伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

ピーチズ★卒業

2010-06-03 21:51:55 | 小説
 ピーチズ★初恋(原題はPeaches)の続編。
 親友になったマーフィー、リーダ、バーディーは、1年後、マーフィーはニューヨークに行くこと(故郷のブリッジウォーターを去ること)を夢見続けてブリッジウォーターを離れたがらないレックスとぎくしゃくし、リーダは代々受け継がれてきたペカンクィーンとなり、バーディーは果樹園を継ぐ決心をしつつメキシコに行くエンリコへの思いが膨らんで板挟みと、違う将来に向けて歩み出し、次第にすれ違い友情が冷めていきます。
 ちょっとしたことから気持ちが離れ、意地を張り続けて壊れてゆく関係。1巻の終わりで見せた成長が、結局元に戻っているような面もあり、人間はまっすぐには成長できない、でも全然成長できないわけでもなくて、行きつ戻りつしながら少し成長してゆく、らせん状に進んでいくというイメージですね。物語としては、1巻で構築したキャラと人間関係を危機に陥らせて収束させて消費している感じで、人生そう簡単じゃないという印象と切なさを味あわせてはくれますが、展開としてはなんかぐるぐる回ってる感じがします。ラストの収束も、ちょっととってつけたような感じがしますし。
 エピローグでその後のことを語っているのでこれでおしまいかと思いましたが、原書では2008年に3巻(原題Love and Peaches)が出ています。1巻の邦題にピーチズ★初恋を使ってしまった小学館は3巻にどういうタイトルをつけるんでしょう。
 本文中に度々ゴシック体のコラム形式でほのめかしやジョークが入るんですが、メキシコシティについて「スペインの統治者、コルテスとその部下たちがワシがヘビを食べている場面に遭遇し、それがそこにメキシコの首都をつくれという神からのお告げだと思った。なぜ、そう思ったのかは、記録に残されていない」(229ページ)って、ちょっとひどい。これはアステカの神話・伝説でサボテンの上に止まったワシを見て神のお告げで首都を建築したのが水上都市テノティチトランで、アステカを征服したコルテスがテノティチトランを破壊した跡地に建設したのがメキシコシティ。神のお告げを受けたのは征服者コルテスじゃない。それくらいちょっと調べればわかるはずなんですが。


原題:The Secrets of Peaches
ジョディ・リン・アンダーソン 訳:相山夏奏
小学館 2010年3月22日発行 (原書は2007年)
ピーチズ★初恋は2010年6月1日の記事で紹介
コメント
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