先週末ある読者の方から「米銀の公的資金返済の状況はどうか?」という質問を頂き、調べようかな?と思っていたところ、タイムリーなニュースがファイナンシャル・タイムズに出ていたので、その要点をご紹介したい。
4月5日付のUS Treasury's bail-out profits top $10bnという記事によると、今のところ銀行救済ファンドは100億ドル以上の利益を得ている。コンサルタント会社SNLファイナンシャルによると、この利益に大きく貢献しているのは、ゴールドマンザックスとアメリカン・エクスプレスだ。政府の所有するワラントを09年9月に買い戻したことで、前者は年率換算20%、後者は23%の利益を政府に与えた。
SNLの報告によると、不良債権救済プログラムTARPの支援を受けた49社は援助資金を返済し、優先株やワラントの買戻しで、105億ドルの利益を政府に与えている。また政府はシティグループの持分(27%)を売り出す予定で更に利益が見込まれる。
ただしTARP全体(たしか2500億ドルだったと記憶)では、1,170億ドルの損失がでると政府は見込んでいる。これは自動車業界やAIGに関わる損失があるからだ。またSNLはTARPが出資する28のより小さな銀行については資本不足なので、損失が発生する可能性があると見ている。
以上まとめてみると、大銀行はかなりの利益を乗せて救済ファンドを返済ないし返済する見込み、小さい銀行への政府資金は損失となる可能性大、事業会社や保険会社AIGに対する政府資金では損失発生・・・ということになる。
SNLは「政府は利益を上げるために、問題銀行を支援したのではなく、金融システムの安定化のために出資した」と述べているが、政府が銀行に注入した資金で利益を得たことは、大手行を救済するために、税金を使ったという政策に対する反発をなだめる効果はあるだろう。
さて米銀大手はまずますOKとして問題の中小金融機関の不良債権の状況だが、これについては2月23日のFTに「米国の問題銀行の数が増えている」という記事があったので、こちらもポイントを紹介したい。
連邦預金保険会社FDICによると、2009年末で702の銀行が問題ありと考えられている。問題債権の総額は4028億ドルだ。3ヶ月前の時点の問題銀行の数は552で問題債権総額は3459億ドルだから、経済は回復基調にあったけれども問題銀行の数、不良債権額は増えている。ただ今回の銀行の破綻状況を1987年のS&L破綻に較べると小さい。(当時問題ありと考えられた銀行の数は2,165で不良債権総額は8330億ドルだった。)
大手銀行に発生した問題は、リセッションを引き起こしたことで実業界の問題になり、住宅ローンや商業用不動産ローンを提供する中小金融機関の不良債権増加を招いている。FTは特に商業用不動産建築ローン(コンストラクション・ローン)の比率が高い銀行は傷つきやすいと警告を発している。(アリゾナ、ネバダ、カリフォルニア、フロリダなどが危険地域)
なお銀行の収益については、2009年度の利益は125億ドルで、08年の45億ドルに較べると大幅改善であるが、その前の07年の1000億ドルに較べるとまだまだ小さい。
FTによるとFDICは2008年から13年にかけて、銀行破たんによるコストは1000億ドルになるだろうと予想している。
以上簡単ですが、ご参考までに。