6月中旬に、その小さな女の子はやってきました。
最初保護した人も、ひどいその姿に困り果て
その人の行った獣医さんでは、安楽死を勧めたというのです。
そんな経緯を経て、会にたどり着きました。
たしかに、すでに片目はあきらめるしかありませんでした。
ですが、残ったもう一方の目が温存できれば、生きていくことはできます。
目の処置がうまくいけば、この子と暮らしたいと言ってくれる人も
必ず現れるだろうと思いました。
そう思ったわたしは、スタッフのNさんにこの子を託しました。
受診して治療の方針を決めて、毎日抗生剤の入った目薬を
こまめに点眼、飲み薬と併用します。
悪化させないことが何よりです。
この子の名前はシェノン・・・フランス語で、幸せの連鎖だそうです。
シェノンちゃんの目に点すのは目薬だけではなく、わたしたちの祈り
お世話するNさんの愛情、いろいろです。
毎日の状態を写真で送ってもらいました。
微妙な変化が出てきました。
もしかしたら、きれいになるのかも・・・そんな期待も生まれ、
わたしたちは必死で応援していました。
性格も良くて、きれいな美しいシルバータビーのシェノンちゃん。
片目のないことも個性だと言ってくれる人が必ず現れると
そう思えるところまで回復してくれたのです。
中で眼球委縮の状態でしたが、摘出手術まですることはありませんでした。
こまめにサインを見逃さず、懐の深さがなければできないお世話を
Nさんが続けてくれたおかげです。
そして・・・ついにホームページの里親さん募集に掲載しました。
そんなとき、以前会の預かりスタッフさんだったTさんから連絡がありました。
2年前、お仕事の関係で預かりスタッフをすることができなくなりましたが
そのとき生まれた彼女への信頼は、
今もわたしの中に色あせることなく残っていました。
シェノンちゃんをお願いできるのは、Tさんしかいない・・・。
『こんなかわいい子、わたしでいいかな?』
そう、まさにそう言って迎えてくれる人をシェノンちゃんは待っていました。
不思議な縁なのですが、Tさん宅の先住猫のココちゃんは
保護時がわたし、それからNさん、そしてTさん宅へと繋がっていきました。
シェノンちゃんがこのうちの子になる強い縁はすでに作られていたのかも。
後は、ココちゃんとの相性次第です。
でも、心配することなど何もありませんでした。
連れて行った翌日には、けっこう仲良くなっていました。
日を追うごとに、ずっとずっといっしょにいたかのように
ココちゃんはシャノンちゃんを快く受け入れてくれました。
Tさん家族のおおらかさも、仲良し度をアップさせてくれました。
さすがです。
なんの不安もないままお家の子として迎えてくれることになりました。
新しい名前を聞いたら、そのままシェノンだよと・・・。
シェノンの意味を調べたんだそうです。
『幸せの連鎖だから、これ以上の名前はないです。』
そう言ってくれました。
骨折とリハビリでちょっとお休み中の彼女でしたが
会社復帰目前に家族を増やしてくれました。
息子さんも、片目のことなど何でもなく大切に可愛がってくれます。
こんなにあったかいお家の子になれて、名前の由来のとおりだと思いました。
幼い身の上に起きた悲しい出来事も、
あたたかい心の連鎖が幸せへと紡ぎました。
『退職して時間ができたら、また預かりさんで戻ってきてね』とお願いしたら
『復帰が楽しみです』と言ってくれました。
ただ、最後にこうも綴られていました。
『そのころには、預かりさん必要ありませんって言われる世の中になってるといいなぁ。』
その通りですね。
こんな活動そのものをやらなくても済むような、
そんな時代が来ることを楽しみに待ちたいと思います。
シェノンちゃん、おめでとう。
ココちゃん、末永くよろしくね。
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シェノンちゃんと同じように風邪で目をやられてしまって
眼球摘出術を受けたキャロル改めてラーラちゃん
会場でこの子がいいとしっかり抱きしめてくれた息子さんの姿は
一生忘れられない光景となりました。
こんな風にお子さんを育てた親御さんは、
それだけで誇りだろうと思います。
その場の部屋の中の空気が一瞬で変わった気がしました。
こうしたご家族の存在が、わたしたちに勇気を与えてくれます。
会にはこれから譲渡に向けて、片目を摘出しなければならなかった子、
白濁が残ってしまった子、食道狭窄の手術を予定している子
てんかんの子、脱肛しやすい子、瞬膜が少し出ている子、心臓病の子など
多くの病気と闘う猫たちを抱えています。
どの子にも、『この子がいい』『うちでよければ来る?』
そんな出逢いがあることを祈って、
スタッフさんたちは懸命にお世話をしています。