「阿波遍路恋唄」床本その6
原案創作:陶久敏郎
床本作成:鶴沢友輔
はや暮れかけの雲間より一筋差し込む光明に照らされ浮かぶ祠より現れいでたる御大師様
「これお松、竹一と両人ともどもに、わが心にかなう善行 まことに良きことなり。この後はめでたく夫婦と相成って 幸多く暮らすがよい。
これお梅、前生からの因縁か、巡り合えた数々の縁。苦しきことも、この縁を大事にすればきっと結願できるであろう。同行二人と記せし通り、わしも共に順礼いたすであろう。心安くまいるがよい。」
俄かに驚き、取り乱し、右と左にきょろきょろとさわぐ心もそのままに、またもやあふるお梅の涙、御大師様を見上ぐれば、
「御大師様、どうぞ夫の病をお治しくださいませ。夫が元のようになるように、心をこめて順礼いたします。お言葉胸にきっと結願いたします。」
「夫の病平癒の願い、確かにきいた。その願いを一心に四国参りをするがよい。また、道々での接待は有難く受けるがよい。結願がかなうその頃にはお前の心から迷い、不安も遠のき、気持ちも安らかになるであろう」と、宣ふ御声麗しく、尊く導く太師の教えを残し、かき消すごとく失せ給う
「御大師様。私には、いつも御大師様がお傍にいてくださっていることを信じてお遍路いたします。竹一さんやお松さんのような優しい人にまた会えると信じてお遍路いたします」と、お梅はその場で深々と頭を垂れ、唱える念仏は「南無大師遍照金剛」、もとより唱えるお松とともに、響きわたるは二人の声。重なり響くは夕暮れの鐘の音、御大師さまの遍路道 有り難かりける御法なり。
(令和四年一月六日)
~終わり~
原案創作:陶久敏郎
床本作成:鶴沢友輔
はや暮れかけの雲間より一筋差し込む光明に照らされ浮かぶ祠より現れいでたる御大師様
「これお松、竹一と両人ともどもに、わが心にかなう善行 まことに良きことなり。この後はめでたく夫婦と相成って 幸多く暮らすがよい。
これお梅、前生からの因縁か、巡り合えた数々の縁。苦しきことも、この縁を大事にすればきっと結願できるであろう。同行二人と記せし通り、わしも共に順礼いたすであろう。心安くまいるがよい。」
俄かに驚き、取り乱し、右と左にきょろきょろとさわぐ心もそのままに、またもやあふるお梅の涙、御大師様を見上ぐれば、
「御大師様、どうぞ夫の病をお治しくださいませ。夫が元のようになるように、心をこめて順礼いたします。お言葉胸にきっと結願いたします。」
「夫の病平癒の願い、確かにきいた。その願いを一心に四国参りをするがよい。また、道々での接待は有難く受けるがよい。結願がかなうその頃にはお前の心から迷い、不安も遠のき、気持ちも安らかになるであろう」と、宣ふ御声麗しく、尊く導く太師の教えを残し、かき消すごとく失せ給う
「御大師様。私には、いつも御大師様がお傍にいてくださっていることを信じてお遍路いたします。竹一さんやお松さんのような優しい人にまた会えると信じてお遍路いたします」と、お梅はその場で深々と頭を垂れ、唱える念仏は「南無大師遍照金剛」、もとより唱えるお松とともに、響きわたるは二人の声。重なり響くは夕暮れの鐘の音、御大師さまの遍路道 有り難かりける御法なり。
(令和四年一月六日)
~終わり~