金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

英会話学校ジオスの破産、ある意味では当然の帰結

2010年04月22日 | 英語

昨日(4月21日)英会話学校ジオスが75億円の負債を抱えて自己破産した。授業料を先払いした生徒の方には気の毒だが、英会話学校の破綻はある意味では当然の帰結であると私は考えている。

何故なら「英会話学校で英会話を学ぶ」というのは、費用対効果から見て非常に効率の悪い英語の学習方法だからだ。

私は余程耳の良い人かかなり若い人を除いて、耳から言葉を覚えることには限界があると思っている(これは私のヒヤリング能力が低いことによる偏見かもしれないが)。

つまり私は「知らない言葉は聞き取れない」と考えている。だから知っている言葉を増やすことが英語の力をつける早道であり、知っている言葉を増やす早道はものを読むことである。一番良いのはインターネットで無料で読めるニューヨーク・タイムズ(その内有料になる予定)など、クオリティ・ペーパーを読むことである。

英会話を学ぶ目的をはっきりさせることも重要かもしれない。英語を使って取引相手と複雑な交渉をする必要があるなら、英会話学校に通うより個人レッスンを受けるべきだ。ただ一般的には英語でビジネスを行うことは、日常会話を行うよりはるかにレベルが高いと思っている人が多いと思うが、私から見るとそれは誤解である。

ビジネスには専門用語というものがある。例えば私が専門とする金融分野でこれだけは押さえておきたいという英語の専門用語は千位ではないだろうか?つまりこの程度の専門用語を押さえておけば、金融の場合は9割以上のビジネスを英語でこなすことができる。

私は逆に日常会話こそ難しいと思っている。例えば「お腹がしくしく痛む」時医者に何と言えば良いか私には分からない。だがこれは海外に暮らすか、一人で長い海外旅行をする時に必要な話。「英語で病状を説明する」ことを解説する本があるから手元において置けばよい。

このように考えると英会話学校は英語を英語力をつける上で非常に費用対効果の面で効率が悪いシステムなのである。経済合理性からみて破綻は不可避だったと私は考えている。

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郵便の本業まで民営化したスウェーデンから学ぶこと

2010年04月22日 | うんちく・小ネタ

今日別のエントリーでスウェーデンの福祉の話を書いた。ついでといっては何だが、スウェーデンの郵便事業の民営化状況についてもちょっと資料を見たのでその話をしてみたい。

日本では亀井郵政・金融担当相と原口総務相が「ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の完全民営化は撤回。持ち株会社に郵便局と郵便の両事業を統合し、郵便と貯金、保険の全国一律サービスを課す」仮称郵便改革法の骨子を示したところだ。

この法案で「人質」になっているのが、全国一律の郵便サービスだ。つまり不便な場所まで均一料金で郵便事業を行うと赤字になるから、金融事業の利益で補填しないといけないという主張なのだ。

ところで国情やサービスレベルが違うので、単純な比較はできないけれど、スウェーデンの郵便局(ポステンという)は1993年に独占権を失い、民営化され、かつユニバーサル・サービス(全国一律の郵便サービス)を提供しながら、なおかつ利益を上げているという事実がある。

スウェーデンの郵便の歴史は古い。ポステンが設立されたのは1636年だから日本でいうと江戸時代の初期、島原の乱の起きる1年前のことだ。さてそのポステンだが1993年に普通郵便について独占権を失った。なお小包や大量メールについてはそれ以前に自由化されていた。

自由化から15年経った2007年現在、ポステンのシェアはどうなったか?というと、91%のシェアを維持している。スウェーデンには30社を越える免許を受けた郵便業者がいるが、多少なりともポステンの競争相手となりうるのはCitymailという業者だけだ。

なおポステン以外の郵便業者は、ユニバーサル・サービスの義務はない。このため当初は僻地配達の義務のあるポステンが不利ではないか?という予想もあったようだが、結果は事実上ポステンの一人勝ちが続いている状況だ。その理由は手紙の発信者が都会部向けの郵便と僻地(ユニバーサル・サービス対象)向けの郵便を仕訳する手間を敬遠することや、ポスタルの大量処理システムのコスト優位性が優るということだろう。

また2000年代に入ってポスタルが傘下の郵便局のアウトソースを進めたことも大きいだろう。ポスタルは小型郵便局の業務を、ガソリンスタンドとかキオスクあるいはその他の小売店に委託した。ポスタルが直営しているのは都会部の400弱の郵便局のみである。

スウェーデンは人口の大部分が、数少ない都市部に住むという郵便事業から見ると効率的な?市場なので黒字が確保できるという主張があるだろう。私も日本の郵便事業の細かい収支分析をしていないので、どこをどう改善したら黒字化するという具体案を持っている訳ではない。

しかしスウェーデンの郵便改革は幾つかのことを示唆してくれる。

まず郵便事業を独占化しないとユニバーサル・サービスが確保できないというのは硬直的な考えに過ぎないということだ。国は最低1社の郵便業者とユニバーサル・サービス契約を交わせば良い。そしてユニバーサル・サービス義務を負う業者はコスト面で負けるという先入観も見直す必要がありそうだ。郵便局(正確にいうと切手販売や窓口集配を行う「郵便局会社」)の業務をコンビニエンス・ストアなどに委託するというのも、有効なコスト削減策だろう。

私は日本でこのような抜本的な改善策が出てこない理由は「郵便局の存在を前提に、あるいは郵便局を存続させるために郵便サービスを考えている」ことにあると思っている。そのような論理を展開すると、赤字の郵便業務を助けるために郵貯や簡保の限度を拡大するという転倒した暴論がまかり通るのである。

まずどうすれば郵便事業が単体で黒字になるか考える。コスト削減を徹底しても黒字にならないなら、郵便料金を引き上げるか、国が特定地域向けの集配送に補助を出しても良いだろう。

だがもう少し先を見ると私は郵便はなくならないまでも、相当部分電子メールやブログ、ツイッターなどの電子媒体に取って代わられると考えている。またエコロジーの観点からそれを推進するべきだと考えている。郵便取扱量の減少を避けることはできないのだ。それにともない郵便事業のサービス・レベルの見直しも課題になるだろう。

スウェーデンでは土日の集配はお休み。郵便の集荷は一日一回という。急ぐものは電子メールで送り、急がないけれど自分の味を伝えたいグリーティングカードなどは郵便で・・という住み分けが出来ているのだろうか?ただしこれは私の推測に過ぎないが。

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