2008年暮れの派遣切り・年越し派遣村を経て当時の自公政権がとりまとめた労働者派遣法改正案に対して、労働者側の立場から批判的に検討した本。
労働者派遣という形態自体が、派遣会社と派遣先で決められる労働者派遣契約には労働法による規制が直接及ばず、その結果、派遣労働というサービスがもののように競争入札にかけられて買い叩かれ、それに連動して労働条件が切り崩される仕組みになっていること(45~49ページ)などがシンプルに論じられています。このところ、弁護士会で負わされたミッションのために立て続けに派遣法に関する使用者サイドの本を読み続けて使用者側の言いたい放題を聞かされてフラストレーションがたまっていた私には、すっきりと読めました。派遣法違反の違法派遣も、それを労働者が内部告発しても派遣労働者が職を失うことになるために内部告発もできないことを捉え、「盗品から利益を受けるものを処罰しなければ窃盗や強盗はなくせない」として違法派遣があったら派遣先にみなし雇用責任を認めるべき(53~56ページ、71~72ページ)という議論は、挑発的な表現ではありますが、わかりやすい。
派遣法改正は、その後民主党政権になってより大幅な改正案が出されながらねじれ国会と労使対立に翻弄されて棚晒しとなり、改正の看板がいくつも落ちた小幅改正で2012年に成立しましたが、今、改めてこの自民党政権時代の政府案批判を読んでみると、今回成立した改正はほとんどが自民党政権時代の案に戻ったものだったのねとわかり、3年半前に書かれたこの本の批判の多くがまだ当てはまると感じられます。う~ん、あれだけ問題になった派遣切りや派遣村から3年かかって何してたんだろう。

西谷敏、中野麻美 旬報社 2009年5月15日発行
労働者派遣という形態自体が、派遣会社と派遣先で決められる労働者派遣契約には労働法による規制が直接及ばず、その結果、派遣労働というサービスがもののように競争入札にかけられて買い叩かれ、それに連動して労働条件が切り崩される仕組みになっていること(45~49ページ)などがシンプルに論じられています。このところ、弁護士会で負わされたミッションのために立て続けに派遣法に関する使用者サイドの本を読み続けて使用者側の言いたい放題を聞かされてフラストレーションがたまっていた私には、すっきりと読めました。派遣法違反の違法派遣も、それを労働者が内部告発しても派遣労働者が職を失うことになるために内部告発もできないことを捉え、「盗品から利益を受けるものを処罰しなければ窃盗や強盗はなくせない」として違法派遣があったら派遣先にみなし雇用責任を認めるべき(53~56ページ、71~72ページ)という議論は、挑発的な表現ではありますが、わかりやすい。
派遣法改正は、その後民主党政権になってより大幅な改正案が出されながらねじれ国会と労使対立に翻弄されて棚晒しとなり、改正の看板がいくつも落ちた小幅改正で2012年に成立しましたが、今、改めてこの自民党政権時代の政府案批判を読んでみると、今回成立した改正はほとんどが自民党政権時代の案に戻ったものだったのねとわかり、3年半前に書かれたこの本の批判の多くがまだ当てはまると感じられます。う~ん、あれだけ問題になった派遣切りや派遣村から3年かかって何してたんだろう。

西谷敏、中野麻美 旬報社 2009年5月15日発行