金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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国家対非国家の戦い

2009年02月02日 | 国際・政治

自衛隊をソマリアの海賊退治に派遣することに関する日本の対応の遅さの原因を考えている時、ブルッキングス研究所の研究論文を見て、日本の考え方がかなり他の先進諸国のそれとずれていることが分かった。ブルッキングス研究所はリベラル・中道な研究所として有名で、米国の民主党政権に強い影響力を持っている。

ブルッキングス研究所は「発展途上国の国家の弱さランキング」Index of State Weakness in the Developing Worldを発表している。その前文で「9.11テロ以降米国とその他諸国はしばしば国際平和と安全は世界の最も弱い国々からもたらされてきた。・・・・・従って米国の国家安全戦略は強い国家と同様に、弱くて破綻した国家も同様に危険をもたらすと考えている」と述べている。

トルストイの「アンナ・カレーニナ」に「幸せな人は一様に幸せだが、不幸な人はそれぞれの理由によって不幸である」という文章があるが、これは弱くて破綻した国家にも当てはまる。ブルッキングス研究所の表は「経済」「政治」「安全」「社会福祉」「一人当たり国民所得」をベースに総合点をつけている(点数が低いほど悪い)が、国々により悪い項目にバラツキがある。

総合点が一番悪い国はソマリアで0.52、次がアフガニスタンで1.65、3番目がコンゴで1.67、4番目はイラクだ。その後アフリカ諸国が続き、15番目が北朝鮮で3.87点。北朝鮮は「安全性」は高いが「経済」は0.52点でアフガニスタンの4.51点やイラクの2.87点よりかなり低い。パキスタンは下から数えて33番目(5.23点)で、下から2番目のグループに属する。日本に近いところでは下から58番にフィリピンがいる。

これら「国家としての統治が弱いあるいは機能していない国」さらに極端にいうと国境はあるけれど「非国家」の状態の国が、テロリストや麻薬密造者・販売者などの温床になっているというのが、米国やEU諸国の考え方である。ソマリアに駆逐艦派遣を決定した中国もこの点では同様の国家安全保障方針を持っていると考えてよいだろう。

テロリスト達は国家の機能が回復してくると、より統治機能の弱い国に移っていく。エコノミスト誌は「最近イラクの治安が回復してきたので、イスラム過激派はパキスタン、ソマリア、イエメンに向かっている」と報じている。

日本での国家防衛に関する議論を見ると、このような冷戦終結後の世界の安全保障問題が「非国家のもたらす危険性」に移っていることが全く反映されていないように見える。

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