「近代美学入門」(井奥陽子、ちくま新書)を読み終えた。18日にも記した通り、私の理解がおよばないのであろうと思うが、感想はいまひとつ。
「主観主義的な美の捉え方には共感を覚えます。唯美主義や芸術至上主義も、芸術の可能性を広げ、豊かな作品を馬堕しました。これらを否定したり、中世以前に戻るべきだと主張したりするつもりはありません。公序良俗に反するものであっても、その人が美しい感じるとはどうにも動かしようがありません。主観主義美学に基づいた美の自律性がときに常識か普遍的真理かのように語られることがあります。こうした事態に対しては、近代美学史に携わる身としては危うさを感じる‥。」(第3章)
是非とも「現代美学」についての言及が欲しい、と感じた部分である。「美」が静的ではなく、鑑賞者にとっても、作者にとっても、動的であり時間軸を外すことはできないということ、「時代」や「社会」の時間軸も挿入しなくてはならないということを前提とした論を求めている私がいることに、ようやく気がついた。
鑑賞する側だけで言っても、知識の累積、鑑賞した作品の反芻・醸成、年齢による経験の差や時代認識や作品背景の了解度等々、ファクターは無限にある。
私自身の問題意識に気づかせてもらったことは収穫。