術後一週間の診察日がやってきた。
問題は、病院までたどり着けるかどうかだ。私の家から病院までは約14kmの距離で、2つの路線を乗り継いで行く。計画停電による鉄道各線の混乱は解消されつつあると報道されているが、果たしてそうなのだろうか。
11時半の予約だが、余裕を見て8時半に家を出る。駅までは歩いて10分ほどかかる。半分まで来たところで、謎の行列に出くわした。
サラリーマンに学生風の男女、大きなスーツケースを転がす奥様などが、無言で一列に並んでいる。今までこんな光景を見たことはない。
「この人たちは何だろう」と不思議に思ったが、すぐ答えに思い当たる。私は、暇そうにしている若い女性に話しかけてみた。
「あのう、もしかして、電車に乗るために並んでいるのですか?」
「はい、そうです」
女性は、口元に苦笑を浮かべて答えた。やはり、そうだったのか!
行列は、角を曲がって線路のほうまで続いていた。1km近くはありそうだ。私は意外と気が短いので、最後尾について順番を待つなどできないと判断した。
よし、自転車で行こう!
実は、こんなこともあろうかと思い、道は調べてある。家に引き返してママチャリにまたがり、14km先の病院を目指す。1時間半から2時間あれば着くはずだ。病み上がりだが、だいぶ体力は回復したから何とかなるだろう。
幹線道路沿いの歩道は、風が強くていけない。白く濁った向かい風に行く手を阻まれ、重いペダルを必死にこいだ。何回も赤信号に足止めをくらう。だが、先が長いので、無理をせずのんびり走ることにした。
1時間ほど経つと、足ではなくお尻が痛くなってきた。長時間に渡るサドルとの摩擦で、皮膚を傷めたらしい。これは盲点だった。
しかし、途中でやめるわけにはいかない。上り坂をギアチェンジで乗り切り、「がんばれ、がんばれ」と自分を励まし、やっとの思いで目的地にたどり着いた。
時計を見ると、10時40分である。余裕で間に合った。元気を取り戻して産婦人科に行くと、少々様子がおかしい。診察の順番の掲示に、主治医の名前がないのだ。「あれっ」と感じたとき、看護師が私を呼んだ。
「今日、○○先生は交通機関のトラブルで、まだお見えになっていないのですが、いらっしゃるまでお待ちになりますか。それとも、他の先生の診察をご希望ですか」
ガーン!!
私は、お尻を負傷してまですっ飛んできたのに、肝心の医師がいないとは……。
しかし、主治医が悪いわけではない。気を取り直して、「じゃあ、他の先生でお願いします」と答えた。
運よく、このあとすぐに、主治医が駆け込んできた。白衣のボタンも留めず、髪を振り乱して、診察室に吸い込まれていく。かくして、私は主治医の診察を受けることができた。
結果は異常なしとのことで、ひと安心である。
ヨタヨタと自転車をこいで家に帰ったが、お尻が痛くて、座っているのもままならない。
鏡に映った顔を見ると、強風で飛んできた砂が、目頭にたまっている。
病み上がりなのに~!!
クリックしてくださるとウレシイです♪
※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
問題は、病院までたどり着けるかどうかだ。私の家から病院までは約14kmの距離で、2つの路線を乗り継いで行く。計画停電による鉄道各線の混乱は解消されつつあると報道されているが、果たしてそうなのだろうか。
11時半の予約だが、余裕を見て8時半に家を出る。駅までは歩いて10分ほどかかる。半分まで来たところで、謎の行列に出くわした。
サラリーマンに学生風の男女、大きなスーツケースを転がす奥様などが、無言で一列に並んでいる。今までこんな光景を見たことはない。
「この人たちは何だろう」と不思議に思ったが、すぐ答えに思い当たる。私は、暇そうにしている若い女性に話しかけてみた。
「あのう、もしかして、電車に乗るために並んでいるのですか?」
「はい、そうです」
女性は、口元に苦笑を浮かべて答えた。やはり、そうだったのか!
行列は、角を曲がって線路のほうまで続いていた。1km近くはありそうだ。私は意外と気が短いので、最後尾について順番を待つなどできないと判断した。
よし、自転車で行こう!
実は、こんなこともあろうかと思い、道は調べてある。家に引き返してママチャリにまたがり、14km先の病院を目指す。1時間半から2時間あれば着くはずだ。病み上がりだが、だいぶ体力は回復したから何とかなるだろう。
幹線道路沿いの歩道は、風が強くていけない。白く濁った向かい風に行く手を阻まれ、重いペダルを必死にこいだ。何回も赤信号に足止めをくらう。だが、先が長いので、無理をせずのんびり走ることにした。
1時間ほど経つと、足ではなくお尻が痛くなってきた。長時間に渡るサドルとの摩擦で、皮膚を傷めたらしい。これは盲点だった。
しかし、途中でやめるわけにはいかない。上り坂をギアチェンジで乗り切り、「がんばれ、がんばれ」と自分を励まし、やっとの思いで目的地にたどり着いた。
時計を見ると、10時40分である。余裕で間に合った。元気を取り戻して産婦人科に行くと、少々様子がおかしい。診察の順番の掲示に、主治医の名前がないのだ。「あれっ」と感じたとき、看護師が私を呼んだ。
「今日、○○先生は交通機関のトラブルで、まだお見えになっていないのですが、いらっしゃるまでお待ちになりますか。それとも、他の先生の診察をご希望ですか」
ガーン!!
私は、お尻を負傷してまですっ飛んできたのに、肝心の医師がいないとは……。
しかし、主治医が悪いわけではない。気を取り直して、「じゃあ、他の先生でお願いします」と答えた。
運よく、このあとすぐに、主治医が駆け込んできた。白衣のボタンも留めず、髪を振り乱して、診察室に吸い込まれていく。かくして、私は主治医の診察を受けることができた。
結果は異常なしとのことで、ひと安心である。
ヨタヨタと自転車をこいで家に帰ったが、お尻が痛くて、座っているのもままならない。
鏡に映った顔を見ると、強風で飛んできた砂が、目頭にたまっている。
病み上がりなのに~!!
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「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
俺も並ぶのは大嫌いで…特に並んでまで何かを喰うなんて…と思う(笑)
しかし、先生にそんな距離を自転車をこいで行く気持ちがあったなんて…いやはや脱帽ですm(__)m
しかし…その大事なお尻が痛いとは…鏡を見たって書いてあったからお尻を見たんかと思ったよ(笑)
やっぱり男は自転車のサドルになりたいと思うのは俺だけ(笑)(笑)
晴れの日が多い地方が羨ましくなります。
富山は、曇天、雨の日が実に多い。
雨さえ降らなければ、買い物だって、大概は自転車(ママチャリ)が活躍するんだけど。
前の籠だって、でっかいのをつけてるし。
電車にそこまで並ばなくてはならないなんて…。
まぁ、電車に関しては無理だとしても、世の中、電気が駄目になった非常時の為に、手動で動かせるような物も増えてほしい気がするね。
病院と言えば、先週、地震があった時、私は、新宿にある病院に行こうと準備していたところでした。
あまりの揺れの大きさに、必ず電車の運行ダイヤが乱れると予想して、行くのを止めたのですが、あと数十分、地震が来るのが遅れていたら、帰宅難民になるところでした。
応援クリックしていきます。お尻、お大事に(笑)
「ここでしか食べられない」という評判のお店なら、並んじゃうかもしれないわぁ~。
食べ物には弱い…。
ディズニーリゾートでも並ぶしかないし。
最長記録は3時間だったかな。
それくらい並べば、電車にも乗れたと思う。
でも、精神衛生上よくないね。
鏡でお尻を見なかったなぁ。
誤解を招くといけないので、文章をちょっと変えました。
自転車のサドル?
美女が乗るとは限らんのよ(笑)
つい、太平洋側を基準に考えてしまいますが、そちらは日本海側でしたものね。
冬の間、布団はおろか、洗濯物も干せないと聞きました。
自転車なんぞ危なくて乗れませんね。
岩手の知人は、雪の中を自転車で走っていたようです。
停めたあとが大変だと言っていました。
鍵が凍りついて開かない(笑)
もうすぐ春ですね。
自転車が待っていますよ~!
前の学校は近かったから、自転車通勤だったのよ。
坂があるので、ヤマハのパスを買いました。
電動アシストつき自転車は、寿命が短いと思う。
私のパスは7年もったけど。
今は電気系統が壊れて、やたらとペダルの重い自転車になってしまった。
トレーニング用だと思えば何てことないけど…。
遠くまで行くには不向きね(笑)
手動は災害時に強い。
危機一髪でしたね。
先を読む力があってこその結果だと思います。
私の同僚は悲惨でした。
同じく新宿に用事があり、午後から休暇を取って目的地に向かったのです。
ところが、用事がすまないうちにグラグラ来たものですから、にっちもさっちも行きません。
電車が動くまで、そこで7時間待ったそうです。
千葉の自宅に戻れたのは午前1時を回っていたとか。
職場にいたほうがマシだったと嘆いていました。
応援ありがとうございます。
お尻は徐々に慣れてきました。
皮が厚くなったのかもしれません(笑)
電車を乗り継ぐ距離を自転車でというのは、
かなり大変でしょうね。
そうそう、足よりお尻をやられる人、多いんですよね。
サドルの小さなスポーツタイプだと、なおさら。
でも異常なしと言うことで、辛い往復が少しは報われましたね。
お尻、お大事に。
最初の30分はのどかでした。
のぼり坂が増えてくると、汗をかいてつらくなってきます。
最後の20分はヘロヘロでしたよ。
「今日は自転車で来た」と言うと、誰もが口を揃えて「ええっ」と驚きました。
でも、自分の体力をちょっぴり見直したりして。
サドルには座布団が必要ですね(笑)