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Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

冬満月

2022年12月06日 22時44分42秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 本日は夕方までには太陽が顔を出す予報であったが、結局は厚い雲が空を覆い、青空も太陽も見ることは出来なかった。そして寒々とした気温が続いた。15時過ぎの9℃が最高気温となった。横浜ではもっとも寒い時期を下回る気温であった。最低気温は明け方の5℃と今季最低気温。
 気温も、木々の様相も、ようやく冬の様相である。そして8日は十五夜で満月。

★寒満月急に遠吠えしたくなる      大坪和子
★冬満月歩幅ひろげてゆく一人      幡野千恵子
★立ちしものに光りを注ぎ冬満月     碇 英一

 第一句、冬の夜は音が遠くに響く。空気が乾燥して伝播しやすいこと、そして放射冷却で気温の低い空気の上に温かい空気がかぶさって音を地表のほうへ反射するため、と教わった。私が生まれたころには、野犬や、放し飼いの犬や、庭で飼う犬が多く、遠くで吠えているのが耳に入ってきて怖かった。そんな昔を思い出しながら、冬の満月に向かって遠吠えをしたくなる気持ちがわかるような気がした。
 第二句、普通ならば寒いこの季節、満月が空にかかる夜に外を歩くと、寒さで小幅な動きなる。にもかかわらず悠々と大股でゆっくりと胸を張って歩く人、眼がおのずと吸いよせられる。さて、どんな人なのであろうか。自信に満ちた人となりをうらやましくも思う。
 第三句、冬の満月の光が街中を照らす。夏とは違い、木々の葉に遮られることもない。葉を落とした木々の黒々とした姿が目立つ光景が目に飛び込んでくる。蕪村の「月天心貧しき町を通りけり」を思い浮かべた。

 


「菊帝悲歌」から

2022年12月06日 20時47分54秒 | 読書

   

 本日の読書は「菊帝悲歌 小説後鳥羽院」の第4章「などあけもぼのと-建暦三年1213」を少々と、「跋」、解説「後鳥羽院投影」(千街晶之)に眼をとおした。
 昨日読んだ第3章では
巻頭第一首から、新古今和歌集は死霊がついてゐる。だからこそ、だらこし人を誘(いざな)ひ、酔はしめる。だからこそ一首の下限にも、それを置く位相にも正者は心を尽くさねばならぬ。
という箇所に付箋を着けた。

 いかにも塚本邦雄ならではの新古今評価だと感じた。


冬の雨

2022年12月06日 11時24分30秒 | 俳句・短歌・詩等関連

 昨晩は雨が強まり、外に出ている風呂釜にあたり大きな音が続いた。家の北側のプラタナスは樹上の枯葉はほぼ落ちてしまい、芝生や道路上に溜まった葉も片づけられたため、落葉にあたる雨の音もはとんど聞き取れなかった。いよいよ冬本番の様相である。
 乾燥した冬の日ならば際立って聞こえるはずだが、雨がひどいと救急車や消防車、パトカーなどのサイレンの音も少し和らいで聞こえた。

 本日の明け方には雨が上がる予想になっていたが、まだ0.1ミリ未満のレーダー雨量計には表示されない弱い雨が降っている。

★永遠の待合室や冬の雨         高野ムツオ
★傘ささぬ子の現れし冬の雨       波多野爽波

 第1句、「永遠の待合室」とはどこか。たぶん斎場というのが、一般的な解釈。火葬を待つ間の寒々とした待合室なのだろう。普段交際のない親族などの間で無口に時間を過ごすことが多い。さまざまな思いが去来する。故人を介して成り立つ場である。寒々しい冬の雨が生きている。一方で、廃線あとに残された駅舎の待合室だと、寒々しい待合室でも、少し温かみを感じる。この待合室を利用した親族でも近所付き合いのない人も入るかもしれないが、椅子や壁に刻まれた痕跡はなつかしみがある。斎場の寒々しい雰囲気とはおおいにちがう寒さである。少し救いすら感じないだろうか。
  第2句、窓越しに眼で見る冬の雨である。雨が上がったのを子どもと傘の視覚、そして子どものいきおいのある息遣いで認知する。