金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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外交は信念かつパフォーマンス

2009年02月18日 | 国際・政治

昨日(2月17日)スポーツジムでランニングをしながら、午後7時のNHKニュースを見ていた。トップニュースが「中川財務相の辞任」であることは、昼間クイックで知っていた。だが改めて記者会見でのテイタラクを見ると情けなくなる。当初日本のマスコミは中川大臣のテイタラク振りを無視していたが、海外のメディアやインターネットが大きく取り上げたので慌てて記事にしたようだ。

ニュースはその後、米国のヒラリー・クリントン国務長官の日本における精力的な活動を報じていたので、中川氏のテイタラクが一層目立つことになった。

さてそのヒラリーだがまず最初の訪問国に日本を選ぶとともに、オバマ大統領が最初に会う外国のトップに麻生首相を選んだ。米国の同盟国として一番行き易いところを選んだというのがマスコミの解説だが、悪くいうと組し易いところを選んだともいえる。

ヒラリーやオバマ政権の真意については、もう少し深読みしておく必要がある。ヒラリーは大統領選挙時は「今世紀における米国の最も重要な二国間関係の相手は中国である」と述べている。だが彼女は最初の訪問国に日本を選んだ。勿論目先日本との関係を重視していることは間違いないが、タフな中国を相手にする前に日本をしっかり取り込んでおこうという考えであることは間違いない。

先日米国のCIA長官が「世界的な不況はテロや紛争の危険性を高めている」と議会証言を行っていた。米国政府は景気対策に巨額の予算を投入せざるを得ず、国防予算を抑制せざるを得ない。またブッシュ前政権の失政により、国際社会で悪化した評判を回復しなければならない。従って当面はイラクからの責任ある撤退、イランとの対話模索という穏健外交策を取るだろう。そしてアフガニスタン等で日本に金銭面だけでなく、マンパワー面での協力を求めてくる。

ところでヒラリーを見て思ったことは「外交は信念であると同時にパフォーマンスだ」ということだ。北朝鮮拉致被害者の話を聞き個人的な同情を示し(もっとも政治的な言質は与えないが)、明治神宮では日本の伝統に敬意を表す。麻生首相と会談した後に、ちゃっかり次に首相になる可能性の高いと思われる小澤党首にも会っておく。米国の国益を最大にするという強い信念を持ちながら、パフォーマンスを大事にして日本での人気を高めようとする。中々タフな相手である。

国際舞台でミソの付いた日本だが、麻生首相の訪米時には日本人として毅然としたところを示し、友好的でも守るべきは守り日本の国益を高めて欲しいものであるが日頃のパフォーマンスを見るとかなり心配である。せめて論語の一節でも読んでいって欲しいものだ。

国益を守る外交は古来「士」(高級官僚・政治家)のメルクマールであった。孔子は弟子の子貢が「士とは何ですか?」と質問した時「自分の行いに恥を知り、諸外国に使いして君命を辱めない人物は士というべきだ」と答えている。これは逆説的に考えると古代中国でも「四方に使いして国に恥をかかせるような政治家がかなりいた」ということなのかもしれないが。

コメント (1)
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