伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

腹を割ったら血が出るだけさ

2022-10-19 23:46:35 | 小説
 愛されたい故に自分を偽り続けていると自己規定し、計算した言動をするたびに密かに舌を噛み死にたくなる高校生糸林茜寧が、小楠なのかという架空の作家が書いた3冊目の小説「少女のマーチ」を読んで、まさに自分のことを書いた小説だと考え、街で出会ったライブハウス勤務の女装男宇川逢に小説中の登場人物「あい」を投影し、小説中の設定・できごとと茜寧が認識することを追体験しようとするという小説。
 小説と作者・読者の関係、小説が何をできるかというようなことを、「少女のマーチ」と茜寧ら登場人物、さらには小楠の関係で、またアイドルグループ「インパチェンス」とファンの関係にもなぞらえながら描いているのかなと思いました。
 「私も文学賞とか、あと本屋さんの賞とか?獲ったからって読まないです」(73ページ)って、デビュー作「君の膵臓をたべたい」が2016年本屋大賞第2位(大賞は宮下奈都「羊と鋼の森」)となって売れっ子作家となった作者が言うのは笑えます。それとも、大賞が取れなかった恨み/僻みでしょうか。


住野よる 双葉社 2022年7月30日発行
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インボイス導入で変わる消費税実務【令和4年改訂版】 課税事業者・免税事業者の対策

2022-10-18 21:29:35 | 実用書・ビジネス書
 2023年10月1日から導入されるインボイス制度の内容と売り手側・買い手側での対応・導入準備について解説した本。
 商品・サービスの購入側(その代金を経費としたい側)が消費税を本則課税(基準年度の課税売上高5000万円超)の事業者の場合に、仕入れ税額控除(自分の課税売上高にかかる消費税額から経費として支払った消費税額を差し引いて納税する)をするために、登録した適格請求書発行事業者が発行したインボイスを受け取り保管することが必要となるということでいろいろな業界を騒がせている問題です。導入後は、インボイスを発行できない/しない個人・零細事業者は、仕入れ税額控除をしたい取引先から排除され、取引停止となるのではと、個人・零細事業者には悩みの種になっています。私のような事業者でない個人や事業者でも零細規模(消費税は免税か簡易課税)の人の依頼しか受けない弁護士には、本来は関係ないことがらなんですが…
 インボイスの記載要件は、発行者の名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとに区分して合計した価格(税込みまたは税抜き)と適用税率、税率ごとに区分した消費税額、宛先の名称で、「税率ごとに区分した」の点を気をつければ、通常の請求書や領収書に登録番号を打つだけのもので、実際書式はどうでもよくて全部手書きでもいいんだそうです(126ページ)。
 ただ、不備があると仕入れ税額控除を受けられなくて、税率ごとに区分した合計が書かれていないとか、端数処理が税率ごとの合計段階で1回だけにしなければならず商品ごとに端数処理した合計ではいけない(170~175ページ)とか、いろいろとうるさい面倒なことが起きそうです。代金振込時に振込手数料を売り手側の負担として代金から振込手数料を差し引いて振り込まれたときにはその振込手数料の処理のためにインボイスの交付要求をすることになったり(200~204ページ)、なんだか頭がクラクラ・イライラしてきます。振込手数料の消費税分の控除って、数円のために事実上それ以上の費用(担当者がそれにかける時間の賃金を考えると…)をかけるとか、なんか役人の自己満足か会計業界のニーズ開発のために振り回されているんじゃないかと思えてきます。


渡辺章 ぎょうせい 2022年7月21日発行
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破戒

2022-10-17 22:23:26 | 小説
 長野県内の被差別部落に生まれ、父が故郷から離れた地で牧場を営み、その父から被差別部落の生まれであることを「隠せ」と戒められて、師範学校を出て今は飯山の町で小学校教師となった瀬川丑松が、部落出身者であることを公言して虐げられた民の側からの主張を著し続ける思想家猪子蓮太郎に憧れ、猪子蓮太郎が推す代議士候補の弁護士市村の政敵高柳や、丑松を煙たく思う校長に忖度する同僚教師の勝野文平によって丑松の素性に関する噂を流される中で、懊悩する小説。
 丑松の迷い、戸惑い、恐れが、情景描写や、種牛に突かれて死んだ父を弔うための帰郷の比較的長いエピソードに、巧みに描き込まれ、思ったよりも長編でしたが久しぶりに近代小説らしい作品を読んだなぁという感慨を持ちました。
 2022年の映画作品のわかりやすさは好感できましたが、原作小説の長さがより丑松の思い、逡巡、苦悩を感じさせて味わい深いと思いました。
 現在の感覚からすれば、去るのでは解決にならない、居残って戦うべきだということになるかもしれません(もっとも、1980年代ニューアカブームでは逃げるが勝ち、近年はいじめに対して、学校に行かなくていい、まずは身を守れと言われますから、そうでもないかもしれません)が、書かれた時代(1906年出版)を考えれば致し方なく、問題提起だけでも十分というべきでしょう。
 私は(近視が著しいけれども)老眼がまだ来ないので苦にはなりませんが、久しぶりに見る1行43字19行の組は、ずいぶんと小さな字に見えました。文庫の標準的な39字18行に比べて16%程度字が多いだけなのですが。


島崎藤村 岩波文庫 1957年1月7日発行
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ギフテッド

2022-10-16 19:42:48 | 小説
 中二の時に母親に煙草とライターで二の腕から肩・背中にかけてやけどを負わされ、その後17歳で家を出て18歳の時にやけどの跡を隠すように二の腕から背中にかけて大ぶりの百合2輪と蛇の入れ墨を入れ、それをテープで隠したりしながら水商売をしている「私」と、8年ぶりに病院から「私」の部屋に越してきたいと言ってやってきたが9日後には呼吸困難になって病院に戻った母との間の微妙な関係を描いた小説。
 母親に二の腕を焼かれたことに繰り返し言及しながら、それが右腕か左腕かに触れることを避け続けていることが気になりましたが、85ページ(全体の7割くらい)に至り、「右手で左腕を触り、外から裏側の方に指を回して微妙な凹凸を吹くの上から撫でる」という間接的な言い回しでそれが左腕であることが明らかにされます。気にして読んでいたものが、あっさり語られるのであれば、そこまで注意深く隠し続けた意図はどこにあったのかと訝しく思えます。「私」がこだわる、母親が「私」の腕を焼いた動機・心情も結局よくわかりませんし。まぁ、そこは、現実世界の親子でもそういうものかなという気はしますけど。
 「お酒を飲むと、酔っている間は酔う前のことは思い出せない。酔いが醒めると酔っていた間のことが思い出せない」(19ページ)というのが、いいフレーズだなと思いました。
 過去の母親の行為のために傷つき複雑な思いを持つ子が死にゆく母親を目の当たりにして後悔の念を持つという点で、先日読んだ「百花」と共通点を持っています。「百花」が比較的優等生で多数の読者の共感を得るであろうのに対して、この作品は劣等生の立場から見たもっとざらざらしたものを感じさせます。


鈴木涼美 文藝春秋 2022年7月15日発行
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百花

2022-10-15 22:51:56 | 小説
 自分よりできる同僚と社内結婚して2年のレコード会社勤務の37歳の葛西泉が、妻香織が妊娠し臨月まで働き続けるという状況で、それと並行して68歳の母百合子の認知症が進んで行くという様子を描いた小説。
 仕事と妻の妊娠に加えて、母の容態への懸念、徘徊等への対応、施設探し、症状悪化を見るダメージ等を通じて、認知症家族の疲れと、しかしもっとできたんじゃないか、もっと寄り添えばよかったという後悔と悲しみの心情を描いています。多くの読者にとって切なく、身につまされるテーマだろうと思います。ラスト6ページの泉の思いには心揺さぶられます。
 この作品では、母が中学生だった泉を捨てて愛人と出奔したという過去があり、それを百合子は負い目に感じ、泉もまた複雑な思いを持ち続けていることが、ストーリーに陰影を付けています。もっとも、それが現在の母子関係に与えている影響は必ずしも明らかではなく、その設定がなかったとしても同じような読後感を持つのではないかとも思えます。こういう設定にする以上やむを得ないのかとも思えますが、その過去の1年を百合子の日記で示し、それが54ページにわたって続くというのは、間延び感が強くありました。適当に切って泉の受けた衝撃とか、あるいは現在のできごとを挟んでまた日記に戻すなり、日記全体をもっと短く切り上げるなりした方がよかったのではないかと感じました。


川村元気 文春文庫 2021年7月10日発行(単行本は2019年5月)
「月刊文藝春秋」連載
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総務・人事の安心知識 ハラスメントとメンタルヘルス対策

2022-10-14 22:19:16 | 実用書・ビジネス書
 法令上求められており企業としては実施しておかないと行政指導等の対象となるハラスメント防止対策と、企業にとって従業員の生産性維持のためにも必要なメンタルヘルス対応や休職への対応などをシンプルに解説した本。
 わかりやすいといえばわかりやすいのですが、「マタハラ等では、上司と休業者との間で職場復帰後の労働条件(賃金が下がる、雇用形態が変わるなど)などについて確認し合うことが重要です」(59ページ)という記述には驚きます。出産・育児休業からの復職時に賃金切り下げや非正規雇用化が普通にあり得るかのような感覚、著者が専ら企業側の立場だからということなんでしょうけど、出産休業や育児休業の取得を理由として不利益処分をすることはまさに法令上禁止されているマタハラそのものです。労働者を丸め込めばそれでいいんだという感覚を、ハラスメント対策の本を書く著者が持っているというのはいかがなものか、こういう見解を公然と口にすること自体、今ではマタハラなんじゃないでしょうか。
 セクハラについて他社からの調査への協力を求めるセクハラ指針の規定について「右の条文を参照してください」とされている(78ページ)その右の条文として相談や相談への協力をした者に対する不利益処分を禁止する均等法第11条第2項が記載されている(79ページ:正しくは均等法第11条第3項とセクハラ指針5項を示すべき。セクハラ指針5項は158ページに掲載)など、雑なところが見られます。
 また、著者の経験で、労働者が上司のセクハラを訴えた労働審判で、自分がセクハラ研修をしていたからセクハラ防止対策をしていたという資料を提出したら「セクハラに該当せず」との判断になったという自慢話をしています(87~88ページ)が、研修をしていたから会社(使用者)が職場環境配慮に努めていたとして、会社の責任が否定されることはあり得ても、研修をしたことを理由に上司の行為がセクハラにならないという判断はあり得ないと思います。93ページで、「F事件」(フクダ電子長野販売事件:使用者側の人は企業に忖度して会社名を隠したがりますが、報道もされているので)の東京高裁平成29年10月18日判決を紹介しているんですが、それを「裁判を経て、従業員4名は自己都合退職扱いにより退職金を支給された」「約900万円の支払を会社および代表取締役に命じた」と書いています。この事件、代表取締役からパワハラを受けて退職に追い込まれた4名が、会社が退職金を自己都合退職基準で支給(1名は自己都合扱いだと支給基準に足りず不支給)したのに対して、パワハラの慰謝料や退職金の会社都合扱いとの差額等の支払を求め、裁判所がその請求を認めたものです。ですから、裁判を経て会社都合扱いの退職金が支給されることになったわけです。そして、裁判所が支払を命じた金額は、会社に対して元本ベースで660万9599円、判決日までの遅延損害金込みで806万6032円(遅延損害金は計算方法により若干の差はでますが)で、うちパワハラの慰謝料・弁護士費用分の元本ベースで275万円、判決日までの遅延損害金込みで330万6778円は代表取締役も会社と連帯して払うことを命じられました。どこをどう計算しても約900万円という数字は、判決からは出てこないんですが(判決報道でも、約660万円と書かれています)。判決を紹介するなら、ちゃんと読んで書いてほしいものです。


古見明子 同文舘出版 2022年8月5日発行
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図解と事例これ1冊! 労務管理の基本がぜんぶわかる本

2022-10-13 20:29:06 | 実用書・ビジネス書
 中小企業の労務/総務担当者が遭遇する労務管理についての問題について、ごくシンプルに基本的な説明をする本。
 弁護士の目からは、その説明は甘いなと思うところもあります。例えば、「副店長は、スタッフのシフト調整および新人スタッフの教育や配置を担っており、シフト調整をする上で、自分の出勤日や休日、その業務内容をある程度決めることができる裁量もありました」ということと3万円の役職手当で、経営への参画が少ないというのに、時間外・休日労働割増賃金の対象外となる「管理監督者性があると判断しました」としています(56~57ページ)。シフトの調整程度で人事労務に関する権限と責任が十分とは言えないでしょうし、そういう場合、むしろスタッフの都合で穴が開かないように副店長が自身の勤務を入れて穴埋めするようなことも多いと思われます。経営への参画が少なくて役職手当がわずか3万円では、裁判では管理監督者性が否定される可能性が高いと思います。会社の費用で資格を取得した労働者が早期退職したときにその費用の返還を求められるかという問題(131ページ)なんかは、使用者側の弁護士は、より労働者に厳しいえげつない手法を提案するでしょう。また、健康保険・厚生年金の加入要件が2016年10月から500人超の事業所では所定労働時間週20時間以上、1年以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円以上となっていたのが、2022年10月1日から100人超の事業所で所定労働時間週20時間以上、2か月以上の雇用が見込まれ、賃金月額8万8000円に拡大されましたが、2022年7月発行の本なのにそこが具体的に説明されていない(37ページ)というのは、どうかと思います。
 そういった弁護士が書く場合のような専門性・詳細さはありませんが、現実に遭遇しそうな問題にとりあえず対応するという点では、わかりやすい本だろうと思います。


三谷文夫 ワン・パブリッシング 2022年7月10日発行
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99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ 決定版

2022-10-12 21:56:35 | 実用書・ビジネス書
 元IBMにいてその後独立して会社経営をしながら、「日本の労働生産性はもっと上げられる。そのために自分のキャリアをすべて捧げよう」(8ページ)と考えているという著者が、仕事のコツについてのあれこれを書いた本。
 多数の項目が見開き2ページで書かれていて、その場その場で違うことを言っていると思えることもあり、これが決定的とか、これでいつもうまくいくということではなくて、結局は状況に合わせて臨機応変に対応するしかない、そのときのアイディアの引き出し集ということなんだと思います。「相手に合わせてカメレオンのように自分の性格を変える」(188ページ)なんてアドバイスもありますし。
 「あいつ使えない」は「私はあの人を使う能力がない」という敗北宣言だ(184~185ページ)というのは、味わい深いですね。解雇事件で、労働者側の弁護士としては、そうだ、そうだと思います。上司側でその境地に至るのはなかなか難しいとは思いますが。
 言いにくいことを「宛先多数につきBCCにて失礼します」と書きながら、実はその人だけに「BCC」で送付する(93ページ)って…そういうやり方があるのか、とは思いますが、そういう技巧的なというか騙しみたいなことをして、バレたら大変な気がしますけど。


河野英太郎 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2022年7月20日発行
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Webサイト管理のきほん 業務と技術の知識が身につく

2022-10-11 22:07:59 | 実用書・ビジネス書
 サーバ管理者向けに、ドメイン、サーバの基本とレンタルサーバの使い方、SSL、セキュリティ、トラブルシューティングの考え方などを解説した本。
 たぶん、かなりかみ砕いて書いているものと思え、技術的な用語、特にカタカナと英語の略語が登場してよくわからないのを、そこは気にしないで読み進めれば、一応最後まで投げ捨てずに読めるレベルには説明してくれています。しかし、実際に設定とかをしないで知識として読んでいても、きちんとは理解できていなくてたぶん自分でやってみようと思ったときにはできないだろうなという気がします。サイトの WordPress 化とか SSL 化とか、昔何となくいつかはしないとと思ったことがありますが、説明を読んでみると、素人がやるにはかなりリスクが大きいと改めて感じました。
 乗っ取りを防ぐために複雑なパスワードを使えと強調されていて、そのリスクを説明されると怖じ気づくのですが、複雑なパスワードを、しかも使い回さずに逐一別のものにするなんてことをしたら確実に忘れて困り果てます。今どきパスワードを管理するソフトを使えば大丈夫と言われても、著者も別の場面では言っているように、「何もしていないのに壊れることがある」(208ページ)のが、パソコンやソフト、ネットの常…ですからねぇ。


谷口元紀 技術評論社 2022年8月3日発行
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流浪の月

2022-10-10 21:09:10 | 小説
 公園で小学生女子を見つめる日々を送る19歳大学生佐伯文が、その文の存在を意識しつつ家に帰りたくないために夕方まで公園で過ごす9歳の家内更紗が雨の中でもベンチに座り続けるのを見て傘を差し掛け、「帰りたくないの」という更紗に「うちにくる?」と問い、更紗が「いく」と答えて付いてきて、そのまま2か月帰らなかったために、逮捕され報道されという事件から15年後に更紗と再会し、そこに至る2人の過ごした時間で変わったこと変わらなかったこと、そして2人のその後を描く小説。
 当然により大人の側が状況を考えて行動すべきではあるのですが、9歳のときも、24歳のときも、更紗側が後先考えずに文を巻き込み、文が世間から非難されるような事態を巻き起こして行くのに、文側はそれを仕方がないと受け入れていく、そのことに更紗には自覚がないというところ、何だかなぁと思います。24歳でも、まだ24歳、そして文は34歳ですから、更紗は自分が考えるべきとは感じられないのかもしれませんけど。もっとも、更紗の事情と内心を語り続けた後に、終盤に語られる文の事情の描写で、文の側も災難だったということでもなく自ら栗を拾いに行っているところもあって、人それぞれだねというところに収まる感じですが。
 「彼が本当に悪だったのかどうかは、彼と彼女にしかわからない」(299ページ)という言葉と、報道でレッテル張りをしたがるメディアとネット民たちへの疑問が際立ち、そこに共感するのですが、他方で少女に対する性的虐待への批判を躊躇させる効果を持つ面があるであろうことへの反感を持つ人たちもいそうです。「犯罪者」と決めつけ評価した相手に対する非難・罵り一色になりがちなこの国の現状を考えると、この作品が描くか細い心情の方を支持したいと思いますが。


凪良ゆう 東京創元社 2019年8月30日発行
第17回(2020年度)本屋大賞受賞作
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