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伊東良徳の超乱読読書日記

はてなブログに引っ越しました→https://shomin-law.hatenablog.com/

竜の木の約束

2011-05-08 22:00:17 | 小説
 離婚した母と2人暮らしで母の仕事の都合で転校してきた中2の少女守口桂は、クラスメイトとも距離を置いていたが、河原沿いに立つ天翔る竜を連想させる椎の木の下にたたずむ不思議な少年マコトに惹かれ、その後クラスメイトの引っ込み思案の優等生江坂真琴から誘われるようになり、真琴の秘密を打ち明けられ・・・というストーリーの青春小説。
 両親の離婚と母親の放任を疎ましく感じていた桂の母親の考えへの理解と、父親の母親への暴力を目の当たりにして母親の弱さ・不幸を感じ「女は損だ」と思うとともにその母親から自分の将来の夢を否定されて悲嘆し揺れ惑う真琴の自主性の回復という2つのテーマでの少女の成長を描いています。
 女子同士の友情と淡い恋心を、「あの時のときめきとせつなさと、そして真琴と二人だけでわかちあった思い。私は、一生、忘れないと思う。」(191ページ)と心の中で表現する桂の心情がしみじみといいなぁと思いました。


濱野京子 あかね書房 2010年10月25日発行
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財界の正体

2011-05-08 09:34:53 | ノンフィクション
 財界の活動について、財界団体としての日本経団連、経済同友会、日本商工会議所等の歴史と人事などの組織、政治献金、諮問機関等を通じての政策決定への関与、民間外交等に分けて解説した本。
 小泉政権下で諮問機関から実質的な政策決定機関に昇格し注目を集めた経済財政諮問会議には10人の委員のうち2人が財界から選出され、学者委員2人と竹中経済財政担当相に小泉首相を加えると過半数を握り、事前にマスコミに公表される「民間議員ペーパー」に他の委員である閣僚が反論すれば抵抗勢力と報道されるという手法で政策決定をリードしていたが、そこでの財界の主要な要求は法人税減税と社会保険料の企業負担分の減額、その財源としての消費税増税であった(107~122ページ)。つまり企業の負担を大衆の犠牲によって減らせというものだった。
 また規制緩和では、労働者派遣の緩和によって日雇い派遣や製造業派遣が認められ、現在の非正規雇用の拡大・格差社会を招いたが、その決定に当たって重要な役割を果たした総合規制改革会議のメンバーには、人材派遣業者の社長が2人も入っており、座長の宮内義彦が経営するオリックスもその2つの業者の第2位の株主と取引先だった(145~150ページ)。
 マスコミは政治主導・民間活力・規制緩和を肯定的に評価し続けているけれども、大衆の犠牲の下に大企業の利益を図る政策をそれによって利益を受ける者の主導で決定するという悪辣なことがなされるのなら官僚支配よりもさらにたちが悪いといえるでしょう。
 そういった財界の活動の、民主党政権下で変わるところと変わらないところ、民主党と財界の関係の微妙さの今後に注目したいところです。


川北隆雄 講談社現代新書 2011年1月20日発行
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