三笑会

三笑会は、平成30年6月1日~陶芸活動と陶芸教室、喫茶室、自家野菜販売、古美術・古物商経営を総合的に活動していきます。

「阿波遍路恋唄」床本その2

2022-03-22 16:22:43 | 日記
「阿波遍路恋唄」床本その2

原案創作:陶久敏郎
床本作成:鶴沢友輔

  「ありがとうございます ありがとうございます 私の名はお梅と申します 江戸よりはるばる遍路の旅へ参った者でございます。今は何のお礼もできません お四国参りを成就させ、江戸へ帰った暁には、きっとお礼を差し上げたい お二人の所とお名をどうぞ教えてくださいませ」とお梅が頭を下ぐれば、二人は顔を見合わせて
  「いやいや礼など及びませぬ、当たり前のことをしたまでじゃ
子供のころからわしらは、村の爺さん婆さんにずっと聞かされて育ってきた。困っているお遍路さんには手を貸すもんじゃ」
  「いえいえ、何をおっしゃいます。お二人の親切、助けてもろうてそのままではなりません。お二人に出会わなければ私の命はなかったはず。」
  「そんなことはない、このオトンボ山、岡花村や西光寺村、ここの誰と出会うても、みんな同じようにあんたはんをお助けするはずじゃ。これはな、ずっとずっと前からこの村に受け継がれてきとうお接待の文化っていうもんじゃ」
  「なんとまあ、お接待、お接待の文化とは一体どんなものなのでしょう。どうぞ教えてくださいませ」と問われてお松は身を乗り出し
  「これは村の寺子屋で聞いた話やけんど、なんでもこの四国では、お遍路さんへのお接待は「御大師様への功徳」になるけんな。自分の代わりにお遍路さんにお四国参りを託すという意味もあって、時にはお賽銭にしてなって、お金を渡すこともあるんよ。お接待には、ほんまにいろんな形があってな、道中の小さな休憩所、うどんやお菓子、お茶などを出すお接待所、ほかにも、善根宿や通夜堂なんていうのもあるんよ」
と言えばお梅はほとほと感心し
  「私には、労咳という不治の病を患った夫がおります。モウどうしたらよくなるのかと、思い悩んでおりました。そんな折、長屋のみんなからお四国さんのことを聞きました。お遍路さんになって順礼の旅に出て、御大師様にお願いすると、夫の病気が治るかもしれないと…それを聞いたらもう居ても立っても居られなくなって、藁にもすがる思いで江戸を飛び出し、順礼しておりました。今度は私が長屋のみんなに教えてあげたい。 ぜひお四国参りやお接待のことをもっと、もっと教えてくださいませ。」
と聞けば竹一喜んで、
  「この話はな、次の札所の平等寺の和尚さんから聞いた話やけんどな、お遍路さんの装束は、死に装束の意味があってな、死に顔を隠す菅笠をかぶり、墓標にするための金剛杖を片手にとるんよの。お梅さんも、わしが今言うた順礼の出で立ちをしとるでないで。ほれ、笠にも「同行二人」と書いとうだろ。お遍路さんは、道中お大師さんが見守るなかで自分と向き合うんじゃ。それぞれの悩みをな、見据えるんじゃ。」

~続く~

最新の画像もっと見る

コメントを投稿