昼のガスパール・オカブ日記

閑人オカブの日常、つらつら思ったことなど。語るもせんなき繰り言を俳句を交えて独吟。

トランプ大統領就任と安倍政権・・・体制側からの反定立

2017-01-21 15:50:49 | 政治

トランプ大統領が就任した。
就任して政権誕生後、失政したわけでもないのに、選挙中はもちろん、大統領選当選後も、批判の嵐に包まれ、激しいバッシングを受けた。
実は、選挙前からアンチトランプの危機感は相当なものだった。一介の泡沫候補だったトランプに対して『危険な男』のレッテルを張りまくっていた。
オカブも、トランプのアメリカ政治の運営、ひいては世界政治の運営には不安を抱く。
しかし、選挙制度のマジックとはいえ、アメリカの多くの有権者がトランプを選んだ事情は理解できる。
これは、ヨーロッパ、日本も含めて、『自由』『平和』『民主主義』など、誰も否定しようがない確固とした定立として確立されてきた価値観に対する、敢えての異議申し立てとしてのアンチテーゼの提唱の流れとオカブは理解している。
一方で、『ナショナリズム』『武力安全保障』『経済的自由』などは、誰もが否定する、否、否定すべきネガティブな定立であった。
現状、ヨーロッパでは難民問題を、日本では日韓問題を、そしてアメリカでは移民問題とそれとセットになった雇用問題を抱えている。
それを、これまでリベラルを中心とした勢力が、『自由・博愛・平等』、あるいは『反差別』などの定立としての価値観を振りかざして、問題の所在をはぐらかし、選挙民の不満を掻き立ててきた。
国民・有権者の側も、そうした一見高尚で普遍的に見える理念には抵抗できず、あるいは自らを『良識派』と装うことによって、本音としては反対のテーマに対して、賛成する態度を示した。
そのような、現象がここにきて、限界点を越え、 国民・有権者は本音を隠すことがなくなってきた。
ヨーロッパにおいては国民戦線やドイツの選択などの右派の台頭。日本では安倍政権の驚異的支持率の上昇。アメリカではトランプ政権の誕生などがその動きの一環である。
先に挙げた、耳に心地よい定立としての価値観は、あまりにも国民・有権者の実利を無視しすぎた。 それはかつて封建時代から近代への移行期には王権をはじめとする、人民を抑圧する『体制』を抑える定立であったが、一方で、現代の複雑な政治社会では、国民が体制側にいるか、反体制側にいるか明確な線引きがされにくい。体制側を批判する立場にいると思っていたら、自らが体制側におり、自らを疎外していることに多くの人が気づいたのである。
数値的に、体制側が国民に実利をもたらしているか計測は困難だが、アベノミクスによって雇用環境が劇的に改善されたのは事実だろう。これによって、若年者の政権支持率が目覚ましく上がったことは自然の結果である。
アメリカのかつてのティーパーティーのようなリバタリアン的ムーヴメントはまさに、その自らの実利に根差した立場の表明であった。それに対して、対して多くの人々は、定立に立った空虚な価値観から反対を唱え、彼らの『正義』に基づいた社会の構築を望んだかのような幻想を抱いたのである。それが今、まさに幻想であり欺瞞であることが明らかになった。
これから数年の世界を占ううえで、この体制側からの本音に基づいたアンチ・テーゼというものは、大きなキーワードになるのではないかとオカブは予測する。
オカブは欺瞞的な定立かのように言ったが、しかしそこには全く価値がないわけではないことを最後に付言しよう。
『建前』の存在は、社会や組織、人間関係の緩衝地帯として重要である。
それが、まったく用をなさないというのではない。
円滑な国家や社会の運営にとって、その『建前』に基づいた定立としての価値観は重要な役割を果たす。
だから、今後のトランプ政権や安倍政権が、体制側からの反定立を掲げすぎて、定立を捨象することにより、自ら泥沼にはまる懸念は大いにあると思う。そこに、この世界的動きの不安はある。
しかし、この隠れたムーヴメントは当面終わりそうにない。難民・移民問題を始めとする国際情勢の解決。雇用・経済成長・通貨・格差などの経済問題を巡っての綱渡り。そして、人類が長年抱いてきた、『自由・平等・博愛』、『反差別』、『寛容』などのお題目としての・・・水戸黄門の印籠としての価値観が脆くも崩れ去るのか? これから世界から目が離せない。
今年はいい年になってもらいたいものである。

われもまた野垂れ死にせん痩せ布団   素閑