労働者派遣法の2012年改正について、改正部分に絞って使用者側の立場から改正内容と評価と対策を説明した本。
改正により変わった点とそこから予想されることや使用者側の対応について詳しく書かれており、改正前の派遣法がわかっている人には必要十分な内容になっていると思います。
労働者側の弁護士にとっては、使用者側がこういうことを考えてるんだという点でも参考になりますが、実務的にそつなくまとめるというよりは戦闘的な姿勢で書かれていて、刺激的な部分もあります。
グループ企業内派遣に対して新たに課せられた規制を回避するために在籍出向を利用すべきと勧めつつ、在籍出向は形態として労働者供給に該当するという厚労省の見解を否定し批判する下り(51~56ページ)は、業として行う在籍出向と単純なグループ間人事交流としての在籍出向をきちんと区別して論じているか疑問を感じました。派遣会社が「業として」グループ会社への在籍出向を行うのは、やはり労働者供給事業に当たる(従って違法)と解する方が自然だと思うのですが。
また、2015年10月1日から実施される違法派遣を受けている派遣先の労働契約申込みなし制度(派遣先への直接雇用)が適用された場合の労働条件について派遣先の就業規則より不利な部分が就業規則で修正されるかという論点について、改正派遣法が「当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件」と定めたことが優先して就業規則による修正を受けないと論じている下り(132~134ページ)もかなり強引。労働契約法12条の就業規則の最低基準効は適用除外されていませんし、改正派遣法が派遣先労働者との均衡待遇確保配慮義務(義務を負うのは派遣元ですけどね)を定めていることを見ても派遣先と直接雇用が成立するときに派遣先の就業規則の適用を排除しようという発想が出てくるのが不思議。著者もそこは「強引な解釈」でこれによることはリスクが高いと認めていますが(134ページ)。
著者はその上で、申込みなし制度で直接雇用されることになる労働者に正社員の規定(例えば退職金規程)が適用されないように、申込みなし制度で採用された労働者に対する適用除外を定めておくことを勧めています(136ページ)が、そういう規定を作ることは、みなし制度が適用されるような違法派遣を受けていると派遣先企業が認識していることを自白しているような気がするんですが(労働契約申込みなし制度は、派遣先企業が違法派遣を受けていることを知らず、かつ知らなかったことに過失がないときは適用されないのですが、その主張は諦めてくれるんですね?)。
なお、22ページ9行目小見出しの「派遣責任」は「派遣契約」、37ページ17行目の「例外的に」はその前に「専ら派遣に関して」などと補う必要があり、64ページ下から3行目の「休日手当」は「休業手当」など、誤植の類がちょっと目につきました。

岩出誠 第一法規 2012年10月30日発行
改正により変わった点とそこから予想されることや使用者側の対応について詳しく書かれており、改正前の派遣法がわかっている人には必要十分な内容になっていると思います。
労働者側の弁護士にとっては、使用者側がこういうことを考えてるんだという点でも参考になりますが、実務的にそつなくまとめるというよりは戦闘的な姿勢で書かれていて、刺激的な部分もあります。
グループ企業内派遣に対して新たに課せられた規制を回避するために在籍出向を利用すべきと勧めつつ、在籍出向は形態として労働者供給に該当するという厚労省の見解を否定し批判する下り(51~56ページ)は、業として行う在籍出向と単純なグループ間人事交流としての在籍出向をきちんと区別して論じているか疑問を感じました。派遣会社が「業として」グループ会社への在籍出向を行うのは、やはり労働者供給事業に当たる(従って違法)と解する方が自然だと思うのですが。
また、2015年10月1日から実施される違法派遣を受けている派遣先の労働契約申込みなし制度(派遣先への直接雇用)が適用された場合の労働条件について派遣先の就業規則より不利な部分が就業規則で修正されるかという論点について、改正派遣法が「当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件」と定めたことが優先して就業規則による修正を受けないと論じている下り(132~134ページ)もかなり強引。労働契約法12条の就業規則の最低基準効は適用除外されていませんし、改正派遣法が派遣先労働者との均衡待遇確保配慮義務(義務を負うのは派遣元ですけどね)を定めていることを見ても派遣先と直接雇用が成立するときに派遣先の就業規則の適用を排除しようという発想が出てくるのが不思議。著者もそこは「強引な解釈」でこれによることはリスクが高いと認めていますが(134ページ)。
著者はその上で、申込みなし制度で直接雇用されることになる労働者に正社員の規定(例えば退職金規程)が適用されないように、申込みなし制度で採用された労働者に対する適用除外を定めておくことを勧めています(136ページ)が、そういう規定を作ることは、みなし制度が適用されるような違法派遣を受けていると派遣先企業が認識していることを自白しているような気がするんですが(労働契約申込みなし制度は、派遣先企業が違法派遣を受けていることを知らず、かつ知らなかったことに過失がないときは適用されないのですが、その主張は諦めてくれるんですね?)。
なお、22ページ9行目小見出しの「派遣責任」は「派遣契約」、37ページ17行目の「例外的に」はその前に「専ら派遣に関して」などと補う必要があり、64ページ下から3行目の「休日手当」は「休業手当」など、誤植の類がちょっと目につきました。

岩出誠 第一法規 2012年10月30日発行