国政選挙がない時期の県知事選挙は、自治体選挙といえども国政上の政策、政権運営などを国民、自治体住民がどう受け止めて、判断しているかが意思表示されていると考えるのが妥当です。その意味では、自民党・公明党が擁立した候補が敗れたことは、安倍、自民党・公明党政権の政権運営、政策課題に対して「ノー」を突きつけたのと同じです。
自民党候補が勝てば、自らの政権運営が支持されたとしてさらに独裁振りを発揮し、傲慢になるところでした。しかし、自民党擁立候補が負ければ、国政と自治体選挙は別として無視する。安倍、自民党政権の独善振りと支離滅裂は頂点に達しています。国会答弁でも、まともに質問に答えるのではなく、はぐらかし、曖昧に表現で逃げる答弁を繰り返しました。彼らが狙う戦争できる国への転換が、少しでも国民に知れ渡る、理解されることを遅延させたいとの思惑が見えます。世論調査に一喜一憂しながら、その世論である主権者には情報を与えない。理解不能の答弁を繰り返す、安倍、自民党中枢の詐欺的な政治手法は歴史に残る悪政の見本として記録されるでしょう。
<東京新聞社説>滋賀県知事選 強引政権は猛省せよ
県知事を選ぶ選挙ではあるが、滋賀県の有権者は、県政の課題を超えて、強引な政権運営を続けてきた安倍自民党にブレーキをかけた格好である。政府は抗議の声として誠実に受け止めるべきだ。
嘉田由紀子知事の後任を決める滋賀県知事選には無所属の新人三人が立候補し、三日月大造氏が小鑓隆史氏に競り勝った。
自民、公明が推薦した小鑓氏は元経済産業官僚で、アベノミクスの政策立案にも関与した。選挙戦では、石破茂自民党幹事長、菅義偉官房長官ら党と政権の大看板が次々現地入りし、その二人三脚ぶりを前面に打ち出した。
衆院議員だった三日月氏は、民主党を離党して出馬した。嘉田知事から後継指名を受けたばかりでなく“元祖”環境派知事の武村正義氏も支援。民主党色を極力薄める戦術で、無党派層への浸透を図った。
隣接する福井県の原発再稼働問題は、滋賀県民の大きな関心事である。各種世論調査でも、「卒原発」を掲げた二期八年の嘉田県政への県民の評価は高い。
三日月氏は、民主党衆院議員時代に原発輸出を可能にする原子力協定承認案に賛成したこともあったが、嘉田知事の支援が固まってからは「卒原発」路線の継承を明言し、脱原発票を取り込んだ。
一方、小鑓氏は、安倍政権が目指す再稼働については「県知事の権限は限られる」と深入りせず、原発問題の争点化を回避した。
選挙戦の序盤では、小鑓氏が優勢とみられていた。関係者によると、風向きが変わったのは七月に入ってからという。
時期からみれば、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定、自民議員による国会や都議会での女性蔑視やじと推定される。石破幹事長は八日の記者会見で、これらの問題をめぐる党批判が選挙戦に影響を与えていることを「否定しない」と述べていた。
もし、集団的自衛権問題が知事選に影響を与え、小鑓氏に逆風が吹いたとすれば、安倍政権にとって事態は深刻だといわざるを得ないだろう。
世論を軽視し、数の力を背景にして憲法解釈変更を強行する。そうした強引さに対し、ようやく意思表示の機会を得た有権者が、怒りの一票を投じたともいえる。政権のおごりを許さぬという抗議の意思表示だ。もちろん、小鑓氏支持もある。しかし、敗北の結果は深く受け止めるべきである。