「モネ それからの100年」展の第2章で最初に展示されているのが、「セーヌ河の日没、冬」(1880、ポーラ美術館)。
最初の妻のカミーユが亡くなった翌年、セーヌ河が凍結するという大寒波がヨーロッパを襲い、多くの画家が描写をしている。この作品、カミーユの死から画家の回生の作品と云われている。結氷と解氷、あわせて20点の作品に没頭するモネに「回生」の契機を求めるという解釈の当否は別として、そのエネルギーには驚く。
なお、この作品や「印象 日の出」、「黄昏 ヴェネツィア」、「ジヴェルニーの積みわら、夕日」などのあの橙色が美しい作品はいづれもスキャナーでの取り込み・再現がとても難しい。自動補正でも手動補正でも色合いがどんどん原作から離れていく。機械処理がとても難しい。これもモネの色彩感覚のすごさなのか、と驚いている。
この作品は「チャリング・クロス橋」(1899、メナード美術館)。1899年から1901年にかけて断続的に倫敦に滞在し、フランスにもどっからも作品を仕上げているとのこと。解説によると画家は「私が失敗したのは、仕上げのタッチを加えるのにこだわった点です。最初のいい印象があっという間に消えてしまったのです。‥自分の力のなさにうんざりしました。」と記しているとのこと。だが、私はこの手の色彩感覚がとでも気に入っている。いかにもモネらしい画面が印象に残っている。霧の中で太陽の光が踊る雰囲気、特に煙が印象的である。
この第2章には影響を受けた作家として、写真のエドワード・スタイケン、ウルフレッド・スティーグリッツ、画家のマーク・ロスコ、モーリス・ルイス、ゲルハルト・ペインティング、松本陽子、根岸芳郎、水野勝規、丸山直文などの作品が展示されている。
スタイケンの写真は、歳の中の霧・水・水蒸気などをキーワードにモネとの共通の感覚というものを実感した。しかし私はまさかロスコの作品「赤の中の黒」(1958、東京都現代美術館)がここに取り上げられるとは思ってもいなかった。これは今回の解説の記事をじっくりと今後咀嚼してみようと思った。解説では「ロスコの絵画の茫洋とした瞑想的ヴィジョンの源泉に、彼にとっての原風景であるロシアやポーランドの夕日の康慶があることを指摘する向きもある。その繊細な色層の向こうから溢れ出てくるような光の感覚には、モネの作品、とりわけロンドンの連作との相関性を見出せよう。」とある。
客観的な解説以外はあまり参考にしないものの、ロスコとモネの関係については心にとめておこうと思った。
松本陽子「振動する風景的画面Ⅲ」(1993、倉敷市立美術館)は既視感のある作品である。具象から抽象への過程に着目して、モネの位置が見えてくるような気がしている。(ここは思い付きの独り言)