*創設者はキリスト教界のエリート
キリスト教のローマ・カトリック教会の一つであるオプス・デイは、その会員数が世界80か国以上、約8万5000人いるとされている。ラテン語で「神の業」を意味するオプス・デイは、1928年、スペインのホセマリア・エスクリバーによって創設された。そして1947年にはローマ教皇の認可を受け、スペイン国外にも広まって行った。
エスクリバーは2002年にバチカンで列聖(信仰の模範となる者に対し、聖人の地位を授けること)されたが、死後30年足らずで列聖されるのは異例のことであった。オプス・デイでは「聖性に達する為の最高の秘訣は、唯一の模範である優しいイエス・キリストにどんどん似て行くことである」と教えており、更に苦行をすることが奨励されている。...
これは「十字架によって全ての人が天国に行く道を開いたイエスに倣おう」という考えの下で行われているもので、独身者だけが行うことを許されている。
*カルト教団として認知される
彼らが行う苦行にはシリスという鋭いトゲだらけのベルトを太ももに装着し、痛みに耐えるというものがある。ただし、「オプス・デイ カトリックの新しい動き」(白水社)には、苦行の実態についてこう記されている。
自分の背中をムチで打ち据えるという習慣もあるが、基本的にはヒモを編んだ縄を使い、自ら加減して叩くので体に傷跡は残らない。苦行の時間も1日2時間までと定められており、拷問のようなことが行われているわけではない。
だが現在、オプス・デイはカルト的な扱いを受けている。他の宗教でも厳しい苦行が奨励されているのにオプス・デイだけが異端視されているのは、戒律に厳しく他の宗派との違いが際立っているからだ。そして「オプス・デイ=カルト集団」という印象が決定的に根付いたのが、ダン・ブラウン原作の映画「ダ・ヴィンチ・コード」での描写である。この作品に於いて、オプス・デイ側が「この作品はフィクションであるという但し書きを入れてほしい」と配給会社に再三要求する程だった。また、同作品でオプス・デイがこのような扱いを受けているのは、原作者のダン・ブラウンがキリストを有史初の男女同権論者と見なしていたからという説もある。
オプス・デイは厳密な男性優位主義を貫いているが、それ故にダン・ブラウンにより、悪役として書かれたという向きもあるが、審議のほどは定かではない。
*現在も続く勧誘活動
このように、何かと話題になりやすいオプス・デイだが、必ずしも狂信的なカルト集団ではないとは言い切れない面もある。何故なら、彼らは苦行以外に、カルト集団と疑われても仕方ないような行為を幾つも繰り返しているからだ。
その一つが信者による大学生への強引な勧誘行為で、最初はサークルへの参加と称してセミナーに誘い、司祭による霊的な指導を何度も受けさせる。そして頃合いを見計らい、学生に入会を迫っているのだという。
出家した信者は集団生活を送り始め、家には帰らなくなる。彼らの多くは一般社会で働いているが、その収入のほとんどを教団に捧げているという。彼らはやがて教団の組織運営に専念するようになり、世界各地に派遣されて布教に携わって行く。
オプス・デイ側はこれまで、自分たちがカルト集団であることを真っ向から否定して来た。だが、極端な秘密主義をとっているのも事実で、彼らが裏で何を行っているのか、その全貌を知ることは容易ではない。
*画像
バチカンには聖人となったエスクリバーの像がある
ベルナルド・ダッディ画「キリスト磔刑」
オプス・デイでは、キリストが受けた苦難を我が身にも受けさせる為に、苦行を奨励する
苦行に使われた「シリス」と呼ばれるトゲ付きのベルト
本当に恐ろしい地下組織
独自の信念を持つ組織