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これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

病み上がりのサイクリング

2011年03月17日 19時57分35秒 | エッセイ
 術後一週間の診察日がやってきた。
 問題は、病院までたどり着けるかどうかだ。私の家から病院までは約14kmの距離で、2つの路線を乗り継いで行く。計画停電による鉄道各線の混乱は解消されつつあると報道されているが、果たしてそうなのだろうか。
 11時半の予約だが、余裕を見て8時半に家を出る。駅までは歩いて10分ほどかかる。半分まで来たところで、謎の行列に出くわした。
 サラリーマンに学生風の男女、大きなスーツケースを転がす奥様などが、無言で一列に並んでいる。今までこんな光景を見たことはない。
「この人たちは何だろう」と不思議に思ったが、すぐ答えに思い当たる。私は、暇そうにしている若い女性に話しかけてみた。
「あのう、もしかして、電車に乗るために並んでいるのですか?」
「はい、そうです」
 女性は、口元に苦笑を浮かべて答えた。やはり、そうだったのか!
 行列は、角を曲がって線路のほうまで続いていた。1km近くはありそうだ。私は意外と気が短いので、最後尾について順番を待つなどできないと判断した。

 よし、自転車で行こう!

 実は、こんなこともあろうかと思い、道は調べてある。家に引き返してママチャリにまたがり、14km先の病院を目指す。1時間半から2時間あれば着くはずだ。病み上がりだが、だいぶ体力は回復したから何とかなるだろう。
 幹線道路沿いの歩道は、風が強くていけない。白く濁った向かい風に行く手を阻まれ、重いペダルを必死にこいだ。何回も赤信号に足止めをくらう。だが、先が長いので、無理をせずのんびり走ることにした。
 1時間ほど経つと、足ではなくお尻が痛くなってきた。長時間に渡るサドルとの摩擦で、皮膚を傷めたらしい。これは盲点だった。
 しかし、途中でやめるわけにはいかない。上り坂をギアチェンジで乗り切り、「がんばれ、がんばれ」と自分を励まし、やっとの思いで目的地にたどり着いた。
 時計を見ると、10時40分である。余裕で間に合った。元気を取り戻して産婦人科に行くと、少々様子がおかしい。診察の順番の掲示に、主治医の名前がないのだ。「あれっ」と感じたとき、看護師が私を呼んだ。
「今日、○○先生は交通機関のトラブルで、まだお見えになっていないのですが、いらっしゃるまでお待ちになりますか。それとも、他の先生の診察をご希望ですか」

 ガーン!!

 私は、お尻を負傷してまですっ飛んできたのに、肝心の医師がいないとは……。
 しかし、主治医が悪いわけではない。気を取り直して、「じゃあ、他の先生でお願いします」と答えた。
 運よく、このあとすぐに、主治医が駆け込んできた。白衣のボタンも留めず、髪を振り乱して、診察室に吸い込まれていく。かくして、私は主治医の診察を受けることができた。
 結果は異常なしとのことで、ひと安心である。
 ヨタヨタと自転車をこいで家に帰ったが、お尻が痛くて、座っているのもままならない。
 鏡に映った顔を見ると、強風で飛んできた砂が、目頭にたまっている。

 病み上がりなのに~!!



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※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (20)
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