血統徒然草

サラブレッドの能力を血統面から考察する我儘・自分勝手なブログ

Workforce(ワークフォース)

2011-01-09 18:24:19 | 海外馬
Workforce(King's Best×Soviet Moon-Sadler's Wells)牡・07生

主:5 結:6 土:2 弱:5 影:2 質[近]:3 質[遠]:4 SP:3 ST:5
合計:35点 クラス:3B 芝:9~15F ダ:8~11F
日本適性:△ 成長力:○ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

○ 主導   (5)

 主導は、Northern Dancer3×5の中間断絶クロス。比較的強力な主導に見えるが、単一クロスではあるものの、Special5×4や、Native Dancer5・7×5等の影響も強く、決して明確な主導であるとは言い難い。また、エルコンドルパサーやヴェイロンと異なり、Nureyev≒Sadler's Wellsを主導と捉えないのは、その父であるNorthern Dancerがそれぞれの父以外として存在しない為である。近親度の強さは弱まるだろうが、個人的には4代目程度の位置に両者以外の父として、Northern Dancerが存在しないのが惜しまれる(公式評価的には存在しない方が正解に近いだろうが)。ただし、BMSであるSadler's Wellsを圧倒的に強調し、血の流れもSadler's Wellsへと見られるのは、幸いだろうか(その意味ではエルコンドルパサー・ヴェイロン等と類似点は見られる)。

○ 結合   (6)

 主導たるNorthern Dancerと、6代目までに存在するクロスである、Native Dancer・Nearco・Hyperion・Mahmoud・Sister Sarah・PharosはNorthern Dancerに含まれる血統である為に確実に結合を果たしている。また、AlchimistはBay Ronaldで、Princequillo~Prince RoseはBayardoで、NasrullahはNearcoで、RibotはPharosで、SpecialはNasrullah~Nearco、Hyperion~Gainsboroughで、それぞれ直接結合を果たしている。惜しむらくは、Count Fleetが9代目以内に結合を果たせていない点で、系列クロスを、5代目から持つ近交馬であるにもかかわらず、かなり不満が残ると言わざるを得ない。しかしながら、逆に7代目以降のクロスに関してはかなりの連動性があり(Northern Dancerが3代目からクロスしているのも、幸いしている)、その意味では比較的、良好な形態を保っていると考えられる。

○ 土台   (2)

 土台構造を形成するのは、Pharosが12ヶで単体の土台構造としてはかなり貧弱であると言わざるを得ない。また、サポートするのもSwynford(=Harry of Hereford)が12ヶと、かなりさびしい内容となっている。決して良好であるとは言い難い。

○ 弱点   (5)

 血統表全体で大きな不備は見当たらない。若干気になるのが、父方母方双方において6代目にクロスしているNative Dancerであるが、9代目においてPhalaris・Fair Play等がクロスしている為に、さほど大きなマイナスであるとは言えない。それ以外の各ブロックにおいては、殆どにおいて主導勢力である血統が配されている。近交馬ではあるものの非常に良好であると言えるだろう。

○ 影響   (2)

 (8-3-15-2)と決して良好なバランスであるとは言い難い。しかしながら、強調されたSadler's Wellsへの血の流れが比較的良好である点と、生かし方が良好なのは幸いだろうか。

○ 質[近]  (2)

 全体的に質の高い血を連ねた配合で、父母3代目までに並ぶ血統も比較的優秀な血を集めている。底力勝負可能な血統構成。

○ 質[遠]  (4)

 主導たる、Northern Dancerを初め、影響の強いクロスである、Native Dancer・Nearco・Hyperion・Princequillo~Prince Rose・Ribot・Specialなども質が高い配合で、前述した質[近]と併せ欧州系の血統が上手く生かされている為に、かなり良好な部類に入るだろう。

○ スピード (3)

 これといった際立ったスピード要素が少ない血統構成ではあるが、NasrullahとMahmoudを連動させ、主導たるNorthern Dancerへと確実に補給しているのは見て取ることができる。また、Specialの単一クロスもスピード寄りだと判断できる。したがって、軽いスピードと言うよりは、中距離向きのスピードに良さがあるタイプ。やや物足りないのは確かだが、平均点にはあるか。

○ スタミナ (5)

 Princequillo~Prince RoseとRibotの相性の良さ(ニックスだと言えるレベル)をいかし、中~長距離向きのスタミナを確保した配合。更に、Alchimist・Hyperionと全体的にスタミナ優位。本質的なステイヤーと言い切れるレベルではないものの、12F前後を最も得意とするタイプ。更に、7代目以降においてもBull Dog(=Sir Gallahad)・Man o'War等が生き、しっかりと結合を完了している為に、長く良い脚を使えるタイプ。かなり重厚な血統構成。


 総合的に見ると、決してシンプルでは無い血統構成で、超一流と言えるような内容では無い。それでも、Sadler's Wellsへの血の集合力、代々重ねられてきた血統の質の高さ、クロス馬の優秀さ、など見るべき点も多い。したがって、血統構成(芸術的な意味において)自体はそれほど優秀ではないものの、底力を備えた内容で、かなりちぐはぐな印象を受ける。本馬の場合、戦績が安定しない理由を血統面から考察した場合、こういった理由を考える事ができる。
 しかしながら、前述したようにスピードよりもスタミナに相当の良さがある血統構成は欧州の伝統的な息吹を感じる事ができる内容で、仮に国内でデビューした場合、勝ち上がりにも苦労する内容だと考えられ、その意味においては後世に遺すべき内容の血統の一つだと言えるだろうか。成長力も秘めた配合でもあるので、今季の活躍も期待したい。

Ultra Fantasy(ウルトラファンタジー)

2010-10-13 18:41:29 | 海外馬
Ultra Fantasy(Encosta de Lago×Belle Anglaise-Sir Ivor)セン・02生

主:5 結:6 土:1 弱:5 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:4 ST:3
合計:31点 クラス:2B 芝:6~9F ダ:5~8F
日本適性:○ 成長力:□ 成長型:遅め 馬場適性:芝 重馬場適性:○

○ 主導   (5)

 血統の前面でクロスいているのは、Turn-to6×4であるが途中、Royal Chargerが断絶するため、影響が弱い。しかしながら、他に影響の強いクロスである、Mahmoud6×5が血統全体においてはさほどの、影響力を行使していないと考えられるため、主導としては、Turn-toだと考えられる。しかしながら、やはり明確な主導としては物足りない。Royal Chargerが断絶したのは非常に惜しまれる点である。

○ 結合   (6)

 主導たるTurn-toと、6代目までに存在するクロスである、Pharos(=Fairway)~PhalarisはTurn-toに含まれ、MahmoudはBlenheimで、Native DancerはPhalarisで、HyperionはGainsboroughで、Sir Gallahad(=Bull Dog)はPlucky Liege~Spearmintで、Raise YouはSir Gallahad(=Bull Dog)を通じ間接的に、PrincequilloはWhite Eagleを経由してMahmoudを通じ間接的に、それぞれ結合している。ぎこちなさは残るものの、Turn-toへと能力参加をしているのが見てとれる。また、7代目以降に存在するクロスもかなりまとまりが良く、結合という観点においてはかなり優秀だと言えるだろう。ただし、Count Fleetの結合が確認できないのはマイナスで、完璧と言えるレベルではない。出来ることならばこのクロスは無かったほうが良かった。

○ 土台   (1)

 Pharos(=Fairway)が11ヶで形成。単一の土台構造としてはかなり貧弱で、サポートもGainsboroughが8ヶとかなり弱い。Ultra Fantasyは世代の問題が非常に大きい配合だが、土台構造がそれを端的にあらわしている。

○ 弱点   (5)

 父方、Sterna内に弱点を派生。非常に影響の弱い部分であるうえ9代目において、Dark Ronaldがクロスしたのは幸いで、さほど大きな欠陥とは言えないと考えられる。他のブロックにおいては、世代の問題が大きい配合にも関わらず、主導勢力が配されている点を考慮すると比較的優秀だと考えられる。

○ 影響   (2)

 影響度バランスは(8-2-14-8)と、母父であるSir Ivorを強調している。決して良好なバランスとは言い難いが、影響の強いクロスを含み、Sir Ivorの良さは再現されているのはプラス。

○ 質[近]  (2)

 父Encosta de Lago(2B)は決して良好とは言えないが、母Belle Anglaise(3B)を初め、Sir Ivor・Fairy King等、近い祖先の血は比較的良好である。血統評価以上に底力を発揮できるタイプ。

○ 質[遠]  (3)

 主導たる、Turn-to自身の血の質は決して高いとはいい難いが、次いで影響の強いMahmoudを初め、Native Dancer・Princequilloと強い影響を持つクロスの質自体は悪くはない。平均点にはあるだろうか。

○ スピード (4)

 主導たるTurn-toは、Mumtaz Begum~Mumtaz Mahalを生かしスピードを再現。Ultra Fantasyの血統内においてスピードの核を形成している(実際にはTurn-to内で生かされているPlucky Liege~Spearmint、Solario~Gainsboroughがしっかりと生きている為、決め手を備えながら、粘り強いスピードを再現している)。次いでMahmoud・Pharamondとスピードを補給している。生かされたスピード勢力は強靭でかなりのレベルだと言えるだろう。

○ スタミナ (3)

 主導たるTurn-toは、Plucky Liege~Spearmint、Solario~GainsboroughのアシストによりスタミナによさのあるTurn-toへと能力変換が行われているものの、スタミナの核と捉えるには不満が残る。しかしながら、Plucky Liegeを伴なったSir Gallahad(=Bull Dog)や、結合こそ弱いものの、Princequillo(5代目のPrincequilloは世代ズレと判断)がスタミナを補給しているのは見てとれる。平均点にはあるか。


 総括すると、スピードによさがある配合なのはしっかりと確認できるものの、全体的に世代の問題が多く(Sir Ivor2×5等)、クロス効果が若干不明瞭なのは非常に惜しまれる点で、土台構造の散漫さとあわせ、決して安定した競争成績を残せるタイプではないだろう。しかしながら、主導たるTurn-toへの血の流れは非常にレベルが高い内容で、Turn-toが明瞭な主導権を発揮していると捉えた場合(理論上では高評価できるものでは無いが)、血統上で生かされたスピード・スタミナはほぼ確実にTurn-toへと補給されていると考えられる。従って、仕上げにくいタイプではあるものの、仕上がった際には強い競馬を見せる事ができるはずである。部分部分においては、キラリと光る部分を持つ配合だと言えるだろうか。

Harbinger(ハービンジャー)

2010-07-31 22:37:59 | 海外馬
Harbinger(Dansili×Penang Pearl-Bering)牡・06生

主:9 結:6 土:2 弱:4 影:2 質[近]:3 質[遠]:4 SP:4 ST:5
合計:39点 クラス:1A 芝:8~15F ダ:~9~F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 Harbingerの主導は、Northern Dancer4・6×4・5。この、Northern Dancerは非常に珍しくあるが、Natalma~Almahmoudと系列クロスを形成し、血統の4ブロックにある点を含めて、血統全体を極めて強力にリードしている。この明確さは、近年ではかなりのハイレベルにあると言えるだろう。

 また、血統内において6代目までに存在するクロスである、Native Dancer・Crepello~Donatello(=Domenico Ghirlandaio)・Tom Fool・Grey Sovereign・Wild Risk・Hyperionは全て主導と直接結合を完了している。この結合力も非常に強固だと言え、競走馬の血統の根幹を成す主導・結合は相当のハイレベルだと考えられる。惜しむらくは、これだけのクロスを底支えする土台構造が貧弱な点で、Blenheimが14ヶと不満が残り、影響度バランスも(13-2-8-13)と安定感は少ない血統構成だと言えるだろうか。

 また、Time Call・Nagaika内はTourbillon~Ksarがクロスするものの、8代目以降でクロスしているうえに結合力も弱い為に弱点を形成している。近親度が強い為にやや不満が残る(平均点にはあるだろうが)。

 しかしながら、生かされたスピード・スタミナ勢力は非常に強靭で、スピードはGrey Sovereign~Nasrullah・Natalma~Almahmoud・Turn-to・Tom Fool~Menowと隙が少なく、意外と器用なタイプだと言える。スタミナ勢力は更に強靭で、Crepello~Donatello(=Domenico Ghirlandaio)をスタミナの核に、Hyperion・Wild Riskがスタミナをサポートしている。更に、7代目以降ではあるもののBois Roussel・Sir Gallahad・Bull Dogがその母Plucky Liegeの裏づけによって、隠し味的にスタミナを補給している。これだけの重厚さを持った配合は近年では中々見ることが出来ない。スタミナ優位かつスピードに良さもあるステイヤーだと言えるだろう。

 血統を構成する血の質も高く、底力勝負も十分可能な血統構成だと言え、これからの活躍も期待したい。

Overdose(ウーヴェルドーズ)

2010-07-25 11:32:46 | 海外馬
Overdose(Starborough×Our Poppet-ウォーニング)牡・05生

主:8 結:4 土:4 弱:4 影:3 質[近]:2 質[遠]:4 SP:4 ST:4
合計:37点 クラス:3B 芝:7~10F ダ:6~9F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:芝 重馬場適性:□

 Overdoseの主導は、Never Bend5×5の系列クロス。その父Nasrullahを5・6・7×6・7とクロスさせ、血統全体を強力にリードしている。若干惜しまれるのは、父父ソヴィエトスター・母父ウォーニング内においてNasrullahが7代目から存在する点であるが、ソヴィエトスター内ではNearcoが6代目から影響を行使しているのは、バランスの悪さが残るものの、幸運だといえるだろうか。

 また、血統全体でNearco~Pharos(=Fairway)系が強い血統構成で、その意味でも血統全体の血の集合力は強力で、土台構造もPharos(=Fairway)が22ヶとかなり強固な状態を作り上げている。更に影響度バランスも(3-7-2-3)と抜群のバランスを示し、仕上げやすく、安定感のある血統構成だと言えるだろう。

 反面、血統全体の結合力はやや不満が残る配合で、Native Dancer6×6はSickleを通じPhalarisでかろうじて結合こそするものの、War Relic(=Speed Boat)6・8×7・7は10代目まで遡ってはじめて、Fair Playを介し間接的に結合する程である(つまり実質的に未結合状態である)。この、結合力の弱さはOverdoseの血統において最も大きな不満で、真の意味においての一流であるとは言い切れないのはこの結合力に由来する。

 しかしながら、全体的にはかなり良く出来た血統構成で、7代目以降に存在するDjebel・Donatelloの影響から、主導たるNever Bendはスタミナに良さがあるNever Bendへと能力が変換されていると考えられ(スタミナよりのバランス血統)、また結合こそ弱いもののWar Relic(=Speed Boat)・Prince Rose・Bull Leaとスタミナの血をきめ細かく押さえている。また、スピード面はTom FoolやNasrullah内のスピード要素を完全に再現し、かなり良く出来ていると考えられる。

 血統の前面においては、スピード要素が圧倒的に強い為にけっして12Fを克服できるようなタイプではないものの、内在するスタミナ要素を引き出すことが出来れば、近年のチャンピオンディスタンスである芝10Fは、ペース次第でなんとか克服可能だろう。

 スピードに良さがある血統構成ではあるものの中々に重厚な配合で、一介のマイラーでは無く、スタミナに裏打ちされたスピードを持つタイプで、国内の芝ではスピード不足のレッテルを貼られかねない血統構成である。したがって、見た目の血統構成よりもずっと良く出来た内容で、今後の活躍も引き続き期待したい。

Gloria de Campeao(グロリアデカンペオン)

2010-05-04 18:20:59 | 海外馬
Gloria de Campeao(Impression×Audacity-Clackson)牡・03生

主:8 結:6 土:3 弱:2 影:2 質[近]:2 質[遠]:3 SP:3 ST:4
合計:33点 クラス:2B 芝:9~12F ダ:8~11F
日本適性:□ 成長力:○ 成長型:普通 馬場適性:兼用 重馬場適性:○

 今年のドバイWCの覇者、Gloria de Campeaoについての血統考察をしてみたいと思う。

 Gloria de Campeaoの血統の前面でクロスするのは、Good Manners4×4、La Farnesina5×4となっている。前者は、その父Nashuaを5・6×5とクロスさせ、系列クロスを形成し、非常に珍しくはあるが血統全体を強力にリードし、主導としての役割を果たしている。また、後者は単一クロスであるものの、特殊な欧州系統(Tourbillonを始めとした仏系)をまとめているのが見てとれる。したがって、両者のクロスは有効で、主導・結合といったサラブレッドの血統において、根幹をなす部分についての評価自体は中々に優秀だと言える。

 また、血統全体でスタミナ色の強い配合で、一見すると、米系統のスピードが強い配合ではあるものの、La Farnesinaをはじめ、Tourbillon・Hyperion・Bull Dogと数種類の、強力なスタミナ要素を6~7代目にクロスさせ、主導へと結合をさせている為に、芝の中長距離をこなしても不思議ではない(米系統が強いのは確かなので、実際には兼用タイプだろう)。

 しかしながら、父母の血の流れ自体は悪くは無いものの(父ImpressionはNashua主導、母AudacityはNearco主導で血の流れ自体は引き継いでいる)、相性自体は今一つで、母方の米系要素が少ない為に、父内Spy Songの欠陥はかなり深刻で、近親交配馬であるにもかかわらず、成長力・安定感には大きくマイナスだと考えられる。

 このようなマイナス要素こそ確かにあるものの、血統構成自体には光る部分も持ち、ブラジル産の手作り感のある血統構成には、好感を抱くところではある。