金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

「ポルトガルはギリシアと違う」という主張も半ば届かず

2010年04月28日 | 国際・政治

4月27日S&Pはギリシアの格付を3段階(BBB+→BB+)、ポルトガルの格付を2段階(A+→A-)引き下げた。欧州の信用不安再燃で、欧州・米国の株安に続いてTOPIXも287円87銭安と今年2番目の下げ幅となった。

先週(22日)のエコノミスト誌はThe importance of not being Greeceというタイトルで、ポルトガル政府は「自分達はギリシアとは違う」と主張していると記事を書いていた。

記事によるとポルトガルの財政赤字はGDPの9.4%(ギリシアは12.7%)、公的債務残高はGDPの85%(ギリシアは124%)だ。また同国の政府会計はギリシアと違い信頼がおける。また必要に応じて厳しい緊縮財政を取り、財政赤字を削減してきた実績もある。中道左派のホセ・ソクラテス政権は改革のパイオニアであり、定年年齢の引き上げを実施している。

それにも関わらずどうして市場はポルトガル国債に高いプレミアム(2年債の利回りは4.8%)を要求するのか?とエコノミスト誌は疑問を投げる。

そして同誌はその一つの答は「ポルトガルの最大の問題は財政問題ではなく、成長性の欠如だ」と述べている。ユーロに加盟して以来ポルトガルの実質GDP成長率はユーロで一番低い。

ポルトガルは低付加価値商品の輸出国だが、労働コストが持続的に上昇し、生産性の伸びを上回ったため、東欧圏に輸出シェアを奪われている。ポルトガルはかって貯蓄熱心な国だったが、今では海外債務に依存するようになっている。

動きの遅い官僚機構、非効率な裁判システム、貧弱な学校教育、規制による競争の欠如、厳格な労働法(欧州で最も労働者保護の強い国)、政治家の改革意識の欠如・・・・・

これらがポルトガルの低成長と競争力劣化の原因である。エコノミスト誌は「ポルトガルは確かにギリシアと違うが市場がこれらの点を注目すると同国の土台を揺さぶる」と警告を発していた。

☆   ☆   ☆

ハイテク分野で競争力を持つ日本をポルトガルと単純に重ね合わせることはできないが、幾つかの点で日本も同様の弱みを持つ。

かなり遠い将来の懸念だが・・・・現在のような混迷が続くと、日本がギリシア並みの債務とポルトガル並みの低成長に喘ぐと言われる日が来る可能性なしとはしないと私は危惧している。

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検察審査会、「小沢氏起訴相当」判断は健全な市民感覚

2010年04月28日 | 政治

今日(4月28日)の新聞一面は「検察審査会、小沢一郎氏は起訴相当と判断」という記事が埋めていた。かって小沢氏については「理念・政策の人」という神話があったが、多くの市民が結局彼は選挙に勝つことにだけに固執しているということに気がつき始めたということだろう。

小沢氏の政治姿勢については文芸春秋五月号に次のような記事が出ている。お読みの方も多いと思うが、思い出したのでご紹介しておこう。

「小沢氏は自民党幹事長だった平成二年の衆院選の際には、中央・地方の財界・企業経営者から計三百億円もの献金を選挙資金としてかき集めた。その時の殺し文句が『自民党が負けて、日本が社会主義の国になってもよろしいか』・・・・野党議員となって財界と疎遠になった後、皮肉にも(小沢氏が)目をつけたのが労組、なかんずく官公労であり、社会主義に理想を求める政治家や国民だったというわけだ。小沢氏が世間で誤解されているような保守政治家でも、「理念・政策の人」でもないkとがよく分かる」(「政権交代は『労組の天下盗り」だった」阿比留瑠比 より)

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チャプター22?日米の再破綻雑感

2010年04月28日 | 金融

少し前に帝国データバンクが発表したところでは、2000年4月から2010年3月の間に民事再生法を申請した7754社の会社の内、裁判所が再生手続きが終了したと認めた会社3365社の内約4%141社が再破綻していることが分かった。

日本の民事再生法に相当する米国の連邦破産法11章いわゆるチャプター11を申請した会社について同様のデータがあるかどうか調べてみた。余り正確なデータは得られなかったが、Turnaround associationという団体のHPを見ると約3割の会社が、再びチャプター11を申請するか私的なリストラクチャリングを行っているという情報があった。→ http://www.turnaround.org/Publications/Articles.aspx?objectId=12347

因みにチャプター11を2回申請すると、チャプター22と呼ばれるそうだ。ただし業界で一般的に使われているかどうか不明。

帝国データの統計とTurnaround associationのデータでは切り口が違う。つまり日本のデータは破綻した先だけの数で私的な再リストラは含んでいない。従って米国の再生法による再破綻が日本より高いと判断して良いかどうかは分からない。帝国データの情報によると、民事再生を果たした会社の3割は最終赤字というから、日米のDIPファイナンスのコベナンツの違いが影響しているとも考えられる。ただしこの辺りのことはまだ調べていないので、推測の域を出ない。詳しい方の見解を教えていただきたいと思っている。

いずれにせよ、日本で再生手続きを終了した会社の最終的な破綻率が4%で留まると考えない方が良いかもしれない・・・と私は考えている。

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