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伊東良徳の超乱読読書日記

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教養としての官能小説案内

2010-04-17 20:11:33 | 趣味の本・暇つぶし本
 官能小説(ポルノ小説)の戦後の歴史と分野別分類を論じつつ濡れ場シーンを紹介する本。
 警察の摘発とそれをかいくぐる表現を工夫する作者・出版社の対応、様々な作家の登場や新たな分野の開拓、ノベルズサイズや文庫化で読者層を拡げてきた経緯などが、戦後の歴史として語られていて、この部分がこの本の大部分を占めています。後半での分野別分類は、むしろ濡れ場シーンの紹介のためのような感じで読者サービスの色彩が強い感じ。全体としては歴史に重点が置かれて、その中での作者の紹介という要素が大きいので、かつて週刊誌や夕刊紙で見た作家へのノスタルジーを感じられる層向けの本かなという気がします。
 紹介した作品の濡れ場シーンの抜き書きも多々ありますが、「官能小説を読むときに、セックスシーンだけを拾い読みする読者もいるだろうが、それで淫心をかきたてられるのは、せいぜい十代の勃起少年ぐらいのものであろう」(208ページ)と著者も言っているくらいですから、それを狙って読むようなことは・・・


永田守弘 ちくま新書 2010年3月10日発行
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なぜ人は10分間に3回嘘をつくのか

2010-04-17 12:59:51 | 人文・社会科学系
 日常生活の様々な場面で遭遇する嘘について心理学者の観点から論じた本。
 邦題の「10分間に3回嘘をつく」は初対面の自己紹介の場面での心理学者の実験結果の紹介から取っています。
 こういった日常生活の場面でのありふれた嘘から詐欺などの営利目的の作為的な嘘、マスメディアの虚構など、様々な場面での嘘を順次論じていきます。著者は一方で嘘というときには詐欺のようなケースを想定しがちだが現実に人が遭遇する嘘の圧倒的多数は日常生活での嘘だと指摘した上で、日常生活での嘘を礼儀やマナー関係や会話を円滑にするもので全く嘘のない生活をあなたは送りたいだろうかと問いかけ、他方において作為的な嘘もなりたかった自分を演出し自尊心を守ることに動機があったかもしれないことも指摘しています。これらの指摘は、一般人の嘘についての既成概念を相対化するものですが、著者のいう作為的な嘘が日常生活での罪のない嘘の延長線上にあるのか、はっきりと異なるものなのかについて著者の立場は揺れているように感じられます。
 様々な嘘について論じている分、邦題の「なぜ・・・うそをつくのか」の結論ははっきりしなくなっています。
 むしろこの本では、人がなぜ騙されるのかという点と嘘を見抜くことは極めて難しいということの方が結論ははっきり書かれています。人が日常生活で一つ一つの判断にエネルギーを割いていたら生活できないということから、人は無意識のうちに基本的に聞いたことを真実とみなしているという「真実バイアス」、そして自尊心や良好な関係の維持のため相手のいうことを信じたがっていること、そして上手い嘘つきはそういった相手の心理や状況を読むことに長けているといったことから人は容易に騙される。そしてポリグラフ(嘘発見器)や一般人が嘘の徴候とするしぐさ(目をそらすとかそわそわするとか)は、真実を語っているのに嘘と思われないかという不安や猜疑心を持たれる状況での緊張などからも生じるし、逆に嘘をつくのに不安や緊張を生じない人もいて、現実には嘘を見抜くのに役立たない、心理学者の実験では一般人が嘘を見破れる確率は47%程度(つまりコイン・トスと変わらない)で、ポリグラフ検査官や警察官や裁判官の嘘発見能力は一般人と変わらない(40~41ページ)とか。このあたりこそ、肝に銘じておくべきなんでしょうね。


原題:THE LIAR IN YOUR LIFE : The Way to Truthful Relationships
ロバート・フェルドマン 訳:古草秀子
講談社 2010年2月25日発行 (原書は2009年)
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