってけっこう強い音が出ていると思うのですが、セミが鳴いているようなというか鳴っていてもそれがうるさいと感じないばかりか、癒しの揺らぎを感じられてしまうというイメージでしょうか?

これは明らかに演奏者が自身の何らかの技術でもって、聴き手を幻惑しているのに相違ないと思われます。
なにより、何とか理論とかバッハの作曲の際の論理構成を反映したといった難しいことを全く感じさせないのが素晴らしいです。

崇高な曲も、やや鄙びた田舎を思わせる曲も、すべて曲の要請のあるがままに気分を醸し出すことができるテクニック。
心からの共感があればこそ・・・なんでしょうかね。
いずれにしても見事なものです。

最後のアリアは、最初のアリアとは比較にならないぐらいテンポもアゴーギクも普通です。
それもあって、非常に爽やかな聴後感を残してくれるのです。

いや、芸術性の高いディスクだわぁ~。
カイザーリンク伯爵になったような気分で聞けますね。こんなステキな演奏であれば眠るわけにいきません。(^^)v


今回も衝動買いの勘は当たったわけですが、この装丁を見たときからこの結果は約束されていたのかもしれません。

こんなディスクが増えたら楽しいでしょうにね。(^^;)




さて、パバロッティの訃報が出ていました。
こころからご冥福をお祈りしたいと思います。

合掌

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