FEEL ambivalence

毎日、いろんなことを思います。
両極端な感じで。

両面価値。
同一対象に対する愛憎共存。

「黒龍の柩」/北方 謙三。

2006-04-08 11:58:26 | 
もしかしたら、北方さんの書いた本のレビューは初めてかもしれない。
この際だから言ってしまうが、実はハードボイルドが大好きなのだ。
まぁ、知っていたかもしれないが。
好きな作家のレビューは書きづらい。
好きにうまく理由をつけられないから。

小説というのは、他人の視点で描かれた夢や思想を共有させてもらえる楽しみだと思う。
映画も同様に思えるけれど、音楽や映像が存在する以上、ある程度自由が束縛されてしまう。
小説は規制が何もない。あるとすれば、目の前に存在する文字のみ。あとはアタマの中で世界が動き出す。

現実でいつも悩んでしまって動けなくなるぼくがハードボイルドにはまってしまうのは、必然だったのかもしれない。
ぶつぶつと切れる文体は独特で、なんとなくリズムがちょうど良くて。
一時期は北方さんの本ばかり読んでいた覚えがある。
このごろは少し離れていたけれど。

北方さんは近年、歴史小説に力を注いでいるようだ。水滸伝や三国志など、上梓された歴史小説はたくさんある。そして、いよいよ「新撰組」の物語が登場した。

新撰組と言えば司馬遼太郎さんの「燃えよ剣」が名著であると思っている。
近藤勇ではなく土方歳三にスポットをあて、波乱に満ちた新撰組の誕生から終焉までを描ききっている。
「黒龍の柩」も主人公は土方歳三であるが、この作品はこれ以上内容を紹介したくない。
なぜなら、そこには北方謙三さんの思い描いた新しい土方像があるから。

様々な新撰組に関する小説やら歴史書が出ているけれど、あれが正しい、これが間違っていると批判することに何の意味があるだろうか。
正しい歴史が知りたいならば大学図書館で歴史を探し出せばいい。
これほどまでに多くの新撰組に関する書籍が出ていると言う事実。それはその数ぶんのたくさんのヒトの思い入れがあるからだろう。
北方さんの新撰組も思いが込められた、新しい世界を構築している。

最後の最後、びっくりするような仕掛けがあって。
でも、本当ならそれもいいかな、なんて思えるような。
そんなお話。

しかし、史実とかけ離れてしまっている以上は、ある程度史実の知識が必要になる、ということだろうか。
これが本来の歴史ではない、と全てを否定することはできないけれど、全てを肯定することもできない。
歴史小説というのは、ある程度本流となる史実の知識があり、その上で別の流れだったらこうも考えられる、ということを楽しむものなのかもしれない。
あまりにも破天荒な歴史小説は読んでいてつらいけれど、節々でパラレルを想像できるような、そんな小説ならば、登場人物はリアリティを纏って生き生きとする。

北方流新撰組、堪能させていただいた。

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