金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

さらば、オーバースペックの時代

2009年02月17日 | 社会・経済

2月16日に内閣府が発表したGDPは年率換算で前年比マイナス12.7%だった。これは第一次石油危機以来の落ち込み。記録的なマイナス成長の原因は輸出の低迷で、その大きな原因はアメリカの消費の落ち込みだ。そしてその背景には「エネルギーの転換」と「オーバースペックの終了」という二つの潮流があると私は見ている。

エネルギーについては別に機会に私見を述べたいが、簡単にいうと私は2008年が世界の原油生産のピークだったことが、後世明らかになるのではないか?と考えている(これは以前から述べている)。最近ファイナンシャルタイムズが欧州第3位のエネルギーグループ・トータルのCEOの意見を紹介していた。それによると「世界は今後89百万バレル/日以上の原油を産出することはもうないだろう」とCEOは述べている(因みに3年前国際エネルギー機構は2025年までに130百万バレル/日の産出量に達すると予想しいてた)。

さて本題は「オーバースペックの時代が終わる」という方だ。今日の日経新聞に「割安家電『名』より『実』」という記事があった。話のメインは「節約指向の高まりで、世界的には有名で日本では無名だったブランド~例えば中国のハイアールや韓国のLGエレクトロニクス~の商品が良く売れている」ということだが、私はそれよりも「オーブン機能のない料理を温めるだけの電子レンジが売れている」と事実に興味を持った。記事によると電子レンジで最も売れているのはNeoveというブランドの7,980円の製品。販売店によると「今は安ければある程度機能を省いても気にしない人が増えている」と話している。

これは消費者がオーバー・スペックな商品を買わなくなりつつある・・・ということで私は「今」だけでなく、景気が回復してもこの傾向は続くだろうと考えている。

ところでオーバー・スペックな商品がないという点で、最も典型的なものは私は「登山道具」ではないか?と考えている。「ピンからキリ」とか「松竹梅」という言葉があるが、登山道具にはほとんど「ピンからキリ」や「松竹梅」がないのである。それはある時期のあるルートを登るには最適の道具というものが、限られるからだ。

登山靴という大カテゴリーで見ると価格帯は1.5万円から5,6万円位の幅はある。しかしこれは安い方は夏の低山用の仕様で、高い方は厳冬期用の仕様という仕様の差からくるものだ。厳冬期用の靴に限れば価格にそれ程差がある訳ではない。

これは何故か?と考えると登山道具は「機能」が総てだからだ。高い靴を履いたところで、楽に登ることができる訳ではない。むしろオーバースペックな道具を持つと重たくなり、自らを苦しめる結果となる。自分の技術と登る山に合わせて最も最適の機能を持った商品を選ぶ・・・というのが登山道具選択の大原則なのだ。そうすると各メーカーの価格はほぼ収斂していく(そうはいってもブランド信仰があり、海外メーカーが若干高いが)。

登山とは必要な荷物を背負って自分の手足で山に登るスポーツだが、人間の生活そのものを象徴していると私は考えている。食糧にしろ装備にしろ必要最小限に抑えないと重くなり、自らを苦しめるだけだ。

我々の生活は見直すと随分不要なものを「万一に備えて」とか「ステータスシンボルとして」とかの観点で揃えていることが多い。しかし本当はこれらのものは、自由で弾力性の高い生活を送る上では不要なものである。

不況期に人は精神生活を重視するという。私はその過程でかなりの人々がオーバースペックな商品を敬遠するよになると考えている。これは一時的な現象ではなく、大きな潮流と考えた方が良いのではないだろうか?

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そろばん学校さん、税の話もちゃんとして

2009年02月17日 | うんちく・小ネタ

昨日わが母校神戸大学から「六甲台講堂の再生のためのご寄付お願い」という手紙が来ていた。曰く、4億円を目標に募金活動を進めてきたところ、3億5千万円まで集まった。もう一息だから関東在住の卒業生に緊急募金をお願いしたいということだ。

六甲台講堂というのは、神戸大学のシンボル的建物で2003年に文化庁より「登録有形文化財」の指定を受けている。その建物が国際会議の実施も躊躇されるほど老朽化が進んでいるということだ。

この六甲台講堂、個人的な思い出は入学式でも卒業式でもなく、山岳部の新入生勧誘のデモンストレーションとして屋上からロープを使って懸垂下降したことだ。格好良く懸垂下降するには、体が壁に垂直(地面に平行)になるまで体を倒す必要がある。当時懸垂下降は色々な岩場で良く行っていたので、慣れたものだったが、山の中でやるよりビルの屋上でやる方が高度観があると感じたことを思い出す。

そんな思い出のある六甲台講堂の再生だから、僅かながら寄付をすることにした。

ところでこの寄付には免税措置がある。つまり寄付金が5千円を超える場合、超える金額を当該年度の所得から控除することができるというものだ。

他の大学の寄付広告をホームページで見ると「免税措置」の説明があるが、わが母校の「お願い」には免税措置の説明がなかった。所得控除なので、大した金額ではない・・・といえばそれまでだが・・・・。

でも「そろばん学校」なのだから、やっぱり税金のことはちゃんと説明しておいた方が良いでしょう。あるいはOBならその程度のことは知っている・・・ということかしらん。

それにしても国の予算は減るし、企業から大口寄付を集めるのも困難な環境で大学の運営も大変そうですね。

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走れ!シマノ

2009年02月17日 | 株式

不況は多くの点でマイナスであるが、数少ないプラス面がある。その一つが好況期には株価が高くて投資妙味がなかった銘柄を妥当な価格で買うことが出来る点だ。

そのような銘柄の一つがシマノだ。シマノは自転車部品や釣具のメーカーで、自転車部品については圧倒的なシェアの高さから、「自転車部品のマイクロソフト」と例えられる。

そのシマノの電動変速機Dura-Ace Di2 7970が、今週のツアー・オブ・カリフォルニアでデビューする。ツアー・オブ・カリフォルニアというのは、サンフランシスコを出発点とし、ロサンゼルスを終点とする約1週間のロードレースだ。

このレースでコロンビア・ハイロード、スリップストリーム、ラボバンクの3チームがこの電動変速機を使う。電動変速機はバッテリーの電力を使って、ギャチェンジを容易にするものだが、今までの製品(フランスのMavicなどが作っていた)は、信頼性に問題があった。また保守的な人は変速機用とはいえ電力を使うことは自転車競技の理念に反すると悩んでいるそうだ。

だがある自転車レースのエキスパートは「3年以内にハイエンド・バイクの変速機は総て電動になる」と予測している。電動変速機はレーサーの負担を減らし、レーサーの集中力を高めることが可能だからだ。

Di2 7970の値段はインターネットで調べると20万円弱だ。私のような自転車競技の門外漢から見ると「高い!」と思うが、インターネットで販売されていることを見ると、自転車愛好家の中には買う人がいるということだろう。

電動変速機がハイエンド・バイクの主流になるかどうかという観点から今年のツアー・オブ・カリフォルニアを観るのも面白そうだ。

ところで昨年最高益をあげたシマノは、今のところ今年度は若干の減収減益を予想しているが、配当は昨年度並の61円から65円を予定している。

環境・エネルギー問題あるいは健康問題を考える時、自転車という乗り物の将来は非常に明るい。ハイエンド商品の電動変速機が直ぐに一般に普及するとは思われないが、その内廉価版が出ると新しい市場が出来るかもしれない。

暗い話題が多いが、シマノのようにずば抜けた強みを持った日本企業もあるのだ。走れ!シマノ。

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