人間そっくりのアンドロイド「ジェミノイド」(双子座のGeminiからの造語だそうな)の開発製作に取り組む著者が、ロボットを限りなく人間に似せる過程で、人間とは何か、何が人間の/自分のアイデンティティなのか、自分そっくりのアンドロイドがいることによる本人(モデル)への影響などについて論じた本。
著者の論の前提として著者の研究対象と成果のジェミノイドを紹介する部分で、現在既にここまで人間そっくりのアンドロイドができているのだということに驚きます。埋め込めるアクチュエーターの数に限りがあるのに、呼吸をしているように見せるために規則的に肩を動かすこと専用のアクチュエーターを付ける(30ページ)など、そこまでするかというこだわりぶりです。
3次元スキャナーでモデルの表情をスキャンするために、モデルに2、3分写真と同じ表情をしてもらう必要があるが、その際現在の表情を鏡でチェックすると左右逆になるので写真の表情との対比がうまく行かず、パソコンで左右逆転した映像を作ったという話から、左右が逆転して他人が自分を観察するように正しく自分が見える鏡は自然界には存在しない→すべての自己を持つ生き物は自分を正確に認識しないままに暮らしているのだ→「我々人間は他人を通してしか、本当の自分を認識することができない。ゆえに、社会的である必要がある。人間やそして多くの動物が社会を形成するのは、この自己を正確に認識しようとするがゆえなのかもしれない」(75~79ページ)という展開の強引さというか、発想の自由さに、新たな領域を切り拓いていく研究者というのはこういうものかと感心しました。
自分自身とそっくりなジェミノイドを製作した著者は、5年がたちジェミノイドは変化しないのに自分の体型が変わり老化したことを嘆いて、腹筋運動にいそしみジェミノイドより体を引き締めて勝ったような気分になり(194~198ページ)、さらには皺取りの美容整形までしてしまう(201~204ページ)。ジェミノイドの存在が人間に与える影響として論じられていますが、かなり著者の個性の部分があるような。
著者と組んでアンドロイド演劇に取り組んでいる劇作家が「解説」で、著者のことを「傲慢で自己顕示欲が強く、尊大で、自信過剰で、大胆で、不器用で、冷静で、挑戦的で、真摯で、繊細で、臆病で、情熱的で、強欲だ」と書いています(290ページ)。こういう解説も珍しい。

石黒浩 新潮文庫 2014年11月1日発行(単行本は2011年4月)
著者の論の前提として著者の研究対象と成果のジェミノイドを紹介する部分で、現在既にここまで人間そっくりのアンドロイドができているのだということに驚きます。埋め込めるアクチュエーターの数に限りがあるのに、呼吸をしているように見せるために規則的に肩を動かすこと専用のアクチュエーターを付ける(30ページ)など、そこまでするかというこだわりぶりです。
3次元スキャナーでモデルの表情をスキャンするために、モデルに2、3分写真と同じ表情をしてもらう必要があるが、その際現在の表情を鏡でチェックすると左右逆になるので写真の表情との対比がうまく行かず、パソコンで左右逆転した映像を作ったという話から、左右が逆転して他人が自分を観察するように正しく自分が見える鏡は自然界には存在しない→すべての自己を持つ生き物は自分を正確に認識しないままに暮らしているのだ→「我々人間は他人を通してしか、本当の自分を認識することができない。ゆえに、社会的である必要がある。人間やそして多くの動物が社会を形成するのは、この自己を正確に認識しようとするがゆえなのかもしれない」(75~79ページ)という展開の強引さというか、発想の自由さに、新たな領域を切り拓いていく研究者というのはこういうものかと感心しました。
自分自身とそっくりなジェミノイドを製作した著者は、5年がたちジェミノイドは変化しないのに自分の体型が変わり老化したことを嘆いて、腹筋運動にいそしみジェミノイドより体を引き締めて勝ったような気分になり(194~198ページ)、さらには皺取りの美容整形までしてしまう(201~204ページ)。ジェミノイドの存在が人間に与える影響として論じられていますが、かなり著者の個性の部分があるような。
著者と組んでアンドロイド演劇に取り組んでいる劇作家が「解説」で、著者のことを「傲慢で自己顕示欲が強く、尊大で、自信過剰で、大胆で、不器用で、冷静で、挑戦的で、真摯で、繊細で、臆病で、情熱的で、強欲だ」と書いています(290ページ)。こういう解説も珍しい。

石黒浩 新潮文庫 2014年11月1日発行(単行本は2011年4月)