空間設計堂blog(ブログ)

新潟県上越市大潟区の建築設計事務所のブログです。

もう埋もれても良い...

2024-05-21 10:28:19 | プロジェクト

2021年の1月に私が住むところでも相当雪が降って、3日間程毎日朝から晩まで除雪、屋根の雪下ろし作業をしたことがありました。

それまで雪国でも多くは雪の降らない海側育ちで、あまり大雪の経験がなかった私でした(私が高校生の頃大雪で、親父の手伝いで実家の屋根の雪下ろしをしましたが、まだ高校生で当事者意識が薄かったこともあり、あまり大雪で大変という実感はなかったのです。)が、3年前の体験は本当に身に染みました。

以前からもある程度は冬の状況を想定しながら建築設計をしてはいましたが、それ以後更に頭の中ではリアルに想像ができるようになってきたような気がします。(もっと雪の降る山側に住まわれている方々からすれば、まだ甘いかもしれませんけれど。)

 

冬季一番負担になってくるのは降った雪の処理。生活するためには外へ出ていく必要があり、毎日の除雪は雪国にとって相当な時間と労力と費用がかかります。

屋根雪を屋根に乗せたままとすると構造・費用的に建物の負担が大きくなるので、落雪式にするとなると屋根雪を落としておく場所が問題となり、敷地が広くなくて雪を長期間置いておけなければそこも除雪対象となるはず。

近年、雪国で流行ったのは高床の住宅。基礎部分を高くして積雪より上に居住部分を設ける形式。高床式の住宅は入口(玄関や車庫)から道路までの間を最低限除雪すれば冬季の生活に困らない、雪はできるだけ降るに任せるといったところで、上記の問題の回答のひとつになっています。

ただ、高くした基礎部分を有効活用するように車庫とか物置利用にあてていますので、実際はほぼ3階建てのような住宅で、構造的にも費用的にも負担の多いプロトタイプだったような気がします。

ゆえに、最近の物価高等があって建築工事費が上がってきている状況も踏まえ、工事費用を抑えつつ、冬季の生活に耐えうる(高床に代わる)プロトタイプは...という課題がずっと頭にあります。

 

それで今のところ考えているのは、もう雪に埋もれるのを前提にしたら良いのではないかと。

以前、ブログ記事にした‘2階、リビング、ダイニングのススメ’の住宅はまさにそれがスタートでした。冬季、1階はもう雪に埋もれるのを受け入れることから。

基本的に雪に埋もれてしまうのを受け入れる部分は

・積雪に押されても耐え、劣化が少ないであろう素材で作る。コンクリート若しくは金属性の素材。今のところ予算を考えると金属製の外壁かなというところ。

・開口部は弱いので冬季雪囲いする必要があり、工夫をする。

除雪しないといけないエリアをできるだけ少なくする。(上記提案も玄関から道路までの範囲を除雪することを想定しています。)

 

最近、教会も考えたわけですが、それも大雪が降る敷地で低予算でしたので、同じように考えています。

冬季、雪に埋もれた教会のイメージ。(敷地は3m位積雪の恐れがあるところです。)

向かって左のカバードポーチを冬季は雪囲いします。(高田の雁木通路のような空間になるはず)開口部はほぼこのカバードポーチ部分にあるので、開口部は雪から守られます。

1階レベルをそのまま冬季も利用するわけで、光を取り入れるため(積雪想定レベルの上)上部にトップサイドライトを設けています。

除雪エリアは道路までの最小限としました。(除雪をしないといけないエリアには開口部を設けています。上記イメージでは内部の十字架に光を当てるため開口部があります。レーモンドの軽井沢の教会を参考にしました。)

 

雪国で建築を創るにあたって、雪は必ず考えねばならないこと。

費用を掛ければ、構造で梁や柱の断面を大きくして耐雪にしたり、融雪装置を設備で入れたりすれば解決することもあるかもしれませんが

そんなことはなかなかできないのが実情。

雪のことを頭に入れながら設計しないといけないのは雪国で活動する設計士の宿命なので、予算とのバランスを取りながら、なんとか設計していければと考えます...。(なかなか実践する機会がありませんが...。)

 

 

 

 

 

 

 

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