「9.5.3・・・・家電メーカー数」というタイトルを見て、何を意味するか分かる人はかなりの家電業界通か最近エコノミスト誌を読んだ人である。9は携帯電話を作っている日本のメーカー数で、5はその内電気掃除機から電気釜まで作っている総合家電の社数で、3はその内エスカレーターを作っているメーカーの数である。
エコノミスト誌は日本の家電メーカーの数が余りに多くて、しかも同じような製品を作ってきたが、今回の世界的な不況が、驚くべき速さで家電メーカーが長年抱えてきた問題をあぶりだしていると述べている。
私事ながら今ある雑誌に随筆を書く予定で、少し携帯電話端末業界のことを調べており、「日本の携帯電話端末と国際市場」(大崎 孝徳 創成社)という本を読んでいる。この本は2008年4月に初版が発行されているが、その中では、日本の携帯電話端末メーカーは11社になっていた。その後三洋電機と三菱電機が撤退したので、9社になったということだ。世界の携帯電話端末のシェアはノキアが32%、モトローラが18%、サムスンが13%を占め、日本のメーカー各社のシェアは1%程度だ。現在日本の携帯メーカーは全く国際競争力がなく、日本という小さな市場にひしめき合っている状態だ。
エコノミスト誌は「ソニーが東芝にセルチップ事業を売却する」例など、日本の家電業界における事業統合の例を紹介している。しかしかって日本が米国の家電業界に「高品質・低価格」で攻勢をかけた様に、日本もまた韓国のサムスンやLG、中国のハイアールなどの攻勢に晒されていると同紙は報じる。
エコノミスト誌は日本の家電メーカーが生き残る道は、経営陣が言うように「ソーラーパネルや電気自動車のようなクリーン・エネルギー分野」だと言いながら、一方で日本の家電メーカーは規模が大き過ぎて、その分不利だと述べる。
私見であるが、日本の携帯電話を見ると「印籠」細工の伝統を感じる時がある。小さくて精巧なものを作る日本の伝統が見事に生きている訳だ。だがそれは世界的にはマイナーな嗜好かもしれない。不況下、世界の消費者が機能本位で家電を選ぶようになると、日本の苦戦は続く・・・・。