イヴ・サンローランの事業上のパートナーであるとともに私生活上のパートナーであったピエール・ベルジェによるイヴ・サンローランの回想をつづった本。
イヴ・サンローランの死後に、イヴ・サンローランにあてて書いた手紙の形式なので、記述は断片的で、時系列に沿っておらず、イヴ・サンローランの半生記のようなものと期待して読むと不満がたまります。ゲイのパートナーだったピエール・ベルジェが死んだ恋人を感傷的に回顧する姿に素直に共感できる人には、愛と感動のエッセイと読めるでしょうし、そういう読み方でないと満足しにくい本かなと思います。
私には、イヴ・サンローランの死後半年を経て断片的に書き始めている(冒頭に葬儀の際の弔辞と思われるものを配していますが、その次はもう半年後)ことには、ピエール・ベルジェがイヴ・サンローランの死後に、イヴ・サンローランが生きていれば反対するであろう733点に及ぶ高価な美術品のオークションでの売却を控えて、それを正当化する目的が感じられます。その他の内容としても、イヴ・サンローランへの愛を語りながら、そこかしこでイヴ・サンローランの人格的な欠陥や、アルコールと薬物にまみれた日々、そして若い愛人との浮気を指摘し、自分は清く正しく耐え続けイヴ・サンローランを支え続けたという書きぶりには、故人への愛よりも自己の正当化の方が主眼なんじゃないかと鼻についてしまいます。

原題:Lettres a Yves
ピエール・ベルジェ 訳:川島ルミ子
中央公論新社 2011年3月30日発行 (原書は2010年)
イヴ・サンローランの死後に、イヴ・サンローランにあてて書いた手紙の形式なので、記述は断片的で、時系列に沿っておらず、イヴ・サンローランの半生記のようなものと期待して読むと不満がたまります。ゲイのパートナーだったピエール・ベルジェが死んだ恋人を感傷的に回顧する姿に素直に共感できる人には、愛と感動のエッセイと読めるでしょうし、そういう読み方でないと満足しにくい本かなと思います。
私には、イヴ・サンローランの死後半年を経て断片的に書き始めている(冒頭に葬儀の際の弔辞と思われるものを配していますが、その次はもう半年後)ことには、ピエール・ベルジェがイヴ・サンローランの死後に、イヴ・サンローランが生きていれば反対するであろう733点に及ぶ高価な美術品のオークションでの売却を控えて、それを正当化する目的が感じられます。その他の内容としても、イヴ・サンローランへの愛を語りながら、そこかしこでイヴ・サンローランの人格的な欠陥や、アルコールと薬物にまみれた日々、そして若い愛人との浮気を指摘し、自分は清く正しく耐え続けイヴ・サンローランを支え続けたという書きぶりには、故人への愛よりも自己の正当化の方が主眼なんじゃないかと鼻についてしまいます。

原題:Lettres a Yves
ピエール・ベルジェ 訳:川島ルミ子
中央公論新社 2011年3月30日発行 (原書は2010年)