オカブはフルートという楽器をやる。
楽器をやるということはフルートを吹けるということである。
しかし、まともには吹けない。
中学生の頃からやっているというのに、未だピーヒャラピーヒャラである。
最早、これ以上、上達する見込みはない。
しかしフルートをやっていてよかったと思うことがある。
自分が、上達するのにこれだけ苦労して、結局ものにならなかったことから、世の中のフルートの名人が、あの音色と技巧を手に入れるのに、どのような修練を積んだかが、痛いほどよくわかる。
また、演奏会などで、それを披露するとき、それが、どれほどの妙技で素晴らしいものか、鑑賞しているときの感動が全く違う。
しかし、逆に、演奏家の粗も聴けるようになってきた。
あの人は、あんなに立派な肩書なのに、演奏はこの程度か、と勝手に腹を立てている。
フルートをやっていたということは、やはり良し悪しなのかもしれない。
山越えて寂れし村の寒の内 素閑
大法螺を吹く朋友や寒の内 素閑
咳き込みて孫が背さする寒の内 素閑
富士見坂大ひに夕景寒の内 素閑
米をつぶし焼ひて食へるや寒の内 素閑
寒の内蘆花の住まひの地蔵尊 素閑
早々に宴の別れや寒の内 素閑