4月22日韓国の通信社Yonhapは「韓国軍情報部は先月黄海で突然沈没した1200トン級の哨戒艦天安は北朝鮮の意図的な攻撃で沈没したと発表した」と報じている。ただし韓国政府は正式なコメントを控えている。
天安の沈没原因については、米、英、オーストリア、スウェーデンの専門家の支援を受けて韓国軍が調査を行っていた。ワシントンの保守系シンクタンク・戦略国際問題研究所は4月22日に次のように解説を行っている。「今のところ北朝鮮が天安を攻撃したという明確な証拠はない。沈没した船を引き上げ調査した結論は、外部からの爆発により天安が沈んだということである。また衝撃の度合いから見て、朝鮮戦争当時の残留機雷による爆発とは考えられない。調査に関わった人々はオフレコベースだが、北朝鮮の魚雷が関与しているのではないかという強い疑念を持っている。また最近の世論調査では韓国人の8割は北朝鮮の攻撃で天安が沈んだと信じている」
韓国最大の新聞・朝鮮日報は「魚雷攻撃を否定する人は何を恐れるのか?」というコラムで北朝鮮による魚雷攻撃説を支持している。ご関心のある方はこちらへ → http://www.chosunonline.com/news/20100421000048
この件について沈黙を守っていた北朝鮮は4月17日に「沈没原因の究明ができなかったので、韓国の保守系政治家が北朝鮮を犯人に仕立てている」とコメントで関与を否定している。だがこの北朝鮮のコメントをそのまま受け取る人は事件に詳しい人の間ではほとんどいない。
仮に北朝鮮が天安の沈没に関与していたとして、その目的な何なのだろうか?
戦略国際問題研究所はこの仮想的な質問に次の4つの可能性を示している。
「2009年黄海で韓国・北朝鮮の艦船が遭遇した発砲事件で北朝鮮兵2名が死んだことへの不釣合いな報復」「保守的で北朝鮮に不関与政策を取る韓国政府を支援を引出すための交渉に引出すための高圧的外交」「韓国や近隣諸国に対し最近強化した北朝鮮の海軍力の誇示」「北朝鮮政権内部で混乱が起こり、強硬路線派が示威行動を示した」
韓国・米国政府とも正式に北朝鮮が天安を攻撃したと表明していないので、今のところ韓国側から報復攻撃にでる可能性は極めて低そうだ。エコノミスト誌によると戦争を煽るような動きはほとんど国民の支持を得ていないということだし、株式市場も落ち着いている。
ただし、今後もし北朝鮮が天安を攻撃したという確定的な証拠が出たらこのまま収まるのだろうか?韓国・北朝鮮の間でこれだけ大きな死者が出た事件は1987年の大韓航空機爆破事件以来のこと。
過度に大騒ぎをすることはないが、我々の直ぐ近くに「核武装した非常に危険な国がある」という事実だけは冷静に受け止める必要がある。