今日(2月12日)の日経新聞朝刊は「新ダウンサイジング」の中で「二十世紀は日米欧の企業は製品の高機能化・多機能化をひたすら競ってきた。(しかし)新興市場国が主役となるこれからは違う。消費者が求める安価な製品を適切な品質で送り出す・・・ダウンサイジング競争に対応できるかが企業の興亡を決める」と述べている。そのとおりだと思う。そしてこれからは新興市場国だけでなく、先進国においても、必要以上に高品質で高い商品は一般的には敬遠されると考えるべきだろう。
必要以上の高品質やサービスをオーバー・スペック(Over spec.)という。これは和製英語だ。specはspecificationの略で、仕様書とか設計明細書という意味だ。身の回りを見ると、パソコンにしても携帯電話にしても「将来使うかもしれない」余分の機能や能力が装備されている。デジタルカメラもしかり。1千万画素のカメラを使って写真を撮り、数十分の一に圧縮してブログに載せていることを考えると「画素競争」に巻き込まれて高いカメラを買うことはナンセンスだ。オーバー・スペックという和製英語が使われるということは、日本人は必要以上の機能を欲しがる傾向があるからかもしれない。
しかし今回の世界同時不況は、先進国の消費者の消費態度を変える。ファイナンシャル・タイムズは消費者を6つのカテゴリーに分類して、マーケッティングを行う人はターゲットを定めるべきだと述べている。面白いから紹介しよう。
「拒否者」グループ。英語ではNaysayer。失業または失業のリスクを感じている消費者で、必要最低限の消費しかしないグループ。節約のため、生野菜から冷凍野菜に切り替えるなどの消費行動を取る。
「短い服役者」グループ。英語ではShort termer。都市に住む若い消費者。貯蓄がないので、金融資産の目減りの影響はないが、イザという時の蓄えもない。職を失うまで現在のライフスタイルを続ける。
「長い服役者」グループ。英語ではLong termer。老後の蓄えが金融危機で減価しているグループ。パニックてはいないが、悩んでいる。感情的な喜びよりも、機能の点に商品購入基準を見直している。ただ、彼等は全般的に楽観的で消費活動を閉ざしている訳ではない。
「単純な人」グループ。英語ではSimplifier。ベビーブーマーで、金融資産が大幅に目減りしたグループ。リスク回避的になっている。このグループの中には退職時期を延ばし、資産回復を図る人がいる。それが出来ない人は消費を押さえ、ライフスタイルをシンプルにする。
「同情者」グループ。英語ではSympathiser。賢明にも株価暴落の前に現金化して、大きな被害を受けていないグループ。消費能力はあるが、回りから派手に見られることを嫌って、謙虚に振舞っている。
「常に強気」グループ。英語ではPermabull。常に楽観的。消費意欲旺盛だが、消費者信用が抑制されているので、やむなく消費を抑えている。
このように分類されると、総ての人がどこかのグループに入りそうだ。そして多数の人が「機能を重視し」「見かけの派手な消費を抑制しよう」と考えていることが見えてくる。
米国仕様のSUVなどは「車で移動する」という目的からすると、明らかにオーバー・スペックだった(所有の満足はあるが)。日本製の電気製品にもそのような傾向はある。「新ダウンサイジング」とは、オーバー・スペックを見直すということである。その潮流に乗ることが出来るかどうかが、商売の要となるということだろう。少なくとも5年位は・・・・。