金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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米国の金融危機は日本よりも悪い?

2009年02月13日 | 社会・経済

米国の金融危機については、発生当時から日本のバブル崩壊後の金融危機に較べてどうだ?という議論があった。「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」(ビスマルク)という名言があるから、金融危機に際して先例を研究することは大事である。当初は日本の方が悪かったという意見が大方だったと思うが、最近では米国の金融危機の方が根が深いという意見が出ている。

12日付のエコノミスト誌はWorse than Japan?という記事で、注意深く見ると米国の金融危機の方が悪いだろうと結論付けている。

その論点は色々列挙されているが、分かりやすいところを紹介する。IMFによると不良債権の額は日本の場合GDPの35%に達した。米国についてゴールドマン・ザックスが推定するところでは、問題債権の額は5.7兆ドルで、GDPの40%に達する。

また米国と日本の違いは、国債が国内で消化できるか海外の資本に頼らざるをえないかという点にもある。米国では財政支出を増やすために、国債発行量を発行するとドルが暴落する危険性が伴う。

また米国の信用市場の崩壊の最大の原因は、証券化市場の崩壊だ。エコノミスト誌によると、2007年には6,680億ドルの非伝統的な住宅ローンが証券化されているが、2008年には僅かに400億ドルが証券化されたに過ぎない。

つまり米国の金融危機は、当局が規制する「銀行」だけによって引き起こされたのではなく、ヘッジファンドと投資銀行(昨年秋以降皆商業銀行化したが)という「影の銀行システム」が深く関わっている。

またエコノミスト誌は「日本のバブルでは主に企業が債務の担い手になり、個人の借金は余り増えていなかったが、米国のバブルでは個人の借金が膨れている」「個人の債務のリストラの方が企業の債務のリストラよりも公平の観点から大変だ」と述べている。

以上のようなことを踏まえて、エコノミスト誌は米国の金融危機の方が大変だと結論付けている。

無論エコノミスト誌の見方が正しいかどうか即断はできない。例えばつい最近読んだ日興シティのレポート「日米バブルの比較研究」(09年1月28日)は、「日本では株式と不動産のバブルが同時に発生したが、米国では住宅バブルのみだ」「不良債権比率も日本の方が高かった」として、日本のバブルの方がはるかに大きかったと結論付けている。もっとも不良債権比率の大小は不良債権の定義や認定基準で異なる。同時進行していることを正確に判断することは不可能だ。どちらが正しいかは歴史の判定に委ねよう。

ただ不況からの脱出の契機に注目すると、日本は企業が過剰設備・過剰債務・過剰人員の整理を進めた後、世界的な好景気ブームに乗って輸出を拡大することで不況から脱出することができた。

この点から私は「米国にとって何が今回の不況から脱出する契機になるか?」ということがポイントだと思っている。米国において今一番必要なステップは、民間金融機関のバランスシートから不良資産を切り離すことなのだが、これはスタート点でゴールではない。その答は8千億ドルを少し切った予算の中にあるのだろうか?

あるいはその答は「日にち薬」という言葉の中にあるのだろうか?「日にち薬」には「病気や怪我の中にはほっておいても、時間が経てば治る」という意味と「どんなに医薬を施しても時間が経たないと治らない」という二つの意味があるそうだ。

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