Mayumiの日々綴る暮らしと歴史の話

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★江戸のおまじない本『旅行用心集』とは

2018-02-04 04:06:21 | Weblog

今の時代、旅行は決して特別なことではない。海外ならともかく、国内旅行をするのに、身の危険を覚悟して出かける人は、先ず居ないだろう。だが、昔はそうは行かなかった。交通機関が発達する以前は、旅行には多くの困難が伴ない、場合によっては命がけのものだった。
庶民の間で旅行が盛んになったのは江戸時代。最初は団体旅行が中心だったが、やがて親しい友人や個人の旅が盛んになった。少しでもお金と時間に余裕がある人はあちらこちらと出かけて行ったが、それは危険と隣り合わせだった。個人の旅になると悪質な馬方や駕籠かきに法外な料金を請求されたり、金品を奪われたりと云ったことも珍しくなかったし、旅の途中で病に倒れても、現代の様に直ぐに病院に行くと云うわけには行かなかった。その為、庶民の間でベストセラーになったのが『旅行用心集』だ。1810(文化7)年に八隅蘆菴が書いた本で、言わば旅のハウツー本。そこには様々な注意書きが記され、いずれも現代の旅行にも通じそうな内容が記されている。ところが、中には、科学的な根拠もほとんどない、呪術的な記述...もある。例えば、海や川を渡る時には、水面に「土」と云う字をまじないとして書けば水難に遭わないとか、船に「賊」の字を書いて最後の点だけは額に打つと船酔いしない、と云った情報が載っている。
『旅行用心集』が出た時代は、呪術と科学の間の過渡期でもあった。それより以前には、足にマメができた時には、「腫れるな、膨れるな、潰れるな」と云った様な呪文を三度唱えるとか、マメを手か煙管の雁首で撫でて、「やっとこ、とことん、なんまいだ」と三度唱えてから「アブラウンケンソワカ」と唱えれば良いと云った様に、不思議な呪文を使った民間療法がたくさんあった。幾ら『旅行用心集』に呪術的な項目があると云っても、さすがにこんな呪文は出て来ない。その後、幕末から明治・大正時代を経て、病気は医療に委ねるものになり、旅行の時の心得も科学的なものになって行った。しかし、それでも、乗り物に乗ったら「鶴亀鶴亀、オンケンソワカ」と三度唱えて、アズキを三粒食べると乗り物酔いもしないし、事故にも遭わない、などと云う言い伝えが残っているくらいだから、呪文の影響力は強力である。

       

                    呪い あなたの知らない不気味な世界
                            -あなたも当事者かも知れないー
                                 習俗に秘められた魔の呪術

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