Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

岩波書店「図書7月号」から 1

2020年06月30日 20時56分17秒 | 読書

 13時半ころ家を出たときはいったん雨が上がった者の、桜木町駅に着いたころに雨がポツリポツリ降り始めた。会期が終り桜木町経由で横浜駅に着くと土砂降りの雨と、舞うような風であった。地下街に戻ると、階段を伝って吹いてくる風で扉が悲鳴を上げるように唸っていた。
 しばらく書店で時間をつぶし雨がおさまってから、地下鉄で帰宅。その後雨は降ってはいないが再び風が強くなり、ベランダに置いてある箒などが煽られている。



 昨晩岩波書店の「図書7月号」が届いていた。いつものように覚書として。

・表紙絵                司  修
「道は夢によく出て来ます。少年時代はほとんど迷子の夢でした。よく考えてみるとわたしの人生そのものが迷子の連続たったかもしれません。独りで学ぶしかなかった絵画は、気がつくと迷子でした。」

・居間だからこそ読む、阿部公房     ヤマザキ マリ
「安倍公房は人間の生きるありさま、そして人間の作り出した社会という現象を、まるで昆虫の生態記録を綴っているかのように俯瞰で表現し続けた作家だが、「けものたちは故郷をめざす」はまさに情緒性や感傷を嫌う安倍公房のぶれない意識が明確に象られた作品のひとつだ。乾いた空気と殺伐とした好例が広がる満州は、人間にとって生き延びる絶望感を容赦無くつきつけられる場所であり‥。‥この物語は、漠然とした不安で覆われた、まさに今という時代に読むことでこそ覚醒する、質感のある感慨に満ちている。」

・静かな春と「作業日誌」        岡村幸宣
「原爆の図丸木美術館のある都幾川のほとりは、春になると匂いが変わる。太陽の光の強さが変わる。大地から樹々から、いっせいにいのちが芽吹いてくる。しかし今年は静かな春だ。」
「芸術の歴史をさかのぼれば、太平の世の爛熟だけでなく、乱世にあっても人は表現を手放さなかったことがわかる。人間の心をえぐるような痛みや、辛辣な社会批判を通して世界の世界の本質に近づき、記憶することもまた、文化の厚みといえるだろう。」
「歴史は過ぎ去った時代の物語ではなく、今を生きる私たちと地続きの現実である。時間は未来という一方向のみに開かれるものではなく、過去の記憶にも開かれている。」

・古本屋は、無限の世界とつながっている   切通理作
「古本屋が東京都の休業要請の対象となった。「不要不急」に古書が含まれるという擬陽性の認識には異を唱える声が上がっているし、私もそれはまさに過去と現在の分断であるとおもう。‥このうえは、「不要不急」呼ばわりされた側として、一日でも長くこの世に居座っていきたいという気持ちも芽生えつつある。」

・『孤塁』からバトンを受け取る      金平茂紀
「本を読み終えると同時に、噴き出すような涙が流れだすという経験はそう頻繁にあるものではない。『孤塁――双葉群消防士たちの3・11』の末尾の二行に行き着いて、不覚にもそうなった。<ここまで、私は「バトンを渡す」という思いで書き続けてきた。どうか、このバトンを、あなたも受け取ってくださることを願う>」
「福島第一原発の事故現場で緊急対応に必死にあたっていた東電の所長や作業員らを『Fukushima50』と呼んでヒーロー視する映画が公開された。そういった試みを否定するつもりなどぼくにはない。だが、まったく顧みられることもなかった消防士たちの活動はどうしたら報われるのだろうか。‥ヒーローにも愚者にも、悪党にも善人にも、ウィルスは無差別に襲いかかるという冷徹な事実だ。ヒーローではなく、無名のまま、無私のまま、医療現場で黙々と人の命を救おうと仕事を続ける人々のように、消防士たちは物語を要求しなかった。<‥過酷な活動を続けながら、「ヒーローになる必要はない」とそれらが報じられることもないまま、淡々と孤塁を守り続けた彼らがしばしば口にするのは、「忘れないでほしい」という言葉だ>」



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