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伊東良徳の超乱読読書日記

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カルテット!

2010-06-04 19:31:09 | 小説
 音楽一家の4人が家族でのカルテット演奏を通じて崩壊しかけていた関係を修復していく小説。
 ピアニストを目指したがあきらめて営業職に付いたもののリストラされて失業中の父直樹、妊娠して音楽教師をあきらめ今は息子をプロのヴァイオリニストにすることに賭ける母ひろみ、かつてフルートを習っていたが弟ばかりほめられることで拗ねてやめてしまった派手好きの高2の姉美咲、そして天才的な才能を見せつつも自らは発展途上に悩む中2の開。父母の諍いや勝手な行動を繰り返しふてくされる姉の態度に悩む開が、10年前に祖母の誕生日に開いた家族コンサートの写真を見つけたことをきっかけに、祖母の誕生日にまた家族コンサートをやりたいと言い出して、渋る母と姉を説得して実行するが、祖母が町内の人々を招待して大事になり、あがり症の父のピアノはうわずり練習不足の姉のフルートはぼろぼろで大失敗し、さらに険悪になってしまう。しかし、コンサートを聴きに来た老舗の音楽レストランのオーナーが開の才能を見いだして演奏を依頼し、開は家族でやらせてほしいと頼みリベンジを期するが・・・という展開のお話。
 開が天才的な才能を持ち次々と才能を見いだされていくという設定が前提ですが、いがみ合っていた家族が、ばらばらにそれぞれの失敗を繰り返しながら、それぞれに思いを一つにしていき、忘れていた何かを見いだしていくという過程が感動的です。
 でも、開のヴァイオリンの先生の千尋さんって、何者でしょう。ちょっとできすぎのような、しかし不思議な魅力が、作品を引き立てているとは思いますが。


鬼塚忠 河出書房新社 2010年1月30日発行
コメント
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