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金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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「男はやっぱり仕事」か?

2010年04月13日 | うんちく・小ネタ

「男はやっぱり仕事だよ。仕事をしなくなって年金や貯金で暮らそうと思い始めたら、男はそれまでだな」(池波正太郎)

この池波正太郎の言葉は、彼に通いの書生のような仕え方をした佐藤隆介氏の「池波正太郎直伝 男の心得」(新潮文庫)に出てくる。

この部分だけを聞いた人は「ふん、池波正太郎のような作家は生涯仕事があるが、僕らのようなサラリーマンはリタイヤしたら仕事なんてない。男はそれまでかよ」という反発を覚えるだろう。だがもう少し佐藤氏の意見を聞こう。

佐藤氏は「仕事というのはメシの種のことではない。女房子供を養うだけの手段を仕事とはいわない。好きだから、やる。楽しいから、やる。それが仕事だ。」と続ける。

そうか、好きで楽しいことは仕事なんだな。それなら趣味も佐藤隆介流にいうと仕事なんだな。逆に9時から5時まで会社に通っていても楽しくないことは仕事とは言わないのか・・・という都合の良い解釈もできそうだ。

だがここで「仕事と趣味を分けるもの」について別の人の意見を見てみよう。評論家の日垣 隆氏は「知的ストレッチ入門」(新潮文庫)の中で次のように述べている。

「仕事と趣味は何が違うかと言えば、依頼と締め切りがあるかどうかでしょう。・・・・この二つが本質的なことであって、これ以外の定義は重要ではありません。趣味が楽しいのは、厳しい締め切りもなく、依頼もないからだと言えます。もちろん依頼とは、対価を伴ったオーダー(注文)のことです。」

なるほどこういう切り口もあるのか・・・と思う。しかし自分の生活を見てみると、「仕事と趣味」の間に「中間物のようなもの」があるように思われる。具体的にいうと僕の場合「雑誌への寄稿」と「ある団体との登山」が「中間物」である。

「寄稿」には無論「依頼と締め切り」がある。だが対価というには余りに小さい。資料代が原稿料を上回ることもある。また無償で同人誌に投稿することもある。「ある団体との登山」では僕はツアーコンダクター兼カメラマン兼ガイド兼宴席設営係のようなことをしている。無償だが「依頼と締め切り」はある。

より一般的にいうと「集団と行うボランティア活動」のようなものには、必ず「依頼と締め切り」があると僕は思う。そしてこれからの社会ではこのような活動が増えるのではないだろうか?

だから人間の活動は「仕事と趣味」の二つに分けるより、「仕事、社会的活動、趣味」の三つに分けた方が良いと僕は考えている。山登りを例に考えると「一人で登る登山」は全くの趣味。つまり当日の朝気乗りがしなければ止めれば良い。逆に気乗りがすれば余計に一泊しても良い。実に気楽だ。だが相当数の集団のお世話をするとなると、自分の体調やモチベーションを維持して計画通りに振舞わないといけない。

一つの考え方としてこの「社会的活動」を「仕事」と分類することもできるだろう。いやそうした方が良いかもしれない。そうすると冒頭の「男はやっぱり仕事だよ」という池波正太郎の言葉が生きてくる。

「依頼」の中の対価があるかないか?あるいは大きいか小さいか?はそれ程重要ではないだろう。むしろ「依頼」つまりそのサービスを必要とする人がいるかどうかということの方が重要だろう。「期日」があるということは「当てにされる」ということだ。

つまり「あてにされる依頼がある」ということが、男にとって大切なことだというのが僕の結論である。それをもって仕事と呼べば、男はやっぱり仕事なのである。

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