不況の時代に売上を伸ばしているのは、ユニクロの様に安くて価値ある商品を製造・販売している企業だ。またアマゾンのように流通マージンを排除した通販業者も売上を伸ばしている。これはモノの世界の話だが、「ニュース」という情報の世界にも流通業者を排除した製販直結の日がやがて来そうだ。
「ニュースはどこから来るのか?その答は大部分通信社から来る」とエコノミスト誌は書き出す。通信社とは何か?というと共同通信やロイターなどのように、ニュースを集めて、マスコミや企業等に配信する組織である。通信社は「ニュースの卸売業者」で、新聞社や放送局は「ニュースの小売業者」だ。マスコミは通信社から得たニュースに解説等付加価値を付けて販売する。日本語版ウイキペディアは「通信社は大衆向けに自ら報道をしない。収集した一般向けニュースは提携先の新聞社や放送局で発信される」と説明している。しかしこの説明は近い将来書き換える必要があるだろう。
世界的な金融危機は新聞社にも大きな影響を与えている。米国ではシカゴ・トリビューンが昨年会社更生法の適用を申請したことは記憶に新しい。大スポンサーの金融業者などが広告費を抑制する一方ネットで新聞を読む人が増えているからだ。新聞各社がリストラを実施している中で、通信社はカバレッジを広げるため、支局を拡大させている。これは新聞社が独自の取材網を縮小して、ますます情報源を通信社に頼ることを意味する。
ウエッブ・サイトでのニュース提供が増えているため通信社の収入の内、新聞社の占める割合は減少する一方だ。エコノミスト誌は「世界最大のAP通信は、1985年には55%の収入を新聞社から得ていたが、昨年は25%に減少している」と述べている。
このような状況を見てエコノミスト誌は「新聞社が通信社のコピーをより多く使うようになっているのなら、どうして通信社は自らサービスを提供しないのか?」と疑問を投げかける。実際このようなことは部分的には起きている。通信社であるロイターやブルンバーグは既にウエッブ・サイトで消費者向けにニュースを提供してる。また消費者の中にはスマートフォンや携帯電話でニュースを読んでいる人が増えている。
新聞紙に変る電子媒体で、ニュースを読むことが主流になるかどうかについて、私は二つの技術革新が決め手になると考えている。一つは「電子インキ」の発展だ。現在のパソコン等の液晶画面は「バックライト」が必要なので、長時間読むと目が疲れる。これを改良したのが「電子インキ」だ。アマゾンが電子ブック用に開発したキンドルという図書端末は電子インキ技術を使っているので、目が疲れないという。アマゾンのキンドルが、他の電子ディバイスと異なる点は、若者をターゲットとせず、読書好きの中高年をターゲットにしている点だ。新聞を好む中高年層が、電子端末をドンドン使うようになると、新聞を電子端末で読むことが増えるだろう。
もう一つの技術革新は紙や布のように丸めることができるスクリーンだ。これも数年の内に実用化されるだろう。これらが揃った時、紙の新聞を読む必要がなくなる。ニュースをパソコンを経由せずに直接紙状のスクリーンにダウンロードすることができる日、それはニュースが製販直結する日になるだろう。
ニュース・ソースを通信社に頼り、新聞紙の発行とディストリビューションに特化した新聞社は、ニュースの販売ルートから排除され、ニュースの製販直結の世界が来ると私は考えている。
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