不況は多くの点でマイナスであるが、数少ないプラス面がある。その一つが好況期には株価が高くて投資妙味がなかった銘柄を妥当な価格で買うことが出来る点だ。
そのような銘柄の一つがシマノだ。シマノは自転車部品や釣具のメーカーで、自転車部品については圧倒的なシェアの高さから、「自転車部品のマイクロソフト」と例えられる。
そのシマノの電動変速機Dura-Ace Di2 7970が、今週のツアー・オブ・カリフォルニアでデビューする。ツアー・オブ・カリフォルニアというのは、サンフランシスコを出発点とし、ロサンゼルスを終点とする約1週間のロードレースだ。
このレースでコロンビア・ハイロード、スリップストリーム、ラボバンクの3チームがこの電動変速機を使う。電動変速機はバッテリーの電力を使って、ギャチェンジを容易にするものだが、今までの製品(フランスのMavicなどが作っていた)は、信頼性に問題があった。また保守的な人は変速機用とはいえ電力を使うことは自転車競技の理念に反すると悩んでいるそうだ。
だがある自転車レースのエキスパートは「3年以内にハイエンド・バイクの変速機は総て電動になる」と予測している。電動変速機はレーサーの負担を減らし、レーサーの集中力を高めることが可能だからだ。
Di2 7970の値段はインターネットで調べると20万円弱だ。私のような自転車競技の門外漢から見ると「高い!」と思うが、インターネットで販売されていることを見ると、自転車愛好家の中には買う人がいるということだろう。
電動変速機がハイエンド・バイクの主流になるかどうかという観点から今年のツアー・オブ・カリフォルニアを観るのも面白そうだ。
ところで昨年最高益をあげたシマノは、今のところ今年度は若干の減収減益を予想しているが、配当は昨年度並の61円から65円を予定している。
環境・エネルギー問題あるいは健康問題を考える時、自転車という乗り物の将来は非常に明るい。ハイエンド商品の電動変速機が直ぐに一般に普及するとは思われないが、その内廉価版が出ると新しい市場が出来るかもしれない。
暗い話題が多いが、シマノのようにずば抜けた強みを持った日本企業もあるのだ。走れ!シマノ。