歩くことがままならなくなってしまったある独り暮らしの男性が
その淋しさから、猫にご飯をあげていました。
当然、毎年繁殖を繰り返します。
生き延びる子もいれば、縁の下で命が尽きる子もいます。
少し大きく育つと交通事故で、何匹も死んでしまいます。
この地域は田舎ですから、カラス・とんび・たかなどが
空中から狙っています。
地上では、ハクビシンやタヌキ・いたちが子猫を狙っています。
民家にたどり着いても、猫の嫌いな人が圧倒的に多いので
人間が保健所などに連れて行ったり、どこかに捨てに行きます。
誰も手を出せないまま10年?もしかしたら20年の歳月が過ぎたのですが
昨年の夏、この男性が具合を悪くして入院しました。
たぶん退院はできない状態だそうです。
身内の方が、縁の下をふさぎ、敷地から猫たちを追い出しました。
分散した猫たちはこの界隈で、多方面に散らばっていきました。
そのうち近くのビニールハウスに逃げ込んだ家族猫が2組。
ビニールハウスの持ち主のご夫婦が相談に来ました。
今までもずっと気になっていたけれど、誰に何を相談したらいいのか
わからなかったそうです。
きちんと手術して増やさないようにしていきましょうと話しました。
餌だけあげていた男性の身内の方にも民生委員さんを通して連絡を取り
手術の費用負担の一部をお願いしました。
こうして10月から半年かけて、12匹の猫たちのうち11匹
手術が終わりました。
妊娠している子もいました。
1匹だけどうしても捕まらない雄猫が残りましたが
いったん終了し、また時期を見計らって再開しようとなりました。
わからないことだらけ、餌をあげていたわけでもないのですが
頑張ってくださいました。
近所の人や獣医の先生にも嫌味を言われてしまって
めげそうな状況が何度かあり、
そんなときは電話したり現場に行ってお話をうかがいました。
だんだん可愛くなってきたよと笑顔で話してくれるようになり
ビニールハウスを提供することも、むろん問題ないと
今では決めた時間に耳カットした猫たちに
ご飯をあげてお世話してくれています。
この冬も温かい中で過ごすことができました。
地域で誰もしようとしなかったことを、やってくださって
頭が下がります。
元々、餌をあげていただけの男性が、きちんと対応していれば
こんなことにはならなかったのにと思います。
もちろん、この現場にいる12匹だけではありません。
散らばった先で、他の子たちはどうしているのかわかりません。
事故死した子猫も数匹いることや、怪我をして足を引きずって歩いてる
猫を見たよと、ご近所の方に聞き込みをした際うかがいました。
まだまだ手術して戻す話をすると、眉間にしわを寄せ
あからさまに迷惑顔をする方たちも大勢いました。
そういう地域で、風当たりもある中
こんなにがんばってくださる方がいたことが
本当にうれしかったです。
こいつらだって生きてるんだでねぇ
なんとかしてやらにゃあいかんで。
ご夫婦のあたたかい人柄に、いつもほっこりさせてもらってました。
悪いのは猫ではなく、いい加減なやり方をしていた人間です。
また、このご夫婦にお目にかかるのが楽しみです。