今週のエコノミスト(1月12日号)で、周産医療の立て直しを考えるうで、最も考えるべきと感じている根本問題の、女性の働き方について、原稿を書いております。毎日新聞のWebにも紹介されています。
http://mainichi.jp/life/money/kabu/eco/pickup/news/20091226org00m020007000c.html
周産期医療の立て直しには女性の労働環境改善が必要だ
◇いま周産期医療が崩壊しつつある。だが、医療だけを見ていては問題は解決しない
◇小林美希(こばやし・みき=労働経済ジャーナリスト)
脳内出血を起こした東京都内の妊婦の救急搬送が8病院で断られ、最終的に受け入れた都立墨東病院で出産後に死亡した、いわゆる「墨東病院事件」(2008年10月)から1年余り。この事件は、周産期医療(妊娠22週から生後7日未満の母子を対象とした医療)の崩壊を象徴するものだった。
事件を受けて都は周産期医療体制の再構築を表明。09年3月には「母体救命対応総合周産期母子医療センター」(スーパー総合周産期センター)制度を開始した。緊急に母体救命措置を必要とする妊産婦について、昭和大学病院など3病院が、救命救急センターと連携して必ず受け入れるシステムだ。また、厚生労働省は同年11月、「周産期母子医療センターの整備指針」を13年ぶりに全面改定。妊産婦の救急受け入れ医療機関を増やすため、センターの設置要件を緩和した。
だが、周産期医療問題の背景には、こうした措置だけでは解決できない、根深い問題がある。
◇増加するハイリスク妊婦
少子化のなかで、日本における出生数は、1993年の118万8282人から08年の109万1156人へ約8%減少した。だが、分娩施設数は、同じ期間に4286施設から2567施設へと40%も減少(厚生労働省「医療施設調査」)、各施設の負荷が急増している。
一方で、最近は、出産をめぐって問題の起きやすいハイリスク妊婦が増加している。
ハイリスク妊婦とは、(1)妊娠22週から32週未満の早産、(2)妊娠高血圧症候群、(3)妊娠30週未満の切迫早産(早産の危険性が高い状態)、(4)胎盤が子宮口を覆い帝王切開が必要となる前置胎盤、(5)40歳以上の初産婦、(6)肥満指数BMIが35以上の初産婦、(7)多胎妊娠--など。また、日本産婦人科学会は、35歳以上の初産婦を「高年初産婦」と定義している。35歳以上の初産では、妊娠高血圧症候群、胎児が出てくる前に胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離、前置胎盤などを起こす確率が高くなる。ダウン症児が生まれる確率も加齢に比例し、30歳までの1000分の1が40歳では100分の1、45歳では30分の1に高まる。
こうしたハイリスク妊婦の増加は、主として初産の高齢化による。人口動態調査によれば、初産の平均年齢は80年の26・4歳から08年には29.5歳に上昇。08年の産婦のうち約58%が30歳以上、約20%が35歳以上となっている。08年の合計特殊出生率(1人の女性が一生に生む子供の数)は1.37と前年を0.03ポイント上回ったが、出産適齢期である20代~30代前半の出産は減り、30代後半以降の出産が増えた。高齢初産婦の場合、不妊治療による多胎妊娠のケースが増え、その面でもハイリスクとなる。
(以下、省略、雑誌で合計3ページ。上記の毎日新聞のWebで全文読めます)